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体温がちょっと上がるだけ

岡田彩夢 1st写真集「体温がちょっと上がるだけ」

 写真集を見て妄想した夢小説を幾つか書きました。


夢小説(二次創作)

①黒アゲハと長い夜---(黒ベビードールの見開き)

「あの人はもう戻ってこない」
 部屋の片隅で澱(よど)んだ空気が少しだけ震えた。誰の声かも分からない無気力な呟き。誰もいない薄暗い部屋に、私は溶け込んでしまったみたいだった。
 細くなった手首に触れると、まだ乾いていない傷口から生暖かい液体がぬらりと手のひらにつく。小さな鼓動を感じた。血液は林檎の様に鮮やかな色合いだけれど、私の顔はきっと人形の様に青白いのだろう。

「黒いアゲハ蝶の様に綺麗だね」
 いつの日か耳元で囁かれたあの人の優しい声。抱きしめられた大きな腕と体温を私の体はまだ覚えている。
 褒めて貰いたくてこの服を選んだ。音楽も、映画も小説も、あの人の好きな物を同じように好きになりたくて、あの人の見ている景色を同じように感じたくて、いつも私は背伸びをしていた。

「あの人はもういない」
 抱えていた両足に顔を埋める。涙はすでに枯れてしまった。
 あの人のいない世界なんて想像できなかった。想像したくなかった。
 私はこれからどうやって生きていこう。



②受け入れてみた---(P1,目を閉じた小画像)

『人生では得てして不可解な事が起こるものだが、ありのままを受け入れなさい』
 占い好きな婆ちゃんがよく言ってた。
 しかし災難が降りかかった時、現状を受け入れるだけでは駄目だ。
 例えば、電線に止まるカラスは感電しない。その理由を考えなければ、カラスを退治する方法などは導き出せない。
 カラスはゴムで出来ているから感電しないのか、少し浮いているのか、電気代を払っていないから止められているのか、実はすでに感電してるけど我慢しているのか、それともカラスは電気で動いているのか。
 現状況を打開するには受け入れた後、解決策を思い巡らし行動しなければならない。
 つまり……

『俺のベッドで見知らぬ女の子が寝ている』

 部屋の真ん中で呆然と立ち尽くしていた俺は、大きく深呼吸をしてからその場で胡座(あぐら)をかいた。尻が冷たい。さっき落とした缶ビールの中身のほとんどはカーペットが吸っていたが、缶を拾い上げて残りを飲み干す。
 状況を確認する。AM0:15。そこは俺のベッドだ。ここは俺の住むアパートの一室なんだから当然だ。目をつむって寝息を立てている、寝ているのは間違いないだろう。では、知らない子か。
 俺は座ったまま、すやすや寝息を立てている女の子へ目をやった。

『ああ、そう言えば合コンで知り合った子をお持ち帰りして……』
 リア充ならそんな台詞でもいうのかも知れないが、ブラック企業で働く社畜の俺にそんな暇も甲斐性もある訳がない。そもそも、昨日も今日もサビ残で終電帰宅じゃないか。
 あり得るのは身内の線か。今年の春大学生となり上京してきた妹が近くのアパートで暮らしているのだが、今朝用事があってここに寄った後、友達と泊まりがけで遊びに行ったはずだ。さすがの俺でも妹の顔を見間違えたりはしない。

 間違いなく知らない子だ。見たこともない白いもふもふの服を着ている。柔らかそうな頬に小さな口、形の良い鼻。まつ毛は長い。セミロングの黒髪は二つ結びにしてピンクのリボンで止めている。
「可愛い子だなぁ……」思わず心の声が漏れた。

