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ゲイの自分が、美容室はすべての人の”らしさ”を叶える場所であって欲しいと思う理由

「彼女いるの?」
「女の子にモテるスタイルにするからね〜」
 
また、だ。美容室での何気ない会話。緊張する瞬間。

こんな言葉を投げかけられたとき、鏡の中にいる私が”自然に”受け応えできているか、笑えているか、いつも確認をしてしまう。

自分がゲイだとはっきり気づいたのは中学生の頃。男子校に通う自分が「あいつおかまらしいよ(笑)」とクラスメイト達から後ろ指をさされるのは、時間の問題でした。

いじりという名の、いじめの中、当時の自分が選んだのは”学校に行かない”という選択肢。けれど、学校の外にいても、”同性愛者である”という、なんてことないはずの事実は、13歳の自分を追い込み続けていきました。

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前髪でいつも顔を隠していた学生時代。

例えば、冒頭の会話。

「彼女いるの?」
「女の子にモテるスタイルにするからね〜」

学校に行かなくても髪は伸びるし、天然パーマでおでこが広いことにコンプレックスを感じていた当時の私にとって、美容室は少しでもなりたい自分に近付くための空間である一方、”偽りの自分”でいなくてはならない場所でもありました。

美容室は何のための場所か

勿論、異性にモテたいから美容室にくる、という人もいると思いますし、恋愛トークに花を咲かせたい人もいると思います。ただ、自分が美容室に行くのは、同性からモテたいからでも、男らしくなりたいからでもなく、”自分らしくありたいから”でした。

中学生の頃には、自分のなりたい髪型を伝えたら「それだと、男らしくないし女子にはモテないよ〜」と言われ、美容師さんに悪気はないと思いつつも「ああ、やっぱり自分が同性を好きになるってことは想像しづらいよなあ」と半ば諦めながら「やっぱりそうですよね〜」と引きつった笑顔を作り、美容師さんに勧められるがままに短めに髪を切られ、悔しい思いをしたこともあります。

こうした経験を積み重ねて行くと、次第に美容師さんとの会話は億劫になっていくものです。極力、美容師さんとコミュニケーションをしないことを心がければ、プライベートの話に踏み込まれることも少なくなるし、気まずい思いをするアドバイスをもらうことも減るからです。

ゲイであることをオープンにしてからも言えない

今、私は、ゲイであることをオープンにし、LGBTQ+の就活/転職支援を行う会社 株式会社JobRainbow を経営しています。そんな現在でも、もう数年通う美容室の方にゲイであることは伝えていません。

「別に髪を切る場所でわざわざ伝える必要ないでしょ」「堂々とすればいいじゃないか」

そんな声も聞こえてきますが、恋愛トークをふられた時、仕事について聞かれた時、自身のセクシュアリティを伝えないと答えに詰まってしまう場面が多々あります。普段の様子から否定されることは絶対ないと思っていても、過去のトラウマからどうしても、伝えることができない自分もいます。

スタイリング技術に納得しているからこそ、ゲイであることを伝えて気まずくなってしまったら、嫌がられてしまったら、もう通えなくなってしまうかもしれない、、、そういう恐怖が頭を遮り、知らず知らずのうちに壁を作ってしまうのです。

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昔は嫌だった天然パーマも今は愛せるようになった。

ヘアスタイルに悩むLGBTQ+は多い

そして仕事柄、LGBTQ+の就活生や社会人と話していても、ヘアスタイルの悩みは深刻だと感じます。

例えば生まれた時の性は女性、性自認は男性のトランスジェンダーの学生が、自分らしく就活をしたいから、と美容室で男性がモデルの短髪ヘアーを提示したのに対し、なぜかショートボブのカットにされてしまった。逆にXジェンダーの社会人は柔らかなセミロングが自分らしいと感じるのに、初めて行った美容室で「社会人の男性は清潔感あるショートカットが良いよ」とイメージとは反対のカットにされてしまった。

社会人だから、就活生だから、”こうあるべきだ”という先入観が強化され、自身のイメージと違ったヘアスタイルにされてしまったり、勇気が出ず自分のなりたい姿になれなかったりと、辛い思いをするLGBTQ+も少なくはありません。

こうしたことに問題意識を持つようになった時、ちょうど出会ったのがこのCMでした。

トランスジェンダーの元就活生二人が、自身の就活ヒストリーをインタビュー形式で伝える。シンプルな構成ながら、LGBTQ+が抱える就活の現状をそのまま表している。まだまだ賛否両論の多いテーマにも関わらず、そんなCMをパンテーンというブランドがリスクを負ってまで世の中に発信していることに、感心したのを覚えています。

「もっと本質的な課題解決のため私たちにできることはないか」

このCMがリリースされる際に、パンテーンの担当者の方からきた一通の連絡。

「この#PrideHairプロジェクトを通して、沢山のLGBTQ+の方々から賛同や共感の声を頂いた一方、ジェンダーに対する偏見や思い込みが、まだ社会に多く存在することが分かりました。もっと本質的な課題解決のため私たちにできることはないのでしょうか」

