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小手先産業株式会社

 常識というものは、とても厄介なものだ。なぜなら、一旦、そこから抜け出すと白い目で見られ、明らかに距離を置かれ、「あの人に関わらないほうがいいよ」ということになってしまうからだ。しかし、進化論ではないけれど、生き残るのは、強い者ではなくて変化できる者なのである。最近、面白いことに、“業績がよい”とか、“評判がよい”といわれる会社を見ていると、常識的には、「儲けられないことをしている会社」がうまくいっているのだ。

 そもそも、会社を見る時には、「①人、②モノ、③金(カネ)、④情報」の4つの要素に分けてみてみるとよくわかる。今回は、その中でも、「③金(カネ)」の要素にフォーカスして考えてみたい。
 会計のセオリーからいえば、粗利がたくさんあって、固定費が小さいほどいい会社である。粗利というのは、例えば、たこ焼き屋さんでいえば、小麦粉や蛸やソースという材料費に左右される。価格は頻繁に変えるものではないので、いかに安く原材料を押さえられるかで、粗利が変わる。また、たこ焼きが売れようが売れまいが必要となる費用がある。それが、人件費や賃料や返済金などの固定費であり、これは小さければ小さい方がよい。特に人件費は固定化すると大変なので、アルバイトなどの比率を増やすことで調整弁のように動かせるようにしてしまうということが進んできた。

 ところが、このところ話題になっている会社をよく見ると、逆のことをやっている事例をみることが多くなってきた。やたらといい素材を使ったり、以前よりもいい材料を仕入れている、とか。人数を増やして一人あたりの負担を減らすようにしている。それもアルバイトではなく正社員を増やしている、とか。残業をなくすどころではなく、営業時間を短縮して早めに終わるようにしている、とか。今まで、常識とされてきたことと、逆のことをやっているのだ。
 それで、結果的に、業績が伸びたり、利益が増えたりしているのだから、経営コンサルタントや税理士などにとっては、とても始末が悪い。普段、あれほど「やってはいけません」、と言っていることをやることで成功してしまうのだから、尚更だ。

 しかし、よく見ると、そこには実にシンプルな事実が隠れていたことに気が付かれただろうか?原材料比率をあげれば、よりよい製品や商品が出来上がってくる。それを喜ぶのは、顧客である。正社員が増えてお互いの負担が減って助け合うことが出来れば、仕事に余裕が生まれ、いままで気がつかなかったことが改善されたりする。それを喜ぶのは、社員である。そこには「喜ぶ人の姿」が、ちゃんと見えているのである。
 いままで、価格競争が一番というとこで、いかにコストを下げるかということを一生懸命やってきた。そこでみんなが見てきたのは利益をいかにあげるかということだったのだ。数字を追っているだけの会社に魅力があるだろうか?ノルマや経費、勤務時間にはじまり、今季の売上目標、利益目標、新規顧客数など、数字に囲まれて追われるだけの会社になっていないだろうか。顧客の笑顔と感謝に囲まれつつ、社員同士が信頼と協力のもと助け合いながら頑張っている会社で働けたら、どれだけ有意義な毎日が送れるだろうか。

 では、どうやれば会社が変われるのか?それは経営理念をしっかりと立て直すことにある。何のためにこの会社があるのか?この会社を通じて、どんな価値を世の中に届けたいのか?この会社は社会に何を還元するのか?次の世代に何を残したいと考えている会社なのか?そして、同じ想いを持って、一緒に働いてくれる仲間なのか?
 小手先の、場当たり的なアドバイスや、うまい話やリスクの小さい方法に乗るのではなく、まずは、その常識を捨ててみよう。何が大切なことだと考えるのか、1つだけあげるとしたら何なのか。答えは、自分自身の中にあるのだから。

#経営 #常識 #理念  

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