jubeatで学ぶゲームの大会に出場するためのメタ思考法
皆さん初めまして。ねぎびーん(@imokenpi2011)と申します。
REFLEC BEATから音楽ゲームに出会い、jubeatを中心にBEMANIやSEGAなど幅広い機種で楽しんでいます。
本記事はごろーくん (@miz56_)主催の「jubeat Advent Calender 2020」の一環で作成しています。去年に引き続き企画ありがとうございます!
突然ですが皆さんに一つ質問です。
あなたはゲームをやっていて
「大会に出てみたいなあ..」
と思ったことは無いでしょうか?
.......うーん....
ちなみに自分は煩悩の塊なのでいつもそのことを考えていました。
やはりゲームに限らずある程度打ち込むとトッププレイヤーの姿が目に入ってきますし、彼らが大舞台で輝いているのを見ると「一度は出てみたいな」って思う方も多いのではないでしょうか。
しかし、公式大会となると大体は相当狭き門。更に、その少ない枠は現行のトッププレイヤーで占められている事も多いです。(実際に機種によっては「同窓会」と揶揄される程に出場者が固定されていました)
自身も音楽ゲームを長い期間やっていて、非公式大会に出場する事はあれど公式大会に出場するトッププレイヤー達には遠く及ばず出場は夢のまた夢という状態でした。
しかし、今年になってようやく幸運にも滑り込みでKACと闘神祭という2つの公式大会に出場することが出来ました。(闘神祭決勝はコロナで中止でしたが...)
....なんだか一見凄そうに見えますが先程も言った通り、正直言って自分の実力はトッププレイヤーには遠く及びません。
ではどうしてそんな自分が大会に出れたか?
もちろん仲間に恵まれた運やタイミングもありましたが、自分はメタ思考という考え方をフル活用しました。
メタ思考とは一言でいえば
「物事を一つ上の視点から考える」
ことです。
メタ...? 思考.....?
....違うからね??
つまり全体を見て「他の人はどう動くのか?」を常に予測しながら戦略を組む事で実力以上の成果を出そうぜっていう感じです。
最近よく聞く「人と同じ事をするな!!」みたいなのは、メタ思考がベースになっているんですね。みんながやりそうな事から少し発想をずらすと思わぬご利益があったりする事もある訳です。
例えば銭湯に行ってお腹がぽっこりしている人がたくさんいるのに気づいた時に「腹筋割れているだけで10人に1人の逸材なんだなあ」みたいに考えて筋トレに打ち込んだり、食生活を見直したりとゲーム以外にも色々応用がききます。
なので今回は闘神祭の対策をした経験からメタ思考をどうやって大会に出ることに活かしたか、おまけで実際の対策プロセスを語っていこうと思います。
【プロローグ】闘神祭に出ようと思ったきっかけ
先程も言った通り、今年初めて念願のKAC(Konami Arcade Championship)という公式大会に出場できました。
しかし、実際の大会での結果は凄惨たるものでした。
上が全体で下が自チームの結果(わんぱくようちえんのMP*NEG-Yが自分)になるのですが、結果は出場したチームの中で圧倒的最下位でした。
jubeatの大会では理論値の1000000点中995000点を割ってしまうと「事故」と言われるので、どれだけ酷かったかが分かると思います。
実際に初めて公式大会の場に立って分かったのですが、普段ゲーセンでプレイするものとは全く別物でした。緊張で心臓はバクバク、手も震えて譜面も見えない。いつも通りの実力は全く出せませんでした。
...完全に大会の雰囲気に飲まれて何も出来ずに敗退に終わりました。
出れたのが嬉しかっただけにあの時の悔しさはハッキリ覚えているし、何も出来なかったやるせなさが日々募るばかりでした。
そんな中でタイトーが開催する闘神祭という大会の存在を知ります。
本来はアーケードの格ゲーのみの大会だったのですが今年から音ゲー部門が追加され、その中になんとjubeat部門も含まれていました。
その時に
「もう一度大会に出てリベンジしたい」
と強く思ったのが出場を目指した動機になります。
KACに敗退した時点で既に闘神祭の日程やルールは発表されていたので、すぐに対策に取り掛かりました。
では対策編に入りましょう。
【1章】準備をしよう
メタ思考は一歩上の視点から見る必要があるため、ルールの把握や他の人の状況の把握などを常に把握しながら対策することになります。
今回は「闘神祭の予選を突破して決勝ラウンド出場する事」が目的だったので以下のような流れになります
ルールの確認(課題曲、開催形式など)
⬇︎
周りの動きの予想(誰が動きそうか)
⬇︎
出場する予選、対策する筐体の選定
⬇︎
対策の方向性の確認(最大値or安定値)
⬇︎
ライバルに合わせて対策の強度を決める
⬇︎
実際に対策する
この様になります。
これだとざっくり過ぎるので説明していきましょう!
