やまびこ

「やっほー」
やっほー、やっほー、やっほー、
もう一度叫ぼうと勢いよく息を吸った僕の口を、父が塞いだ。
やっほー、やっほー、やっほー……。
「うん、もういいよ」
父はそう言って手をどけた。
「やっほー」
やっほー、やっほー、やっほー、
やっほー、やっほー、やっほー……。
「やまびこで遊ぶ時は気をつけてね」
「何に?」
「順番」
「順番?」
「僕らは真似される側だってこと」
僕は首をかしげた。
 「やっほー」
その時、僕と同じくらいの年頃の子が、少し離れたところで叫んだ。
やっほー、やっほー、やっほー、
彼は嬉しそうな顔で、胸いっぱいに空気を吸い込み、もう一度叫んだ。
やっほー
やっほー、やっほー……。
「気をつけてね」
二回目の声があまり響かなかったことに怪訝な表情を浮かべている少年を横目で見ながら、父はそう繰り返した。

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