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エッセイ)8/31の夜に

後、7時間後には家を出ないと。
明日から学校が始まると言うのに英語の課題が半分も終わっていない。
大体、夏休みって“休み”と言う位なんだから、課題とか出すなよ。休ませろよ…。
そんな屁理屈を言っていても、課題のページ数は減らずに時間ばかりが減って行く。

そもそも、英語なんて将来必要なのか?
外国に行くつもりもないし、なんなら、この田舎から出て行く気もないわけだから、英語を使う機会なんてないだろ。
最悪、むこうに日本語を覚えてもらったら…。
郷に入れば郷に従えって言葉もあるわけだし、日本に来たら日本語で話してくれたらいいだろう。
大体、こんな問題を解けたからって、実際に話せるようになるわけじゃないし…。
日本の詰め込み教育の弊害だね。結局、知識だけを詰め込んだらいいって勘違いして、物事の本質って言うのをわかっていない。だから駄目なんだよ。
あー。グダグダやってたら、また時間がぁ!

どうしよう。マジで終わる気がしない。
やっていかなかったら、また、グズグズ言われんだろうなぁ。期末テストも赤点だったし…。
テスト後の補習の時も色々言ってたなぁ。
『ビートルズとか聞くといいよ』
って、昔から聞いてるわ。
ビートルズを聞いて英語が得意になるって言うなら、とっくにペラペラに話せてるわ。
どうしよう…。せめて、この半分ならなぁ…。
あっ!そうだ。1ページずつノリで引っ付けたら
半分になる。
これなら、なんとか終わる。
もう、迷ってる時間もない。
担任も
『夏休みが勝負の時だから、時間の使い方を工夫して効率よく勉強しなさい』
的な事を言っていたしな。
これも工夫の一環だよ。


後日、英語の先生に呼び出されて、さんざんグチグチと言われ、結局、課題は再提出させられた。

それから、4年後にまさか自分が英会話スクールのスタッフになるとは、夢にも思っていなかった。
人生って何があるかわからないから、何があっても対応出来るように事前の準備って大切だなぁって身をもって知る羽目になってしまった。

今となっては8/31は、いつもの毎日の1日に溶け込んでしまって、なんら特別な日ではないけれど、社会人になるまでは、長い休みの最後の日で、特別な日々が日常に戻る境目で、大体、憂鬱な気持ちになってたんだなぁと思い出す。
大人になると、昨日と同じ今日を過ごし、今日と変わらない明日が来る様な毎日だけど、しょうもない日々に思えたり、これが幸せな事だと噛み締めたりで、あの時の憂鬱だとか悩みも、今に繋がっているのだとしみじみ思う。
もし、あの頃に戻れたら、もっと色々と頑張ってやるのに…いや、やっぱりあの頃に戻っても、同じ事を繰り返しそうだな。
ただ、グズグズ言われても、それは自分が後悔したから、せめて貴方には同じ後悔をして欲しくないって愛情の一環なのかも知れないからって思ったら、あの頃よりはイライラせずに聞けるんだろうけど…。


おわり