1-1,大会の特徴とルールを確認する
まずは公式サイトを見て「どんな大会か?」を把握しましょう。
特に大会は個人戦か団体戦か・出場可能な地域の範囲など細かく指定されている事が多く、そのルールの範囲ならある程度は自由が効きます。
そして、上の公式サイトの内容を要約すると以下になります
・予選は全国各地のゲーセンで行われる
・全国どの予選にも参加でき、何回でも挑戦できる個人戦
・大会はHARD MODEで行われる
・課題曲はLv.9中位~Lv.10中位までの約20曲
・予選は課題曲の中から抽選で行われる
・予選は全員→4人で決勝の流れで決まる
一言でいうと、「誰も経験したことのない新形式」です。
詳しく解説すると、近年の大会はオンラインで予選を行うことが多く店舗で実際に予選を行う形式の大会は「天下一音ゲ祭」以来の約5年ぶりでした。
また、「HARD MODE」というのは通常プレーより2倍PERFECTが出にくい高難度モードなので1曲ごとに専用の対策を行う必要があります。
HARD MODEのヤバさは以下の動画の冒頭で解説されています。
また、KACの予選は「一定期間内でHARD MODEで決められたLv.10上位曲のスコアアタック」で行われているのに対して今回は「HARD MODEで20曲からランダムでLv.10中位以下曲の一発勝負」となります。
上位陣は基本Lv.10の上位曲メインでプレイしているため、今回は
「闘神祭専用の対策が必要」
「約20曲もの課題曲を短期間で網羅する必要がある」
「一発勝負なのでベストスコアより安定力が重視される」
必要があることがこれで分かります。
1-2,予選日程と周囲の状況を照らし合わせる
次に予選の日程を見てみましょう。(ちなみに準備を始めたのは1/20頃です)
どうやら最短で2/9の仙台名掛丁で行われる予選を皮切りに毎週開催される様です。
さらにKACの決勝が2/1に控えており、トッププレイヤー陣はそちらの対策に追われているので初期の予選には殆ど無対策で出場する事になります。
また上位陣の関心もKACに釘付けになっているため、対策をしている人は殆どいませんでした。
ここで以下のことが分かります。
・上位陣は東京、大阪に集中しているので地方が比較的ライバルが少ない
・出場者が確定し出すと上位陣の多くが大会を意識するので後半になればなるほど対策済の出場者が増える→激戦になる
・現時点では対策者は殆どいない
つまり、上の条件を加味すると狙い目の予選は
・2/9 T/S 仙台名掛丁
・2/22 T/S 仙台クリスロード
の2つになります。
予選までには3週間しか無かったため、すぐに対策に取り掛かりました。
1-3,ライバルを想定しよう
対策する上で大切なのは、方針を決めることです。
その指標として「誰が予選に出場しそうか?」を知る必要があります。
ちなみに自分が出場しようとしていた予選はどちらも仙台開催でしたが、仙台には今年度のKACで個人世界2位のトッププレイヤーがいました(以下Dさんとします)。それだけでなく、東北には同じくKAC出場者が何人かいます。
そのため、
Dさんを意識しつつ全国から来るかもしれない刺客を基準に対策する
事が基本の方針となりました。
1-4,対策の方向性を決めよう
最後に対策の方向性を決めましょう。今回に関してはDさんを意識した戦略になるので