 泥棒って線もあり得るのか。盗みに入ったけど、金銭が見つからなくて探してる内に眠くなって寝てしまった。それなら、天罰を下しに来た天使の方が納得がいく。
 この子は一体何処から部屋へ入ったのか。いつもは忘れるが、今朝は珍しく鍵を掛けて出かけた筈だ。
 おもむろに立ち上がり玄関へ向かった。内側から玄関ドアを開けると、抜き忘れていた鍵が挿しっぱなしだった。
 鍵を引き抜いて玄関へ上がると、何かにけつまずいた。転がっていったのは猫の缶詰。
「そういやぁ、ボスってどこにいるんだ?」

 俺は今朝の妹とのやり取りを思い出した。
「友達ん家に泊まりで遊びに行くから、この子一晩預かってよ。あの子の部屋、ペット禁止なんだって。じゃあね、4946〜」
 妹はそう言って、実家から連れてきて部屋で飼っている猫(通称ボス)を俺に押し付けてさっさと行ってしまった。

 俺のアパートだってペットは禁止だ。
 ボスはどこにいるのか。
 多分それは今、大して重要な問題ではない。と、思いながらも猫の名前を連呼しながら廊下から部屋へ入った。
 俺のベッドのど真ん中で白猫がすやすや眠っていた。
 明日仕事休んで病院でもいこうか……
 いや、もう今日か……



③貴婦人との別れ---(白ロングワンピの背後画像)

 私は眼前に対峙する敵陣営を睨みつけていた。金属プレートで武装された愛馬は、上に跨る私の殺気を察し、今にも走り出しそうな気配をみせている。
 敵陣の前には部隊長と思われる者が、部下数人を連れて立ち、後方に数百の歩兵部隊と弓兵が並ぶ。
 先ほど突き返した敵軍の使者は、捕虜の解放には、我々の部隊の撤退が条件だと言った。私が国王から任されたのは捕虜一人の解放ではなく、敵軍の殲滅である。その条件は飲めない。
 だが、使者が口にした名前は聞き慣れたものだった。捕虜として前線に私の娘が連れてこられたのは、偶然では無いのだろう。
 私の命よりも大切な物が奪われようとしている。

 戦略的価値の無い人里離れたその村を、敵国が占領したと知らせが入ったのは三日前。劣勢な敵国の苦し紛れの陽動作戦であることは誰が見ても明らかであり、軍事会議では私以下全ての武官、文官がその村は捨て置き、最後の大戦へ全戦力を向けるべきだと意見した。だが、国王の一存でこの村の解放が決定された。私は皆に済まない気持ちだった。
 隣国との国家の存亡を賭けた戦は長引いていた。争いの跡には焼け野原が残り、皆多くの犠牲を払った。親兄弟や愛する者を失っていた。それは私も例外ではなかったが、占領された村には私に残された唯一の肉親であり、生きる目的となっている娘がいたのだ。

 村へと続く道はこの先の大きな橋を渡らねばならない。敵はその手前の丘に木材を張り巡らし即席の砦を作り上げていた。自軍は周りを小高い崖に囲まれた窪地にあり、敵に誘い込まれた様な配置ではあるが、攻め側としては致し方ない。
「軍団長、報告します!」若い斥候が駆け込んできた。「崖裏に潜む敵弓兵100、弓騎兵部隊により全て討ち果たしました」
 崖上からの奇襲は予想通りだが、そんな少数での射撃では、我々の重装歩兵の前進は止められなかっただろう。むしろ憤怒した兵士達により、軍隊の体温(士気)がちょっと上がるだけだ。
 我が軍の弓騎兵は300。崖の上から敵陣に向けいつでも斉射出来る様、待機命令を出した。

 崖上から弓部隊で狙われている事を知ったのだろう。敵陣のテントの中から白いドレスの少女が連れ出され、歩兵部隊長の前へ並ぶ。
 彼女は敵軍をゆっくり見渡した後、対峙する我々の方へと向き直った。
 西日が彼女の頬を染めていた。

