短歌連作『四月のコイントス』
旬があることの残酷 春雨で落ちた花片を避けるひとびと
今月になって一度も見ていない同じ号車にいたサラリーマン
雑草という草はないみんなっていう人はいる ひとりぼっちだ
裏表ないコイントス介入のできない意志が埋め尽くす街
「悪い人じゃないんだけど」と目の粗いやすりで撫でるような先輩
浴槽を繭に見立てて泣くことの権利きみにもわたしにもあり
本当のことを話す気のない人が主催の自己紹介のくるしさ
やり込んだパズルゲームを消去して初夏に真顔を覗かれていた
火曜日に観るレイトショー 褒められる大人に必要のない歯車
適切な名前をつける行為から逃げ切った夜の散歩涼しく
サポートをいただいたら、本屋さんへ行こうと思います。