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詩)生きる事を諦めるな

深淵を覗く者は彼方の住人から手招きをされ
いつの間にやら自らの手でその首をしめる
此方の有り様に嫌気がさして
彼方の様子を伺ってはみたものの
然程、此方と変わらぬ様子で強き者が笑う
逃げ場を失い右往左往してみても
崖の端で踊る姿は滑稽で
足を滑らさせはしないかと下の者は
固唾を呑んで見守る
嘲笑う者の顔は仮面で隠され
何方様かも分からず
ただ、噛み殺した様な笑いが時折漏れ出す
膝を地につけ諦めた矢先に
健気に生きる花を見つける
気高く生きる姿は誇らしげで儚い
踏み潰さずに良かったと安堵の涙が頬を伝う
自らが流した涙に温度を感じて
擦り剥いた心に唾を塗る
此方の空は青く誰の上にも陽は光を恵む
今度は上手く踏み出そうと汚れた手で涙を拭う
止まったまま流れ行く景色を
見過ごさぬ様に目を見開き前を向く
握った拳は天を突かぬともただ愚直に前へと進め
川の水は流れ海に出て雨となりまた川へと帰る
陽は沈めど闇は月と星と共にやって来る

彼方…あちら 此方…こちら 然程…さほど
何方様…どちらさま 固唾…かたず 
擦り剥いた…すりむいた 唾…つば
最後までお付き合い頂きありがとうございます。
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先月のスキの多かった詩ベスト5をまとめたマガジンがありますので、こちらの作品を気に入って頂けましたら是非、過去作も御一読下さい。