このディスカッションからはじまったのが、ひとりひとりの個性によりそうヘアサロンを日本全国へと広めていく『#PrideHair サロン』プロジェクトです。

そして、プロジェクト発足からSNSやワークショップなどを通じて、多くの美容師、LGBTQ+の方々との議論を重ね制作したのが、昨日リリースをした「ヘアサロン向けLGBTQ+フレンドリーマニュアル」です。

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『#PrideHair サロン』マニュアルのダウンロードはこちらから

『ヘアサロン向けLGBTQ+フレンドリーマニュアル』はLGBTQ+だけでなく”全ての人”のあなたらしさを応援する

今回リリースした『ヘアサロン向けLGBTQ+フレンドリーマニュアル』では、主に

1.  美容室業界におけるLGBTQ+の課題
2.  お店の設備・システムについて
3.  接客コミュニケーションで気をつけたいポイント
4.  スタッフ教育に必要なこと

の4点をLGBTQ+の当事者や実際に働く美容師の方のストーリーをまじえながら収録することで、LGBTQ+フレンドリーな美容室になるためすぐに取り組めることをまとめました。

例えば、カルテの性別欄が「男/女」だけに分かれていないか。お客様に雑誌を出す時、女性誌/男性誌を決めてつけていないか。カミングアウトを受けた時に何を考えるべきなのか。などをイラストや表つきでわかりやすく説明しています。

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このマニュアルは、美容室でLGBTQ+の持つ課題解決に向けて作られた一冊ではありますが、そもそもLGBTQ+であるかに関係なく、「男性受け/女性受け」などモテることを基準とした発言に違和感を感じたり、既存の「女らしさ、男らしさ」に当てはまらない「自分らしさ」を追い求める人は増えています。

勿論、「モテ」や「女らしさ、男らしさ」を追い求めて美容室にくる方を否定したいわけではありません。ただ、美容室に訪れる目的は人それぞれだからこそ、その多様性を受け止められる美容室が一つでも増えることは、LGBTQ+だけでない”全ての人”のあなたらしさを応援することに繋がると思うのです。

制作をする中で、ご意見をお伺いした美容師さん達からも「ヘアサロンは本来お客様がワクワクする場所であるべき」「LGBTQ+フレンドリーなヘアサロンを増やしていきたい」という前向きな声を多数いただきました。マニュアルではこうしたポジティブな声も届けていきたいと、LGBTQ+当事者がヘアサロンでぶつかる課題だけではなく、ヘアサロンでの嬉しかった体験や、エピソードも美容師さんの声と一緒に紹介しています。

こうした、業界をさらにより良くしていきたいと願う美容師さん達と手を取り合うことで、LGBTQ+フレンドリーな美容室が、ヒューマンフレンドリーな美容室につながる第一歩になると私たちは信じています。

このマニュアルは必ずしも、貴方にとっての正解にはなり得ないかもしれないけれど

きっとこのマニュアルを読んで、違和感を感じたり、正しくないと感じる方はLGBTQ+にもそうでない方の中にもいると思います。

このマニュアルはワークショップなどを通じ、現役美容師やLGBTQ+の方々をはじめとした多様なメンバーと一緒に議論しながら制作しました。しかし、だからといってここに書いてあることが唯一無二の正解、というわけではないはず。 人々の持つ価値観や考え方は、時代とともに変わるからこそ、皆さんと一緒に、頂いたご意見やご感想を取り入れながら、これからもマニュアルやプロジェクトのアップデートをし続けていきたいと考えています。

このプロジェクトの輪を広げるため、ぜひこのnoteをシェアして貰えたら嬉しいです

最後に、この『#PrideHair サロン』プロジェクトにご賛同いただける全国のヘアサロン様を私たちは募集しています。賛同サロンになって頂いた場合は、「ヘアサロン向けLGBTQ+フレンドリーマニュアル」の送付、およびプレスリリースやサイトにて「賛同サロン」としてサロン名を掲示いたします。

一つでも多くのヘアサロンにこの取り組みが広がり、一人でも多くのLGBTQ+そして全ての人が「あなたらしさ」に出会う機会を作るため、もしその想いに乗ってやっても良いよ!という方がいらしたら、このnoteをシェアして貰えたら大変嬉しいです!(その際は是非 #PrideHair サロン をつけて頂けると、見つけやすいです!)

『#PrideHair サロン』プロジェクトの特設サイトはこちら

<賛同方法>
応募条件:プロジェクトの主旨に賛同いただけること
応募方法:下記①、②いずれかでお願い致します。
こちらの応募フォームよりエントリーいただく。 
② 事務局宛(pridehair@materialpr.jp)宛に、以下情報をお送りいただく。
サロン名、住所、店舗数、担当者名、電話番号、メールアドレス、賛同いただいた理由

※1 先着1000店舗のヘアサロン様には、冊子化したマニュアル及び、LGBTQ+フレンドリーを表明する、オリジナルアイテムを送付いたします。
※2 2店舗以上運営されているヘアサロン様には、必要店舗分をまとめて送付いたします。
※3 送付時期は2月下旬以降を予定しております。

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