・恋の島 舞い降りし来て 五十年 ・ひざまくら無くして ひとりの肘まくら ・五十年 去ってわかるね 夫婦愛(めおとあい)
・酔うことで 一時なぐさめ 過ごす夜・主のいぬ 三面鏡が いと哀れ ・ほろ酔いで 妻(あなた)を想い 気が沈む
・夢に見る 腕くみ歩く 箱根路の かた寄り添って 羨ましくも ・まなざしに 想いは映る 梅の花 冷えた指先 温もりあたえ
・妻慕う 涙もにじむ 昼さがり ・想い出に ふけるひと時 われ忘れ
・夕暮れに 寺の鐘の音 身にしみて 今日一日も 過ぎて行くらん・世の川を 仲良く泳ぐ めおと恋(鯉)
・湯上がりに 浴衣姿で お酌する そんな姿を 昨日のように・待ってたと いえぬ言の葉 身体に感じ 動かぬ指を 両手で囲む
・夏の伊豆 天城隧道踊り子の 歩いた道のり老夫婦 身体を寄せ合い 寒天橋にやっと着く・言の葉の なきし今宵は いかんせん 悪酔い覚悟の ただ冷酒(ひや)をのむ
・この広い世界で昨日まで 見知らぬ君とめぐり逢い 夢見た日々を想いだす ・手を重ね グレンミラーの映画みし 茶色の小瓶 今はるか
・妻への恋文 頁を重ね われ読んで 涙ぐむのも 愛ゆえに ・夫婦愛 何を見聞きしても こみあげる 朝日がまぶしい夏の朝※いつもお寄り頂き、誠にありがとうございます。 早いものでNo.34節まで参りました。 これからも哀しい句とは存じますが、 よろしくお願い申し上げます。
・主のいぬ 箪笥(たんす)の中の 和服さえ 君の帰りを待っている・夜が更けて独りになると想いだす 他人(ひと)には語れぬありし日の 家族の団らん妻の微笑み
・意味の分からぬ 言の葉を 耳を澄まして 聞く涙 ・病にふす 妻のほほを 手の甲で 触れていると めがしら熱く 涙をさそう
・ほころび直す針目が通らず 糸が「イヤよ」と言っている 夫婦の愛を縫うごとく ほころび直すこの手つき 男やもめの悲しさよ
・手をたずさえて行けぬ旅 線路のきしみも泣いている ひとり寂しく熱海に来る
・悲しみと 想いで抱き 湯の街へ 思い出させる 歩いた路を
・胸に秘め 妻との想い 湯の街へ 初島ながめ 砂上に涙 ・部屋の窓 眺めて見ては その景色 妻との想い 重ねて泣ける ・想いはせ 湯のまち熱海 ひとり旅 流す涙も 波にさらわれ
・過ぎ去りし 想いは果てぬ 愛おしさ ・今日もまた 線香あげて 眼がくもる