サラダは自分でとりますので
長年、ちょっと嫌だなと思っていたことがある。それは、シーザーサラダに乗っている温玉。どうしてパリパリとした食感が売りのシーザーサラダに、プニョプニニョでトロトロの温玉を乗せるのか。
数人で居酒屋に行くと、とりあえず最初に注文するメニューにサラダが加わることが多く、写真があるメニュー表なら温玉をチェックし、他に魅力的かつ万人受けしそうなものがあれば、そちらを推すようにしていたが、シーザーサラダの人気は高く、私は妥協せざるを得ないことがよくあった。
食べられない訳では無いけど、食べるとちょっと気分が下がる。せっかくの楽しい飲みの席なんだから、そんなことで気持ちを下げるのは勿体ない気がして、でも一緒に食事を囲む雰囲気にも水を差すようで黙っていたが、とうとう割と高頻度でシーザーサラダを注文する友人に打ち明けることにした。
「私、今まで黙ってたけど、シーザーサラダの温玉苦手なんだよね」
すると彼女は
「それなら私が温玉受け持つから、シーザーサラダ頼んでいい?」
なんてことない事だった。
先日、別の友人と居酒屋に行った。
店おすすめのできたて豆腐には、たくさんの薬味が付いており、あれこれちょこっと試しながら、
「これも美味しいから、食べてみなよー」
と、ねぎ味噌を勧めると、
「俺、ねぎ食べられないんだよね」
苦手なわけではなく、アレルギーだった。
ちなみに玉ねぎもダメ。火を通せば大丈夫だけど、生は食べられないらしい。
全然知らなかった。
これまでもたくさんご飯を食べに行く機会があったのに、全く気が付かなかった。気が付かないで注文した料理の中から、自分が食べられるものを選んで、自衛しながら食べていたそうだ。
飲みの席で私が苦手な行為が二つある。
お酌すること、されること
そして
料理を取り分けられること
苦手でよかった。
これからは、もう声を大にして言おう。
「サラダは自分でとりますので」
温玉をグチャグチャにして乗せられたシーザーサラダが、目の前に現れることは、きっともうない。