見出し画像

ファッションとデジタルの付き合い方はどうなる?


「あつまれどうぶつの森」へマークジェイコブスやヴァレンティノが参入したり、「ポケコロ」とケイタマルヤマがコラボしたりと、最近ファッション×デジタルに関する話題が増えてきたように感じます。



これまでアバターをつくったりする機会がなかったので、いまいちデジタル空間でのファッションデザインの楽しさや可能性にピンときてなかったのですが、先日ZOZO FashionTechNewsが投稿したデジタルファッションに関する記事を読んで少し視点が整理されたので、そのことについて書こうと思います。



「アバター」と聞いて想像するもの


アバターと聞くとどんなイメージを思い浮かべますか?

アニメのキャラクターのようなもの?
自分と雰囲気がなんとなく似ているもの?
それとももっとリアルなもの?

私が以前までアバターと聞いて思い浮かべていたものは、ピクサー映画に出てくるようななんとなく自分に似ているキャラクターでした。そういうキャラクターが着る服は、かたちが簡略化されていてバリエーションがあるわけでなく、柄や色などのグラフィックの要素が大きいので、ファッションデザインとしてあまり広がりを感じられなかったのかもしれません。

ただ、PS4のゲームキャラクターなどを見てもかなりリアルになってきているので、アバターをどこまで自分と重ねられるようになるかで、デジタルでのファッションの楽しみ方も変わってくるのかな?くらいに考えていました。

そんなアバターの印象が、TELYUKAさんが作成した「Saya」を見た時に大きく変わりました。

これまでアバターに着せていた服は、アニメや漫画に見られるある程度デフォルメされた服で楽しまれていましたが、Sayaのようなリアルなアバターを一般的に利用できるようになると、そのアバターが着る服はどうなるのか。

自分が今着ているものを着せるのか、それとも普段着れない服をアバターに着せてみたくなるのか。

ピクサー的なデフォルメされた外見からSayaのようなリアルな外見まで、様々な解像度のアバターが登場し一般化した時、デジタル空間でのファッションはどう変化し、そこでできたデータがどう活用されるのか。また、オンライン上で生まれたデザインがフィジカルなファッションにどう影響するのか。

デジタル空間でのファッションの楽しみ方に、これまで感じられなかった広がりを感じられるようになりました。


デジタルファッションの拡張


これまで話してきたアバターの解像度や現状のデジタル技術の使われ方から、ファッション分野でのデジタル技術の活用は、大きく3つのコンテンツに分けられるんじゃないかと思います。

①オンライン上のみで楽しめるコンテンツ
②フィジカルを意識しつつオンライン上で楽しめるコンテンツ
③フィジカルな服へ活用できるコンテンツ


①の「オンライン上のみで楽しめるコンテンツ」は、あつ森のようなデフォルメされたアバターに服を着せたり、自分が作りたい世界観を表現するために服を活用するためのコンテンツです。

VR空間内で、リアルなアバターよりもキャラクターの方がいいと思う人も一定数いると思うので、そういった人向けのコンテンツが増えてくると思います。

今もあつ森のマイデザインを使って、マメやグッチなどのハイブランドの服を模したものが作られて楽しまれているのも、このコンテンツの一つだと思います。


②の「フィジカルを意識しつつオンライン上で楽しめるコンテンツ」は、フィジカルでも着られるような服をリアルアバターに着せて楽しむコンテンツです。

今現在着られているような服から、新しい視点を与えるという意味でのアートに似た服まで、服のデザイン自体に様々な広がりを見せる区分だと思います。

ZOZOの記事内でThe Fabricantが

視覚的に「21世紀のファッション」の表現手法を模索するなかで彼らは、「従来のファッションプロセスと同様に、コンセプトフェーズでの考え方の基礎となる人間のニーズ・欲求・文化」を反映しつつ、「新しい形・質感・素材と色・背景・風景・物語を想定した創造性とテクノロジーの境界を押し広げる」ことを心掛けた

と言っているように、これまで一部のコレクションブランドが人が着ることを意識しつつ表現してきた新しい服の提案や世界観が、より広く楽しまれるのではないかなと思います。

リアルアバターと言いつつも自分自身に似せる必要はなく、体型や容姿など、なりたい自分にVR上でなれるので(現在のアプリを使って肌の色や目の大きさ、骨格などを変えるように)、これまで自分には似合わないと感じてた服や、コレクションなどで見かけたマス向けとは言い難いと感じた服も、VR空間では着こなせるようになるかもしれません。

また、もともとフィジカル向けに3Dモデルで作られた服のデータも活用できるので、①と同じように普段自分が着る好きなブランドの服をアバターに着せて楽しむこともできそうです。

2019年に「カンヌライオンズ」でグランプリを受賞した、コペンハーゲンの「CARLINGS(カーリングス)」が発表した「adDRESS THE FUTURE」のような事例もありますが、サスティナブルであることが求められていく今後、リアルアバターが普及していくと、フィジカルに捉われないファッションの楽しみ方が増えるのかなと思います。


③の「フィジカルな服へ活用するコンテンツ」はアバター用ではなく、あくまでもフィジカルな服を対象に活用されるコンテンツです。

CLO3Dなどのソフトもそうですし、先日HATRAさんが行ったSTYLYを利用したARでの展示受注会もその一つと言えます。

また、記事内でThe Fabricantが

「COVID-19の影響で、業界は余儀なくサプライチェーンのフローを再考する事態に陥りました。突然、ファッション業界はデジタル化への転換を必要性を迫られたのです。物理的なサンプルが入手困難であること、渡航が禁止となったこと、消費額が変動している事態を前に、デジタルへの転換とも言えるデジタルファッションは業界の運用を継続するためにmust-have(必須)となっているのです。」

と言っているように、コロナの影響だけでなく、サスティナビリティの面から考えてみても物理的な移動コストや運搬コストへの対応は今後必要になり、それにデジタル技術の活用が期待されています。

例えば、製品の輸出入にコストをかけるよりも輸出先の国で製品を作ってもらい、そのままその国で販売するような運用モデルも考えられますし、デザインを外注しているメーカーや個人で服作りを楽しむ人たち向けに型紙の情報を含んだ3Dデータでデザインを販売するようなビジネスモデルも考えられるかなと思います。



以上が記事を読みながら頭の中に思い浮かんだり、考えたりしたことです。

大きく3つに分類しましたが、明確に住み分けされると言うよりはそれぞれがグラデーション状に繋がって発展していくのかなと。

まだまだ考えが足りず机上の空論な部分も多いですが、自分なりに何か実践してみながらこれからも考えていこうと思います。


いただいたサポートは、活動費に使わせていただきます。