1億円の低カロリー

私が結婚した彼はお金持ち、いわゆる億万長者だ。
だから、掃除や洗濯などの家事は、みんな使用人がやってくれる。
食事は、栄養士がバランスのよいカロリー控えめの献立を考え、シェフが全部作ってくれる。
どれもおいしい料理だったが、しばらく経つと物足りなくなってきた。

「ラタトゥイユでございます」
おいしい。でも唐揚げ食べたい。
「カポナータでございます」
おいしい。でもコロッケ食べたい。
「白身魚のマリネでございます」
おいしい。でもとんかつ食べたい。

彼は小さい頃から食べ慣れているのか、特に不満もないようだ。

結婚して初めての私の誕生日。
彼がたまには外で食事しようと言ってきた。
我慢の限界にきていた私は思わず、
「唐揚げかコロッケかとんかつ、いや…それ全部食べたい!」
と言ってしまった。
彼はびっくりしていたが、やがて納得したような顔になり、こう答えた。
「分かった。じゃあ僕が社長をしている、安くてうまい、ボリューム満点の定食屋に行こう」

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