友人についての話

昔勤めていた会社の話を思い出していると、私の親友のことを思い出します。
今日は少し昔を思い出してしまいました。

本当はもっと会社のことを書こうと思っていましたが、今回は友人の話を書きます。
彼は私の人生の中で最も重要な登場人物です。

前回まで書いていた企業ですが、入社したのは大学を卒業してから、、、となります。
ベンチャー企業なので、様々な業務があるのですが、私が従事したのは日本で大手のIT企業の仕事になります。
当時は二重派遣などは当たり前でした。私は派遣先に派遣された派遣社員でした。
かつ個人事業主扱いであるため、三重派遣になるかもしれません。

自社の人間が1人もいない中、右も左もわからないIT業界の中働いていたのですが、
なにしろ総支給14万の会社。食べてはいけません。
私は土日もバイトをしていました。

一方で夢がありました。
音楽の夢でした。
私は大学の頃から、その夢を叶えたいため、当時としてはそれなりに努力していたつもりでした。

1年半経過したのち、私の従事していた部署に1人配属がされてきました。
これが今の友人です。

彼は大学卒業後、1年就職せずフリーターとして働き、大手IT企業に就職。
半年の研修を経たのち配属されてきた、同い年でした。

彼は音楽が好きでした。
私の音楽を好きだと言ってくれ、意気投合しお酒を飲むようになりました。

僕は見下していたのかもしれません。
先輩として。
本気で音楽をやっているものと、ただ楽しむだけのやつとは違う。

僕は彼に音楽を教えようということで、一緒に活動することをしました。
彼にとっては趣味の活動です。

私には1つの計画がありました。
俺の辛さを教えてやる。
どんなに辛いものか、教えてやる

夜中に練習の時間を設けたり、難しい曲をやったり、また本気で音楽を目指している
ネットで知り合った方と組んだり。

少し軌道に乗り始めたところ、ようやく活動が本格的になってくるところで、
私は彼をメンバーから外しました。
俺は君とは違う。本気で音楽やってるんだ。
正社員でいい給料もらって、ボーナスもらって活動している、レールに乗ったやつとは違うんだという気持ちでした。

しかし、彼と活動した期間は楽しかったのが本音です。
本当に好きな音楽をやり、夜中にドライブに行ったり、会社でしょうもない曲を書いたり。
彼が抜けたあと、心にポッカリ穴の空いたような感じになってしまった。
気力がなくなってしまいました。

彼をメンバーから外すとき、私は泣きました。
彼も泣きました。

その時、私は羨ましかったんだ気づきました。
安定した生活。お金。会社の同期。彼の人生全てが羨ましかったんだと気づきました。


この後、私は人生最大の危機になります。
また別の機会に書こうと思いますが、
多くの借金、多くの仕事、うまくいかない音楽活動、家庭環境、プライベート。
その全てが積み重なり、パニック障害となりました。

暫く働けない期間が続いたのち、
私は生まれ育った町を抜け、東京で暮らすことにしました。


彼との交流は、一時期ギクシャクしましたが、交流は続けていました。
彼は出張の度に会いに来てくれ、酒を一緒に飲み、夜を明かすことがとても楽しかったです。

出会って4年くらい経った頃、私は酔ったついでに、ずっと言えなかった本音を言いました。

私は、君が羨ましかった。
君と同じような人生を本当は歩みたかった。
音楽も、本当は途中で諦めていた。でも私が誇れるところはそこしかなく、格好をつけていただけだった。

そして、改めてメンバーから外したことを、心から謝罪することができました。

彼が返してくれた言葉。
これは本当に衝撃的で、強く心に残っています。

「何言ってるんだ。僕は君が羨ましかった。僕は君みたいな人生を本当は歩みたかったんだ」

レールに乗った人生を踏み出す勇気もなく、でもやりたいこともなく、やりたいことに一生懸命な私のことを羨ましいと言ってくれました。


人の価値観というものは、本当に客観的に見ないとわからないものです。
私は彼の気持ちを全く理解せず、聞こうともせず、本当に私目線で彼の気持ちを決めつめていました。

友というのは、言葉では一言で言えますが、本音で言い合える仲というのは、人生の中で何人なんだろう。
私が人生をこうやって書いているうちに振り返ってみると、やはり1人しか思い浮かぶことしかできません。

私が好きな作家に「半藤一利」さんという歴史作家の方が書いた言葉です。
「歴史にifはない」

もしあの会社に入らなかったら?
もし音楽をもっと早く辞めていたら?
もし彼を音楽に誘わなければ?
メンバーから外さなかったら?

私はずっと無駄な人生、時間を過ごしてきたんだなと考えることが多くあります。

しかし家族の次に長い付き合いをしてくれている、心から親友と言えるような人に出会えたことを考えると、無駄と思っていた私の暗黒の数年間は、かけがえのない大切な期間だったんだなと思います。

お金や生活、その後の歩みを振り返っていくと、ベストな人生を歩んできてはいない。
情熱的でもないし、活動的でもない。
でも友人関係としては、ベストな人生を歩むことができていたんだなと、
いや、歩ませてくれたんだなと、心から彼に感謝をしています。

今日はそんな、友人について書かせていただきました。

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