見出し画像

原付バイク

錆びついたママチャリが盗まれる。錆びついたせいで鍵がスムーズに閉まらず、めんどくささが重なり、誰も盗らないだろうとタカを括って鍵をせず自宅の駐輪場に置いていたら、いつのまにかあるはずの自転車がひとりでに行方不明になっていた。

何かが重なれば良いことが起こるかもしれないし、悪いことが起こるかもしれない。重ねたことが明らかに事態を招いた。重ねれば重ねるほど薄っぺらになっていくこともあるだろう。何もしないということも時には大事だ。しかし、手抜きは重ねてはならない。

貴重な妻の通勤手段だった自転車。錆びついていたので嫌になってどっかに行ってしまったのだろう。物は大切にしなければならない。

そんなこんなでママチャリが無い生活の不便さに耐えられなくなったのか、原付バイクを先日、購入した。

中古車だけれど、隅々まで磨き上げられ、丁寧な整備が遠目からでもはっきりとわかる。

店主の頭は禿げ上がり、ガッチリとした風貌と仕事ぶりのギャップがさらにそれを際立たせ、奥さんの丁寧な接客と整理整頓された店内が購入に際して妻の安心感に繋がったのは間違いない。

妻は原付バイクに乗ったことはない。車は運転する。安心はできない。「止まった時はどうするん?倒れるやん?」の妻の問いに対し、わたしは「自転車と一緒でスタンド立てれば倒れないよ」と。

さらに、妻の問いは続く。「いや、信号停車の時とか?どうすれば?」。意味不明である。何を言ってるのかわからない。「普通、信号待ちの時は地面に足をつくよね?自転車と一緒だよ」と、この答えでいいのか?と半信半疑のまま????の心境で返答すると、「だよね」と強く強く納得して会話が終了した。

とりあえず、加入している自動車保険に原付特約をつけてもらった。

先日、「わたしの人生つまらない」とボヤいていた妻。乗ったことのない原付バイクに乗り始めた妻。近所を練習のため原付バイクでウロウロしている妻。ちょっと怖かったけど、あそこのスーパーまで原付で行ってきたと喜んでる妻。「わたしの人生ってつまらない」と言い切ってしまう妻よ、まだ、いろいろと途中なんだ。

少なくとも初めてが経験できて良かったじゃないか。そういうことではないのか?そういうことではダメなのか?
あと何回、初めてを始められることができるだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?