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人文科学と人工知能、社会科学と人工知能

三宅陽一郎先生/大山匠先生の「人工知能のための哲学塾 未来社会篇」について考えたことをまとめようと思っている。こちらの本は「人工知能のための哲学塾」の第三弾になっていて、過去には西洋哲学、東洋哲学が扱われていた。


本の構成

全体で2部構成になっていて、前半の三宅先生のパートと、大山先生のパートの別れている。
前半は前作で提示された西洋哲学・東洋哲学によって改良された新しい人工知能モデルを使って、社会科学の次のテーマ性を「理解」、「社会」、「文化」、「愛」、「幸福」の5つのテーマについて論じられている。
後半では逆に先ほどのテーマ性の社会科学で論じられた一般論を踏まえつつその一般論や文脈にそって考えた時の人工知能のあり方が書かれている。

新しい人工知能モデルを使った社会科学への応用

前半は哲学篇を経て、哲学的視点を盛り込んだ新しい人工知能モデルは擬似的な人間として、他者と出会った場合、5つの社会科学的なテーマはどう処理されるかが書かれている。
人間が子供の時に社会と自分との接点から、他者と自分との境界線を理解し、自分を形成し大人にたどり、発達的形成がされる。それと同様のプロセスを人工知能にも適応することによって、先ほどの新しい人工知能モデルをアップデートしようとしている。
もともとのモデルは哲学という人文科学由来の自己を追求したモデルになっているが、今回の社会科学によるスタディを通し、他者が現れることによるモデルのアップデートが行われていた。

人工知能という神の視点

人工知能という視点は人文科学に新しい視点をもたらしたと思います。特に前作では哲学という学問と人工知能の関連性について述べられています。哲学は人間の思考に関する学問です。人間とは似て非なる人工知能という視点は、哲学を考える上で客観性を帯び、今まで研究されてきた視点とはまた別の視点を帯びるように感じます。

本の後半では、社会科学(もしくは人文科学)のいくつかの一般論がまとめられている。どの学問も人間にとっての「他者」との関係を研究するものであり、そういった点で「人工知能」というわかりやすい他者の視点を入れることで各学問がアップデートする印象を受けた。
「理解」に関しては、心理学の中の「心の理論の理論説」と「シミュレーション説」
「社会」に関しては、社会学の中の「方法論的個人主義」と「方法論的全体主義」
「文化」に関しては、文化人類学の中の「進化主義」と「伝播主義」
「愛」に関しては、心理学の中の「連合モデル」
「幸福」に関しては、「功利主義」
という歴史的背景を抑えつつ、人工知能にとってのそれらとは何かを問いています。

どのテーマにおいても、様々な説があるものの人工知能に適応可能な「モデル」が提示されているが、各分野によってそもそもモデルが受け入れられるかどうかが違うので、一概に人工知能がそれらの概念を獲得できるとは言えないようである。

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