 娘と最後に言葉を交わしたのは、三月ほど前、晩夏の明け方だった。
「お父様、ご無事にお戻りください」
 招集され城へと向かう私を見送りながら娘は言った。麦わら帽子に白いワンピースドレス。優しい娘は別れを惜しむ悲しい顔は見せずに、ぎこちない微笑みを浮かべていた。そして、ドレスの裾をつまみ膝を曲げた。
「貴婦人のお別れのご挨拶はこうでしょう?」
 亡き妻の面影がそこにはあった。私は娘を守るために平和な世を創ると誓い、愛おしさに娘を抱き寄せたくなる想いを感じつつも、彼女に背を向け歩き出した。

 愛する娘の姿を、敵軍の兵士どもの中に見た私は思い悩んでいた。ここへ来た理由は娘を助ける為ではなかったのか。撤退の条件を仮に飲んだとしても、単に時間稼ぎをしたいだけの敵には裏切られ、国王から預かった大事な部隊を危険に晒すだけで、娘も村も救えはしまい。では、私の命と娘の命を交換する事は叶わなかったのか。今からでも使者を出して……

 始終こちらへ顔を向けていた少女は、兜で私の顔色は見えぬにも関わらず、躊躇する気配に気づいている様子だった。
 私は微笑みかけられた気がした。
 少女は舞踊をする様にくるりと、私の目から背を向けた。白いワンピースドレスのスカートがふわりと風に舞う。深呼吸をするように空を見上げた後、顔を戻し敵部隊をゆっくりと見渡した。そして、ドレスの裾をつまみ敵兵へ向けお辞儀をする。射した西日が純白のドレスをオレンジ色に染め上げている。
 美しい姿だ。私は少女の後ろ姿に見惚れた。

 刹那、少女は振り返り、私へ向かって駆け出した。
 私は剣を振り上げ怒声を放った。
 それは全ての合図だった。
 愛馬は勢い良く少女へ向けて走り出す。近衛の騎兵が続く蹄の音。その背後からプレートメイルで武装した歩兵が怒声と砂煙を撒き上げながら突撃する。上空を黒く陰らせるほどの無数の矢が、敵陣向かって放たれる。
 私の鎧を、兜の端を、馬の腹の脇を、何本かの矢が掠めて行くが、愛馬は怯む事なく戦場を駆ける。
 少女は馬上の私の姿を認め、必死で手を伸ばした。
 手が届くと思われた、その時だった。
 一本の流れ矢が少女の背中を貫いた。
「軍団長をお守りしろ!」近衛兵の言葉が遥か遠くで聞こえた。歩兵部隊が私の脇を通り抜け突撃してゆく。
 馬から降り兜を投げ捨てた私は、地面に倒れ込む少女を静かに抱き起こした。白いドレスは胸元から鮮やかな赤色へと染まっていた。
「私の手には届きませんでした。どうか、お父様は平和な世界を……」



写真集について

出版概要(通常版)

購入:Amazon.co.jp: 岡田彩夢 1st写真集 体温がちょっと上がるだけ

発売日:2021.4.25
定価:3,300円(税込)
判型:A4
頁数:134P
出版社:(株)トランスワールドジャパン
Photographer:高橋慶佑
Stylist:いまいゆうこ
Hair & Make:太田夢子 / 双木昭夫
Produce:斉藤弘光


個人的レビュー[2021.04.25.]

 銀色の世界、美少女の興味津々な視線に射抜かれる。大きな目、整い過ぎた顔、白く透き通った肌が、まるで美しく冷たい人形の様に思えるが、ほんのりと染まった頬に愛しさを感じる……

 − 体温がちょっと上がるだけ −

 僕のレビューはあまり参考にならないと思う。岡田彩夢のファンを数年続けている身からすれば、1st写真集は心から待ち望んでいたものであり、たとえ舞台の下手から上手へ移動するだけのカットの連続(注1)であっても、喜び勇んで購入し、最大の評価をつけるに違いない。

