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そのままでは履けない靴、HOG TOE SHOES

 こんにちわ、私です。前回の記事で紹介したHOG TOE SHOESですが、実は届いてからすぐに履き始められる訳ではありませんでした。
今回は靴が到着してから履き始める前に準備した事をレビューも含めて少し書いてみたいと思います。


納品期間

 受注会があったのが2021年11月中旬。予定では2,3ヶ月で納品される筈でしたが、間に年末年始を挟んでいた為か、先方から納品の目処がついたと連絡が来たのは3ヶ月を少し過ぎた2月末頃の事でした。

TOCSの靴は職人さんが一足一足ハンドメイドで作っているものなので、もし今後受注を考えている方がいらっしゃいましたら納期はあくまでも目安だと思って気長に待つことをオススメします。

待っているその時間もあれこれと想像を膨らませて楽しんでしまいましょう!

検品作業

 オーダー制のアイテムを手に入れる際に気がかりなのが、商品の個体差というものだと思います。今回も一人一人仕様が違うセミオーダー方式だったので色々と心配していました。

サイズ感

 前回の記事でお話しした通り、サンプルはUK8サイズまでしかなく、少し小さく感じたので少し賭けのような気持ちでワンサイズアップのUK9を注文しました。結果は狙い通りバッチリで、歩いていて支障が出る事がなく安心しました。
サイズを上げた事で踵や甲の少し部分に余裕があり、インソールで調整する必要がありますが、厚手の靴下を履いたりとコーディネートのバリエーションが広がりそうで正しい選択でした。

革質

 レザーアイテムはそのパーツを切り出す場所によって個体差があるのが当たり前なので、こればっかりは手にしてみるまでわからないです。
私の手元に届いた個体は全体的に綺麗できめ細かく整っていて、パーツや左右の足による差もなくて安心出来ました。
今回注文したのはホースレザーなのでキメ細かく整っていましたが、例えばゴートレザーであればもっとシボ感の差が大きく、逆に楽しめるポイントかもしれません。次に注文する際にはゴートレザーを狙ってみたいと思います!

ハンドメイド感

 レヴューという事で皆さんの参考になるように、実際に手にした人にしか分からないポイントも正直に書いてみたいと思います。

 はじめに目についたのは接着剤のはみ出しでしょうか。ライニングにも小さなシミがあったりしたので、作業をしている中で付いてしまったのかもしれません。ただそれはラバーなどを使って擦ってあげれば簡単に取れるので私としては全く気になりませんでした。

 次に気になったのは踵に下がり留め釘を打った跡がある点でした。これまでにイギリス本店で作られていたTOCSのHOGを見たことがあるのですが、それには無かった点です。ハンドメイド生産の革靴では作業の都合で入ってしまうことが多々あるのですが、この靴の場合は入らないようにする事も出来たと思うので、この仕様変更が気になる方は注意したほうがいいかもしれません。

下がり留め釘の跡

 私が一番気になってしまったのはトゥに入った大きなシワでしょうか。恐らくつま先に芯を入れる際にそれを固定するボンド、もしくは硬化剤の塗り方が荒く、シワが入ったまま吊り込んだせいで固定されてしまったのではないかと思います。

特殊な形をしている靴なので作るのが難しかったのかもしれませんが、職人さんの手癖なのか、左右で同じようなシワなので履きシワが対称にならずに少し気持ち悪い感じがしました。

つま先のシワ

物は試しと、硬くなったボンドを柔らかくする為に一度ヒートガンで温めてみてからシワを矯正を試みましたがあまり効果はなく、今度は思い切って水に漬け込んでみました。それでもあまり柔らかくなりませんでしたが、濡れている内に内側から押し上げる事で少しだけ改善されたような気がします。(良い子は絶対に真似しないで下さい)

ただドレスシューズとは違い、こういう靴は履き込んでクタクタになっている方がカッコいいとも思えるので、あまり細かい事を気にし過ぎずにガンガン履いていく事にしました。

どんなに丁寧に仕上げられた靴でも、問題が起きない事は本当に稀な事だと思います。むしろ自分の生活に合わせて唯一無二の一足に育て上げていけるのが醍醐味だと思うので、これからの変化を楽しみたいと思います!

