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防災ゲームを使って共同作業所等の実践交流会で伝えたかったこと

社会福祉士としての活動の一環で「きょうされん東京支部」様よりご依頼を受けていた「第5回実践交流会in福生」が、昨今の事情により中止となってしまいました。資料や教材は準備していましたので、少しでも関係の皆様のお役に立てばと思い、noteで情報を公開します。

「きょうされん」については、こちらの公式サイトをご覧ください。

資料・教材提供の御礼

本講座にあたり災害想定ゲーム「KIZUKI」の購入・活用や、福祉施設向けのチェックリストの提供などは愛知県のNPO法人「高齢者住まいる研究会」様にご協力いただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

伝えたかったこと

★ 「困難は分割せよ」、具体的にできることから対策を!
★ 1に利用者、2に地域、3に施設、4に備蓄で5に訓練!
★ 教育訓練は防災ゲーム等を活用して楽しさ+実践力を高める!
★ 作業所や法人としてのBCP(事業継続計画)の大切さ
★ 守りたい「大切な何か」をみんなで共有しよう

講座(災害分科会)の流れ

分科会は教材と指導の都合から、参加者の方を2つのグループに分け、ローテーションする方式です。防災ゲーム(下記参照)は完成度が非常に高いので、事前にルールを説明し主催者の方にもご協力いただきつつ、参加者自身で進めていただくことを想定しています。

13:00~ 主催者挨拶、趣旨説明、講師紹介
13:15~ 防災ゲームのルール説明
13:30~ 【Aグループ】防災ゲーム/【Bグループ】防災ポイント解説
14:15~ 休憩
14:30~ 【Aグループ】防災ポイント解説/【Bグループ】防災ゲーム
15:15~ 質疑応答・まとめ
15:30  終了

防災ゲーム(災害想定ゲーム「KIZUKI」)について

災害想定ゲーム「KIZUKI」はNPO法人高齢者住まいる研究会が開発した対戦型の防災ゲームです(商標登録済)。ゲームの詳細については、老人総合福祉施設「グリーンヒルみふね」のページが分かりやすいのでご覧ください。

- このゲームを選んだ理由 -
◯ 福祉(施設)の特徴が反映された数少ないゲームのひとつ
◯ ルールも理解しやすく、対戦型で楽しめる
◯ 振り返りや意見交換で様々な「気付き」がある
 → 筆者が伝えたい「具体的な対策」につなげやすいため。

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(写真1)スタート時の配置と説明

筆者の所属法人で2016年から主催しているイベント「防災ゲームDay」でもご紹介いただいており、大変好評な防災ゲームのひとつです。

簡単にルールをご紹介します。

このゲームは「限られた人員、資機材、時間の中で起きる様々なイベントを、福祉施設の利用者や周囲の状況を考えながら対応していく」対戦型のゲームです。

まず、プレイヤー(チーム)はお互いに写真1のようにカードやチップ、シートを配置します。

先攻と後攻を決め、先攻がサイコロを3回振り、出た目の合計数だけ「イベントカード」を引きます。※この時、後攻は目をつぶってカードの枚数を分からないようにします。

カードを後攻に見えないように用意したら、先攻は「イベントカード」に書かれている以下のような内容を読み上げます。

=== イベントカードに(主に)記載されていること ===
▶ 様々な状況、課題
▶ 対応に必要なスタッフ

▶ 対応に必要なアイテム
▶ 対応しない/できない時のダメージ(ライフポイントマイナス)

『必要なスタッフ』で対応すると「スタッフコマ」をシートの次の段に移します。このターンはそのスタッフは他の活動ができません。
『必要なアイテム』で対応すると「アイテムカード」がなくなります。
『対応しない/できない』ときは「ライフポイントチップ」から指定されたポイントを支払います。

スタッフやアイテムを使って対応するか、ライフポイントを失ってもスタッフやアイテムを温存するか…後攻側はこの先の状況(先攻側が何枚カードを持っているか分かりません…)を考えながら対応しなければなりません。

1枚対応したら、次のカードを先攻側が読む→後攻側が対応する、をカードの枚数分繰り返します。カードがなくなったら後攻側がサイコロを振り…を繰り返します。

ゲーム終了の条件は3つです。ゲームとしては、どちらのチームが先に終了するか(どちらが長く対応しつづけられるか)で競います。

=== ゲーム終了の条件 ===
・水(カード)がなくなる
・食料がなくなる
・ライフポイントチップがなくなる

最後の「意見交換」の時間をとり、対応の課題や普段からの備えについて「気付き(KIZUKI)」につなげていきます。

福祉施設・職員、利用者・ご家族の防災ポイント

防災ゲームと入れ替わりで、福祉施設・職員、利用者やご家族のポイントについてご紹介します。冒頭に手軽に確認できるチェックリストをご紹介します。ホームページからだけでなく、アプリをダウンロードして使うこともできます。

=== 減災教室(福祉コース)===
減災教室(トップページ)
福祉施設コース(初級)
 編著:岐阜大学教授 髙木朗義
 製作:岐阜高専コンピューター倶楽部
 企画:一般社団法人 Do It Yourself

こうした点を参考にしていただきながら、災害事例から主な課題や対策のポイントを紐解いていきます。いくつかスライドをご紹介します。冒頭に述べたように、重視しているのは以下の点です。

1 利用者(作業所に通所されている方々)の特徴や課題を整理する
2 地域の災害特性を知る
3 施設の安全性を高める
4 備蓄をする
5 (実際に即した)教育・訓練を定期的に行う

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(図1 映像資料「逃げ遅れる人々」の紹介)

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(図2 弱いところに力が集中してしまいがち )

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(図3 『支障=困難』は分割してできるところから対策を)

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(図4 「名簿」に登録しない・できない)

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(図5 避難はしても、しなくても大変)

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(図6 要配慮者対応7つの視点)

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(図7-1 施設・個人で意識したい3つの「生」)

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(図7-2 ハザードに合わせたチェックポイント)

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(図7-3 地震に備えるチェックポイント)

※当日はこちらの「3つの生を守る」部分について個々の項目やハザードごとについてスライド配布版を中心にご紹介しますが、note版では長くなってしまうので一部のみ紹介させていただきます。

コメント 2020-03-25 135060

(図8 福祉施設の事業継続計画-BCP-の整理)

参考資料

◯ 災害時障害者のためのサイト|NHK
◯ 自分でつくる安心防災帳|国立障害者リハビリテーションセンター
◯ 減災グッズチェックリスト|人と防災未来センター

まとめ~「守りたい何か」を共有して~

施設職員の方も人間です。ご家族や大切にしているモノなど、守りたい何かがあります。利用者さんや利用者さんのご家族も同様です。お互いが大切にしたいもの、守りたいものを自然災害から守るためには、どうしたらいいのでしょうか。

ぜひ、この機会に職員の方はご家族やご友人、施設の利用者の方々と「心配なこと」や「災害が起きても守り抜きたいヒト・モノ・コト」などについて、話し合っていただきたいと思います。

「防災」とは、手段であって目的ではありません。皆さんが、利用者さんが、それぞれのご家族が、守るべきものを守れることが「防災」の目的です。

自分や利用者さんの大切な何かを脅かすかもしれない「リスク」は何でしょうか。その「リスク」を取り除いたり、予防したりするにはどうしたらいいでしょうか。

「何をするか」だけでなく「なぜするのか」を考えながら、防災に取り組んでいただければ幸いです。

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