 では仮に、彼女についての予備知識がない僕が、書店でこの本と出会ったらどうだろうか。
 平積みされた一冊を、たぶん一度は手に取ると思う。大きな目をした美少女の眼差しは、数多く並ぶ写真集の中でも一際印象的だ。
 表紙の子の視線の先に何があるのか、しばらく空想した後、背表紙と帯をさらっと読んで棚へ戻す。理由は露出が少なそうだから(注2)。

 何となく物足らない気分で店内を物色した後、店員の目から逃れる様に、空の手で出口のある一階へと向かう。貼られたポスターや客の動きなどをぼんやり眺めながら、エスカレーターを降りてゆく。その時不意に、
 − 冷たい白い肌と体温を感じる赤い頬、こちらを見つめる大きな目 −
 先程見た少女の姿が脳裏に浮かんだ。
 
 岡田彩夢の魅力はなんだろう。僕が彼女に惹きつけられるのはどこなのか。

鼻筋の通った美しい顔と幼さの残る大きい目。
ふっくらと柔らかそうな頬。
閉じても開いても愛嬌の漏れる口元。
強い意思を投影するような濃く太い眉。
艶やかな黒髪と白い肌。
家事を器用にこなす手のひらと綺麗な爪。
ベビーフェイスに抜群のプロポーション。
適度な大きさで形の良さそうな胸。
華奢な手足とは対照的に、肉付きの良い太腿。

 僕を含めて、彼女の容姿が好きでファンになる人は多いだろう。美しい女性タレント達の中で、彼女の美貌は間違いなく上位ではあるものの、しかしながら、必ずしも魔法の鏡に映るとは言い切れない。
 スタイルが良く、顔立ちの綺麗なグラビアアイドルは数多くいる。その中から僕が岡田彩夢を選んだのは何故なのか。

 書店のエスカレーターを昇り、写真集をもう一度手に取った僕は、少女と目が合った気がして息を飲んだ。彼女は硝子越しに、こちらを覗き込む様な瞳で見つめている。

 岡田彩夢の見せるその表情が、他のどの女性よりも好きなのだ。彼女の魅力的な表情は、この写真集の全てのページにちりばめられている。アイドルとしてだけではなく、一人の女性として成長途上にある彼女の生の表情は、常に変化を続け、一瞬でも同じものは無い。きっと今、この瞬間でさえ、その魅力を更新しているに違いない。

 銀色の世界、美少女の興味津々な視線に射抜かれる……彼女の視線の先が少しでも気になったのであれば、是非購入を検討して欲しい。

(補足)
注1 :
 スタッフ達によって、しっかりと作り込まれた写真集となっている。特にグラビアパートでは、ドールメイクの創始者である双木昭夫氏が担当しており、岡田の綺麗な顔を一段と美しく、"幻想的な美"へと昇華させている。
 また、「手が届きそうで届かない女の子」というコンセプトは岡田自身が考案したものであり、この写真集への意気込みを強く感じる。
 コンセプト通り、一枚毎にそれぞれストーリー性を帯びたカットとなっており、妄想癖のある岡田演じる少女と、僕たち読者の妄想の下で浮かび上がった少女。その二つの姿が仮想か現実か区別のつかない世界で混じり合い、交差しながら消えていく……自分でもちょっと何を言っているのか分からない。

注2 :
 A4で134P。北海道撮影の「銀世界の中の少女」から「大人の女性」までを幅広く演じた姿と、都内撮影のグラビアカットがほぼ半々で収録されている。水着や下着姿も多数あり見応え抜群であると同時に、露出の多い衣装であまり肌を晒して欲しくない(自分だけは見たい)という自己中心的なファン心理に陥っている。
「開放的な大自然の中、可愛らしい私服の無邪気な姿」と「閉鎖的な秘密の空間、露出の多い衣装での妖艶・優美な姿」。撮影場所を分けた理由は、対照的な二つのシチュエーションそれぞれを尖らせ、深みを持たせたかった為だと考える。
 牧場での人懐っこい笑顔が純真無垢であればある程、ランジェリー姿で小悪魔的に誘う仕草に、より一層の鼓動の高鳴りを感じる。

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