補強作業

ハーフラバーソール貼り

 一通り検品やプレメンテナンスを終えましたが、この靴はセメント製法のフルレザーソールなので磨耗が怖くてそのままでは履けません。
幸い自宅にビブラムシート#7673のストックがあったのでこれを切り出して貼っていきたいと思います。

まずは軽く近所を散歩し、接地面を確認してラバーを貼る範囲を決めます。

次に革の表面をヤスリで削って接着剤が付きやすいように毛羽立たせていきます。本来であればマスキングテープで示した辺りはラバーの厚み分少し段差をつけて削るのですが、私は靴を元々の状態からなるべく傷めたくないので、敢えて表面に乗せるというニュアンスで貼り付けていきます。

ヘラを使って接着剤を満遍なく塗ります。

シートも大まかに切り出し、こちらも接着面を少し削って毛羽立たせてから接着剤を塗布します。

一度しっかり乾燥させ、ヒートガンで温め直して粘着性を戻してからラバーを貼り付けます。空気が入らないように慎重にハンマーなどで叩いて圧着します。

嫌いな上司の顔を思い浮かべながら叩くと効果的です。

乾いてからはみ出した余分なラバーを切り取っていきます。この際アッパーを傷つけてしまわないように特に慎重に作業します。

コバの部分はリューターを使って綺麗に整えていきます。

「プロクソン ミニルーターセットMM100 No.28525-S」を愛用しています。

こんな感じでハーフラバーを貼ることが出来ました。

ヒールゴム積み上げ

 ハーフラバーソールを貼って意気揚々と出掛けてみたところ、たった一日でヒールがかなり減ってしまいました。ヒールはある程度すり減ってから交換しよう思っていましたが、元々積み革が二枚だけという低めの設定だったので急遽ヒールにもゴムを積み上げる事にしました。
幸い踵用のビブラムリフト板#7673もストックがありましたので、これを使って積み上げていきたいと思います。

あと一回履いたら一層目がなくなりそうです。

まずははすり減ってしまった積み上げ革を閻魔と呼ばれる特大のクイキリを使って剥がします。
真新しいので接着力が強く、根元からソールが剥がれてしまいそうでしたのでヒートガンなどを使って接着を弱めながら慎重に剥がしました。

剥がしてみるとサイズ表記で9と書かれています。

そのままだと接着剤が残ったままなのでラバーを使ってチマチマと除去していきます。意外と手間が掛かりますが仕上がりの綺麗さに影響するので大事な作業です。

ノリが除去出来たら木ヤスリを使って接着剤が付きやすいように毛羽立たせていきます。サイズ表記はすっかり消えてしまいました。

踵用にビブラムリフト板を切り出しますが、これが硬くて本当に大変です。ヒートガンで温めて柔らかくしながらなんとか切り出しました。それだけ頑丈という事でもありますので、踵に貼り付けた際には結構な耐久性を発揮してくれます。
元々の積み上げ革よりも厚みがありますが、前方にハーフラバーシートを貼っているのでその厚み分の高さを補って丁度良くなる計算です。

写真を撮るのを忘れてしまいましたが、ハーフラバーを貼った時と同様の手順で接着し、しっかり乾燥してからリューターを使ってコバを綺麗に整えていきます。
厚みと硬さがあるので大変でしたが、綺麗な仕上がりを目指して頑張りました。

とりあえずいい感じに整えられたかなと思います!

最後はコバ面に塗料を塗って完成です。外側からみると黒く、靴裏はベージュで元々のソール配色を綺麗に踏襲出来たかと思います。

ハーフラバーを張った状態で一度履いてしまっているので汚れていますが、中々いい感じに仕上げられたんじゃないかなと思います。これですり減りを気にせずガシガシ履いていけそうです。

インソール作成

 ちなみにサイズ調整用にインソールも自作しました。既製品ですとつま先部分に隙間が出来てしまうので、自宅にストックのあったヌメ革を切り出していい感じにピッタリサイズで作ることが出来ました。

履いてしまった後なので汗シミがお見苦しくてすみません。

最後に

 今回の作業はあくまでも素人作業ですので、そのまま真似る事はあまり推奨しません。ただ私のように靴へ独特なこだわりがあり、手先が器用な人にはそれなりにメリットも多いので、自分でやってみたい!という方の参考になれば幸いです。

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