見出し画像

「アジアのどっかの味がする鍋」

「鉄観音茶」の醸し出す甘さとフルーツを思わせる香りと最後にやってくる苦味。これぞ「旨さ」だと気付いた私は鉄観音を主軸にした鍋用のスープの開発に着手。しかし味見をしているうちに思わぬ展開へと進んでいく。
 
スープのベースは「鶏ガラ」を使用。しかし今回は若鶏ではなくコーチン種の親鶏のガラを使用することに。煮て30分。予想を遥かに超える灰汁。働いた鶏の証なのか。2時間ほど鍋の前で灰汁戦苦闘しておりますと灰汁も落ち着き後から黄金の鶏油がジンワリとではじめた。
 
野菜は玉ねぎ・長ネギ・人参の甘み軍団のみ。実質5時間鶏ガラが砕ける手前まで煮詰め味見すると、ベトナムハノイで食べたフォーガー(鶏のフォー)のスープを彷彿とさせるシンプルで優しい味がそこにはありました。なるほど。ベトナムのフォーガーの出汁は老鶏からとっていたのかと確信。働いた親鶏にしかでない深みのある旨味。「そうだ。アレがある」
 
冷蔵庫に忍ばせた乾燥バイマックルーとコリアンダーの根っこを擦り下ろしスープに投入すると、バイマックルーの柑橘感とコリアンダーの歪みが何処の国とは思えぬ味わいに変身した。
 
上記のハーブを入れるはずでは無かった為予定が狂うが味は確か。しかし、何かが足りない。楽しみで出掛ける旅行前に何か忘れ物をしたかに近い感覚。野菜の甘みと老鶏ガラの深みのある旨味にバイマックルーの柑橘感が爽やかに来ているのに言わば全体的に締まりがない。もしかして...酸味?酸味と言えば酢もあるが酢ではない。
 
答えは「トマト」でした。トマトを煮込むことによりグルタミン酸が抽出される為、酸味と旨味が出てきた。本来なら真昆布を入れる予定だったのだが今回はベンチ入り。そして冷ましたスープに鉄観音茶を投入。
 
翌朝一煮立ちさせたスープを飲み絶句。今までに味わった事のない不思議でエキゾチックな優しいスープが完成した。鉄観音の香りが奪われているのが残念だったので次回は鍋をやる手前に煮出すこと。このスープは水炊きスープやキノコ鍋や海老や帆立や今の季節旬な真鱈の白子などを入れた海鮮鍋に抜群に合う。〆はホールトマトを入れ米を入れチーズ・バジルを散らし水分が少なくなるまで煮込めば複雑なリゾットが出来上がる。

(((スープ材料 20ℓ)))
老鶏 鶏ガラ×2羽
タマネギ×4個
長ネギ×2本
ニンジン×2本
トマト×5個
コリアンダー根っこ×4束
乾燥バイマックルー葉×6枚
岩塩ピンク×小さじ2杯
鉄観音茶×大さじ3杯

((作り方))
1)お湯を沸かし鶏ガラを煮る
2)2分ほど煮たら鶏ガラを取り出し内臓など臭みになる部分を丁寧に水で洗う
3)もう一度お湯を沸かし鶏ガラを煮る
4)玉ねぎ・長ネギ・ニンジンを投入
5)灰汁をひたすら取る
6)塩・バイマックルー・コリアンダー根っこを投入
7)湯むきしたトマトを投入
8)5時間ひたすら煮る
9)鶏ガラだけを取り出す
10)ブレンダーでタマネギ・長ネギ×ニンジン・トマトを粉砕する
11)鍋をする寸前で土鍋に鉄観音を投入

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?