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立方体の思い出 #毎週ショートショートnote

マイの彼氏が事故で亡くなったのは、ちょうど一年前。
墓地に向かう道のりを僕はマイと一緒に歩く。

ふとマイの胸に目をやると、立方体の形をした銀色のペンダントが光っていた。
「彼が亡くなる前にくれたの。サイコロみたいに目が描かれてるのよ」
視線に気づいたマイが、淋しげに笑いながら話す。
「俺の気持ちとか言って、このまち針みたいなものと一緒に渡してくれたんだ」
針というより、小さな鍵のようなものが隣についている。

サイコロと鍵。何か意味があるのだろうか。
英語で言うとダイスとキー、ダイスキー……大好きか!
頭の中で閃くものがあった。もしかして……。

「ちょっと見せて」
特に穴はないようだ。いや待てよ……。
一の目の部分を鍵の先で押してみる。すると目が中に押し込まれ……サイコロが突然開いた。
中からこぼれ落ちてきたものがあったので、慌てて手でつかみ、マイにそれを見せた。

キラキラと輝く指輪。

僕の手のひらに、今度はマイの涙がこぼれ落ちてきた。


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

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