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不運と幸運のモン・サン=ミシェル旅

モン・サン=ミシェルへの1泊2日の旅は、極寒の中を延々と歩き続けた壮絶な1日目となりました。

そして迎えた2日目。この日のうちに、僕らはパリへ戻りたかったため、事前にレンヌからパリまでの特急列車を予約していました。

だから電車が発車する17:50までに、モン・サン=ミシェルを楽しんだ上でレンヌに戻る必要がありました。

昨日も伝えたように、冬のモン・サン=ミシェルは観光客が少ないためバスの本数がとても少なく、アクセスが非常に大変でした。

モン・サン=ミシェルから3.5km離れた街・ボーヴォワールのホテル前のバス停からは、レンヌ行きのバスが1日2本しか出ていませんでした。

しかもそのうちの1本目、11:20発のバスに乗らないとレンヌ発の電車に間に合わないようでした。

タクシーも見つからないこの土地で、崖っぷちの観光を始めることにします。

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まだ夜が明ける前の2日目の朝7:00、3万歩以上歩いた前日の疲労が抜けきれない中、僕らは再びモン・サン=ミシェルを目指してホテルを出発しました。

この時間には当然バスはありません。仕方なく、1時間の道のりを歩いて向かうことにしました。

前日と変わらぬ闇夜の景色。それでも遠くから徐々に明るくなっていく空を眺め、自然の摂理を感じます。

空は厚い雲に覆われ、日が出たかどうかはわかりません。そんな薄暗い道をひたすら進んでいきました。

3度目の道は慣れたものでしたが、疲労が軽やかな気持ちを蝕んでいきます。既に僕の足にはマメができていました。

それでも無心で進んでいきます。

徐々に明るくなっていく周囲の景色と徐々に大きくなっていく正面のモン・サン=ミシェル。前日の夜とは違った喜びを僕は感じていました。

高まる気持ちを感じる1時間の道のりを終え、西洋の脅威、モン・サン=ミシェルへ2度目の上陸を果たしました。

前日の夜とは違って、周囲は既に明るくなっていました。

修道院へ向かう小路にはカフェやレストランが立ち並んでおり、僕らはそのうちのひとつに入りました。

今朝も気温は3度ほど。凍てついた身体をカフェの暖炉で溶かしていきます。

コーヒーを飲んで温まっていくと、急に眠さが湧き上がってきました。しかし時間もあまりないため、休憩もそこそこに出発し、修道院を目指していきます。

大天使ミカエル像を頂点に置く修道院は、モン・サン=ミシェルのシンボルです。

今日は12月の第一日曜日。フランスにある他の多くの施設と同様、今日は通常12ユーロの入場料が無料になりました。

ここまで頑張ってきた僕らへのご褒美のような気分でした。

修道院の中は13世紀に建てられたゴシック建築の重厚なつくりで、まるで映画の中のような世界観でした。

修道院の聖堂

外の景色からはサン・マロ湾の広大な景色と果てしなく続く大地が臨め、改めて僕がすごい場所にいることを実感しました。

本当はじっくり見たかったけれど、もう10時半を過ぎていたので、ここで引き取ることにしました。お土産屋もスルーして島を出ました。

念願のモン・サン=ミシェルはつかの間の訪問になってしまいました。それでも無事に上陸できたことに満足感はとても高いものでした。

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島から出ていた無料シャトルバスに乗りました。2回目でやっと乗れたバスです。

しかし、バスは駐車場までしか行かず、ここからホテルまでは歩いて30分もあります。

チェックアウトは終えたものの、荷物を預けてきたため、ホテルへは戻らねばなりません。シャトルバスを降りて、歩くかどうか悩みました。

そんな時、ちょうど目の前に大きな観光バスを見つけました。行き先は「Rennes」(レンヌ)。これはもしや。。

運転手に聞いてみたところ、そのバスがまさに僕らが乗りたいと思っていたレンヌ行きのバスでした。

話を聞いたところ、ホテル前のバス停には停まらないとのことでした。どうやら、あのバス停は情報のみを載せただけの看板だったとのことでした。

しかし、このバスに乗らなければ17:50のレンヌ発の電車に乗ることができません。

ホテル前に一時停車することを頼みましたが、できない、とのことでした。

僕の友達のうちの一人はフランス語を話せるため、運転手とフランス語で交渉をしました。

結果、他にお客さんがいなかったことや、ホテルですぐに荷物を取れる状態であることから、ホテルの前で数分間停車してくれることになりました。

Merci beaucoup!!(本当にありがとう!)

一縷の望みが叶った瞬間でした。

気がつくと降り出した雨が雪へと変わる極寒のフランスにて、運転手の愛に心が温まりました。

お客さんは僕らだけとなった大型バスは言葉通りホテル前で停車し、僕らは荷物を取りに行けました。

ホテルのレセプションに挨拶をして、荷物を持って戻ってくると、バスは何事もなかったかのように再び動き出しました。

その数分後、極度の疲労から、僕らは全員夢の中へ導かれました。

***

12:30、僕らはレンヌに到着しました。

電車の出発時刻までまだ5時間はあります。しかし、無事にレンヌに戻ってこれたことに僕らは既に喜びに溢れていました。

一日ぶりとなるレンヌの街は既にアットホームさを感じ始め、この街も好きになっていました。

ガレットを食べたり、ちょうどワールドカップのフランス代表の試合もあったことから、みんなでフランスを応援しました。改めてフランスの楽しさを満喫しました。

あっという間に時間は経ち、レンヌから特急列車のOuigoに乗り込み、とっくに日が沈んだ夜20時、無事パリに到着しました。

***

人生初のモン・サン=ミシェルへの道のりは不運と幸運の連続でした。

結果だけ見れば無事だったけれど、極寒の中で歩いた往復2時間の道のりや、ギリギリで乗れたバスなどトラブルもありました。

予期せぬ事態に右往左往するのが旅の醍醐味ではあるし、そこを乗り越えてこそ人生の成長となります。

ツアー旅では経験できない波乱な展開だったけれど、それでもこういった苦難を乗り越えた経験の方が強い思い出になるでしょう。

旅とは何か?
人生の意味とは?

思索にふけるフランスの日々に、この国が築いてきた文化を感じています。


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それでは、また明日お会いしましょう!

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