「Dさんはどう動くんだろう」
の切り口から考えてみます。
まずDさんは2/1のKAC決勝出場者のため対策に忙しく、2/9の名掛丁予選までには殆ど対策ができていない状態だと想像できます。
また、Twitterで他の東北のKAC出場者達が闘神祭の対策をしない旨の発言をしていたので、恐らく
「Dさんの性格上、当日に少しだけ対策して予選に臨むだろう」
と予想しました。
そのため、自分の対策の基準は
当日少しだけ対策したDさんに勝てるだけの安定力、スコア力
という方針になりました。
ただ、自分とDさんの実力差は歴然なので
「全力で3週間対策して、やっと当日対策のみのDさんと互角かそれ以下」
という認識でいました。嬉しい事にこれらの予想は後に全て的中します。
メタ思考が活躍するのはここまでで、後は「対策者の監視」くらいになります。
【2章】実際に対策をしよう
1章で対策の方針が決まったため、次は実際に対策する事になります。
闇雲に対策する前に具体的に
・どのスコアまで詰めるか
・どの筐体で練習するか
・どの曲を中心に練習するか
を実際に対策しながら決めていきます。
2-1,スコアの目標を決めよう
ここで大切なのが、再現性のある目標にすることです。今回は
「全力で3週間対策して、やっと当日対策のみのDさんと互角」
という認識でいたので、基本的には平日の仕事帰りと休日の時間を可能な限り対策につぎ込む前提で考えます。
また、今回は抽選で選ばれた3曲の一発勝負で決まるので必要なのは
「課題曲20曲のどれが選ばれてもHARD MODEでそれなりのスコアが出せる」
事が目標になりますね。
そのため、
ベストスコアを上げる(再現性あるスコアで)
↓
安定スコアをベストスコアに近づけていく
↓
ベストスコアを上げるの繰り返し
が基本方針になります。
そこで、まずは課題曲を全てHARD MODEのスコアで全国3位以内になる事を目標にしました。
また、メモで
・曲名、現在の目標スコア
・ランキングのURL
を書き込む事で、目標の達成度とライバルの監視を並行して行いました。
↑こんな感じです↑
対策を始めるとランキングに乗るため、全国から来そうな人の存在に気づきやすくなるので一石二鳥でした。
2-2,筐体の選定
あまり知られていないのですがjubeatは基盤やモニターなど、過去数回に渡って筐体の仕様が変更になっています。そのため、同じ曲でも筐体ごとに若干判定が異なるのです。
もちろん通常プレイしている分には気にならない程度の違いなのですが、2倍PERFECTの出にくいHARD MODEなので筐体の影響がモロに出ます。
なので本番と同じ仕様の筐体で対策する必要があるのですが、今回の闘神祭はゲーセンでの開催となるため、予めどの筐体がゲーセンにあるかの割り出しを行いました。
ただし東京でプレイしている自分がわざわざ仙台に行って確認するのは少々面倒です。
そこである方法を使うのですが、それは
「現地でプレイしている人のリザルト画像を見る」
となります。
例えば以下のようなリザルトがあるとします。(あくまで例として自分の画像になります)
以下のポイントに注目してみましょう。
ここで
・曲名のバーが上にくっついている
・画面下部のCREDITの文字がクッキリしている
事から筐体の種類が判別できるため、付近で同じ条件の筐体を探してそこで対策すればバッチリです!
