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narinonote
しゃべるピアノ
両親が事故で亡くなり、幼い私は祖母に引き取られた。
祖母の家には立派なピアノがあった。
私は両親がいないことで、何気ない言葉に傷つき、度々悲しい気持ちになった。
そんな時ピアノを弾くと、いつも励ますような声が聞こえた。
「そんなことでくじけちゃだめ。あなたは強い子なんだから」
大学受験の時、一流大学と好きな勉強ができる大学と両方合格した。
ピアノを弾くと、凛とした声が聞こえた。
「他人の評価は関係ない。あなたの信じる道でいいのよ」
大学で好きな人ができ、就職後も交際は続きプロポーズされた。
ピアノを弾くと、優しい包み込むような声が聞こえた。
「あなたの選択は間違っていない」
涙がこぼれた。私は泣きながらピアノを弾いた。
真夜中、誰もいない部屋から声が聞こえる。
「お母さん、あの子を立派に育ててくれてありがとう」
ピアノはそれを聞くと、古くボロボロになった椅子に向かってこう答えた。
「あの子のことを支え続けてくれてありがとう……お父さん」
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