光合成と分裂

もしも魔法使いが1つだけ願いを叶えてくれるとしたら、あなたは何を願うだろうか。

僕は「人類を光合成と分裂によって生きられるように進化させてくれ」と願いたい。

まず光合成についてだが、日光を浴びるだけで生きるために必要な栄養を生成できれば、ものを食べる必要がなくなる。そうすれば世界から貧困がなくなる。賃金労働も必要なくなる。

分裂で増えることができれば、性行為をして子供を産み育てることをしなくて済む。人類から性別、性差がなくなり、もちろん性差別もなくなる。恋愛や性行為は芸術や文学のテーマとして愛され続けるだろう。あるいは純粋にマニアックな趣味として存続すればよい。

また分裂するときは全員大人の知能のまま肉体と人格が2つに分かれる設定にしよう(妄想なので設定は好きに操作してよい)。これで育児をする必要がなくなる。人類は育児からも解放される。

それにしてもなぜ進化の過程で性などという余計なものができたのだろう。食べて生きるシステムはそもそも理不尽だ。なぜ他の生命を奪うことなしに生きられないのだろう。生きるために食べなければならず、繁栄のために生殖しなければならない。この2つが人類のすべての不幸の原因だ。光合成と分裂、これしかない。

昨日の夜、酔っ払って上記のような内容のツイートを連投した。

しかし朝になって冷静に考えてみると、もしも人類が光合成で生きられるようになったら、たとえば今こうしてnoteを書くために使っているスマートフォンのような高度な製品を数多の労働者をこき使って作らせるなどということはできなくなるだろう。「食べるための半強制的な賃金労働」から解放されれば自分は好きなだけ芸術活動を楽しめる……そんな楽観的な妄想をしていた。しかし全人類が「食べるための半強制的な賃金労働」から解放されれば、スマートフォンはおろか絵を描くのに必要な紙と鉛筆さえも手に入らなくなる可能性が高い。ひょっとしたら家や衣服も得られなくなるだろうか(人類が食べることから解放されることで資本主義経済はどのように変化するのか、僕にはまったく想像がつかない)。

いや、それでいいのかもしれない。労働者を安くこき使って得られる豊かさなんてそもそも存在しないほうがいい。身近な人たちと知恵を出し合い、寒さや暑さや風雨を凌いで生きていこう。分裂によって子供という圧倒的な弱者が存在しなくなれば、そういう地味な助け合いのコミュニティを小規模に実現できるのではないかと思う。まさしくユートピアだ(病気と老いを想定していなかったが、ひとまずそれらも存在しないことにしよう。寿命が来たらスッと消える生命体ということにしよう)。芸術をやりたければ、まずは地面に小石で絵を描くことから始めようじゃないか。夢を描こう。きっと魔法使いが叶えてくれる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?