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真冬の闇夜のモン・サン=ミシェル

フランスの西海岸に位置する世界遺産「モン・サン=ミシェル」は、日本人の間でもとても馴染みの深い観光地です。

ただ、その知名度の高さと比較して、アクセスはとても大変な観光地です。

パリから遠く西の彼方に位置するモン・サン=ミシェルは、夏場であれば多くのバスで向かうことができます。

しかし閑散期である冬季は、コロナ禍の事情もあり、バスの本数はとても限られています。

今回は、過酷を極めた12月のモン・サン=ミシェルへの路について書いてみようと思います。

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モン・サン=ミシェルへの訪問は観光ツアーが主流であるため、パリからバスで行く日帰り旅行として行く人が多くいます。

しかし、僕らは予約をせずにモン・サン=ミシェル付近の町、ボーヴォワールで1泊予約をして向かうことにしました。

まず、早朝、パリからレンヌという街に向かうことにし、バスに乗りました。

5時間を越えるバスでは、フランスの大自然に囲まれながら、優雅な時間を過ごしました。

到着したレンヌという街は、フランス西部に位置する地方都市です。日本で言うと仙台くらいの規模感の都市です。

その都市で、モン・サン=ミシェルまでの行き方を聞いたところ、既に今日の便は終わっているとのことでした。

残る選択肢は電車とバスを使う手段しか残っていなかったため、仕方なく、4時間後の電車のチケットを購入してレンヌの街で待つことにしました。

レンヌはブルターニュ地方の首府であり、フランス料理のガレットが有名な地域です。

僕らは本場のガレットを食べながらしばらくこの街を満喫することにしました。

ガレットはそば粉で作られたクレープ生地のような皮に、薄いチーズなどを挟んで折りたたんだ食べ物です。

ほんのり甘く美味しい本場の味を堪能してから、僕らは市街地を歩きました。

この街には、激しい移動遊園地や旧市街などがありました。クリスマスに向けた盛り上がりもあり、人も多く歩いていて楽しい気分でした。

初めて来る地方都市ながら、居心地の良さを感じて幸せな気分になりました。

そして時間になり、電車に乗り込みます。

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着いたのはポントルソンという街。18時過ぎながらすっかり日も暮れており、辺りは真っ暗でした。

ここは周りには何も無いような静かなローカル駅。ここからモン・サンミシェルまでのバスについての情報はありません。

試しに同じ電車に乗っていた老夫婦に聞いたところ、目の前に止まっていたバスがモン・サン=ミシェルまで行くとの事でした。

運転手に交渉し、ホテルの前で停めてもらうことになりました。

バスは真っ暗な道を進みました。この先に有名な観光地があるなんて思えないような人気のなさでした。

ホテルの前で降りました。何も無いところにポツンとあるような場所でした。

夜ご飯はどうしよう、買い物はできるだろうか、夜のモン・サン=ミシェルを見に行きたい。

結局夜ご飯はホテル内で食べることにし、買い物は近くにあるらしいスーパーに行くことにしました。

手段は徒歩のみ。真っ暗な道をただただ歩いていきました。

20分歩いた先にあったのは既に閉まっていたスーパーでした。無念の思いを感じつつ、来た道を戻りました。

そしてそのまま、真夜中のモン・サン=ミシェルに向かいます。その距離3.5km。

歩いたら1時間近くかかる距離でした。

気温3度の中、僕らは無心で歩いていきました。

心配してくれる車はいないし、そもそも人も車もいない。吹き付ける風でどんどん体温は下がっていく中をただただ歩いていきました。

今何をしているんだろう、そんな気分に包まれてただひとつの目標を目指しました。

そのうち、正面に大きくそびえる城を見つけた。モン・サン=ミシェルだ。

闇夜を煌々と照らす大聖堂にその偉大さを感じました。

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時刻は夜10:30、僕らはモン・サン=ミシェルの前にたどり着きました。

行きたいと思っていたあの島に僕らは立っていました。

人は一人もいない。車も一台もいない。

明かりの量も減った頭上の大聖堂は、闇夜に妖しい存在感を漂わせていました。もちろんひとつの店舗も開いていない。

島に上陸できた喜びもつかの間、寒さに耐えかねたこともあり、数分の滞在の末に、引き戻すことにしました。

結局ホテルに戻った頃には日を跨いでいました。

憧れたモン・サン=ミシェルへは過酷な旅となりました。

しかし、この過酷さはフランス旅行の強い印象となるし、不運さえも楽しく過ごせたひとつの思い出です。

3万歩を歩いた一日は、極限までの疲労状態となりました。しかし、闇夜に浮かぶ世界遺産にため息の出る幻想的な体験もできました

一生に一度の体験。

モン・サン=ミシェルの1日目は寒さと疲労を乗り越えた、素晴らしい体験でした。


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それでは、また明日お会いしましょう!

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