後は根性論にはなりますが、残り3週間の空いてる時間全てを対策に充てるだけです。
2-3,実際に対策をする
基本的なスタイルは先程も書いたようにベストスコアを上げつつ、安定感を上げる事を目指します。
また1日に対策する曲は3曲に絞り、安定した曲はプレイ頻度を落として不安定な曲を中心に対策しました。(闇雲に対策しても得意不得意が見つかりにくいので逆効果です)
HARD MODEのベストスコアの上げ方は話すと長くなるため、おおきくんという東北のランカーの記事を見てください!(めっちゃ分かりやすいです)
記事リンク:10制覇から2年経って成長したこととハードモード研究法
また少々セコいのですが、今回は他の人に対策される事を防ぐためCN(カードネーム)を変えたり対策している事を一切口外しませんでした。
【3章】直前の仕上げ、メンタル編
この調子で3週間対策し、いよいよ大会直前になります。
対策の効果もあり、結果的には課題曲の7割程は当時のランキングの3位以内に入る事が出来ていました。
ただ、自分は当日に初めて現地でプレイする事が不安だったので、現地に1日早く入って前日を対策に充てました。
3-1,前日の準備
一番大事なのが大会の空気に飲まれずに現地で普段通りの実力を出す事です。
筐体自体は対策した時と同じのため、後は本番で緊張しないよう場馴れします。
本来自分はみんなでワイワイしながらプレイするのが好きだったので、3週間も1人で淡々と対策したのはだいぶ辛かったです…仙台雪降ってたし……
しかし、昼過ぎから体調を崩してしまい宿でお休みしていたので多くは対策できませんでした。
3-2,当日の準備
体調も良くなったので当日は対策よりはメンタル、コンディションを整える事を最優先しました。
予想はしていたのですが、それでもDさんの実力は流石で3週間対策した自分のスコアをものの1、2時間で越していきました。バケモンか…?
とにかく動揺しないように、別機種でウォーミングアップしたり不安な曲の対策をしました。
3-3,いざ本番!
実際に2/9の仙台名掛丁の予選に来たのは事前に予想していたメンバー+上位陣の方1人だったため、ほぼ予想通りのメンツとなりました。
ただ、やはり一発勝負の本番は恐ろしく緊張しました。
特に自分の場合、当時誰よりも対策していたので「絶対負けられない」というプレッシャーもあり、普段の7割ほどの力しか出せませんでした。
ですが、奇跡的にたまたま決勝で選ばれた3曲のうち2曲が自身が全国1位のスコアを保持している曲だったので運良く優勝する事ができました。
ちなみに実際選ばれた曲は
・sola[EXT]
・The Wind of Gold[EXT]
・晴天 Bon Voyage[EXT]
でした。2曲目以外はHARD MODEだとかなり難しい曲になります。
これが当日の結果なのですが、よく見ると3曲目以外だと殆ど差がついていないのでDさんの実力がいかに凄まじいかが分かると思います。
当日対策で出るスコアじゃないよ…??
ここに関しては当初の
「全力で3週間対策して、やっと当日対策のみのDさんと互角かそれ以下」
の予想が当たっていたので本当に危なかったです。
ただ予選優勝が決まった時は本当に嬉しかったです。努力が報われた時ほど嬉しい瞬間はありませんね…!
また今回はある意味奇襲の様な形になってしまいましたし、大会としてもKACよりはやや小規模でした。それでも1人の力でトッププレイヤーに勝てた事は自分にとってかなりの自信になりました。
コロナのため途中で中止になりましたが、実際にこの後の予選は対策をしたトッププレイヤー同士の激戦も多く見られたので、もしこの予選で優勝出来ていなかったら正直厳しかったと思います。
【エピローグ】おわりに
少々長くなってしまいましたが、これが一連の流れになります。
とにかく今回ですごく実感したのが
「全体をよく見て、参入者が少ない所にいち早く飛び込んでみる」
大切さです。
後半の予選がトッププレイヤー同士の激戦になっていた様に、既に参入者が多いとどうしても素の実力での殴り合いになってしまいます。
誰もやってない状態と強い人が多く参入している状態では、対策の強度が大きく変わってしまうのは火を見るより明らかです。
そのためゲームに限らず自分を含めて全体を1歩上から見ながら動いてみると、正面からぶつかるよりも少ない手間で同じかそれ以上の成果を出す事が出来るのかもしれないという事を感じました。
これらの考え方は細谷功さんという方の「メタ思考トレーニング」や「具体と抽象」という本に書いてあるので、気になった方はぜひ読んでみてください。
読みやすく中身も面白い良書なのでよくオススメしてます。
では長々とお付き合い頂きありがとうございました。
よい音ゲーライフを!!
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