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DxO PhotoLab 7

現像ルーティンを確立するのは自分の表現を支えるルーティンで、ただ撮影したデータを見られる様に加工する事から一歩前進するための、大切なスキルになっていく。
 
初めてデジタルカメラを使う人にとって、現像という行為その物がよくわかっていないのは当たり前の事。
スマートフォンやデジタルカメラは、誰でも撮って見る事ができるように、ハード内で現像してjpegやHEIC(iPhone等で撮った写真に使われる)といった形式でアウトプットされる。
そしてそのハード内現像がかなり優秀なため、自己表現に拘らないユーザーにとってはその先へ行こうとする場合、ソフトによるフィルターをかけるなどで表現を楽しむ方向へ行くのだろう。
 
色々なレンズを使いたい・・とか、本格的な撮影を楽しみたい・・という事でデジタル一眼レフカメラを入手した人は、撮影データの保存形式の中にRAWという非圧縮データ保存ができる形式が選べる事に気付く。
そしてそのデータを見られるように加工=現像するために、メーカー純正の現像ソフトがある事も知るワケだ。
 
例として、キヤノンの場合「Digital Photo Professional」という名でカメラに同封されているソフトがある。
各メーカーはそれぞれの機材が持つ特性に合わせて、オリジナルなパラメータを組み込んでいると思われるし、そのソフトでないと使えない機能もあって、それらメーカー純正ソフトを使いこなせば、かなりの作品を仕上げる事が可能だ。

Digital Photo Professional 4

この写真はEOS Rで撮ったもの。レンズはRF28mm F2.8 STM、感度はISO2500 として、f/5.6 1/60sで撮影した。それをキヤノン製ソフト「Digital Photo Professional4」で一次現像(RAW→TIF)し、二次現像(RAW→JPEG)はAdobe製ソフト「PHOTO SHOP v.25.0」でリサイズとプラグインによるフィルタリング(Nik Collection6のColor Efexを使用)、輪郭補正を行った。
良質な画質と、メーカー純正ソフトによる素直な描写とノイズコントロールは素晴らしいと感じるし、大きな加工をしない限りはこれで充分だと思える。
 
ちなみにここで出てきた「二次現像」とはメーカー純正ソフトではできない加工をするためのもので、他社のプラグインを使ったり、ピクセル単位での加工・修正や、レイヤーを使って一部だけに加工を適用したり、アウトプットする際の各種フォーマットへの変換などを行うために実施する。
勿論最初から二次現像に使うソフトで加工をする事もできるのだが、メーカー純正ソフトソフトでしかできないカメラ特性をフルに引き出す加工は、一部を除いてする事ができないので、二回現像を行う事になる。
そのメーカー純正ソフトのみでできる加工としては、キヤノンのを例にとるとレンズの補正やデュアルピクセルを利用した加工等がそれにあたる。
で、私の場合、当初はメーカー純正ソフトとAdobe製ソフトの利用で現像を行っていたが、現在は一次現像をDXO社の「PhotoLab」に変更している。
 
では何故、DXO社製ソフトを使うようになったか、となるのワケだが、それはノイズリデューサーの優秀さに惹かれたと言っても過言ではない。
 
仕事柄、ステージ写真を多く撮る事があって、特に小劇場の芝居の場合は暗い舞台を暗く撮る必要が多く、常にノイズとの戦いに明け暮れていた。
Adobeの「Lightroom Classic」はノイズリデューサーの調整幅があって、自然に見えるノイズ軽減された画像が得られ、同時に1000枚単位の連続加工が可能なため、そんなニーズがある場合はAdobeの「Lightroom Classic」による一次現像一択となっていた。
ただ、ノイズリデューサーの能力で言うならDXOの方が良い、と私自身は感じていたので、数カットをピックアップして納品するようn場合はDXO社製ソフトを使うようになったワケだ。

DxO PhotoLab 5

DXO社は各社のレンズ補正データを使って補正し、現像ソフト「PhotoLab」では収差や周辺減光などを自動補正できる上に、ノイズ低減とシャープネスの補完などが行えた。
そのノイズ軽減の優秀さと調整幅の広さはAdobeよりも使いやすく、同時にシームレスで使えるプラグインとしてFilmPackとViewPointが用意され、過去の有名フィルムのトーンの再現や、カメラメーカー各社のパラメータを利用した現像、またパースの調整などが行えるので、ノイズフリーで独特なトーンを持った画像を作りやすかった。
 
この「PhotoLab 5」はディープラーニング技術を用いたノイズリデューサー「Deep PRIME」実装し、それまでの「PhotoLab 」とは一線を画すソフトとして発表されたが、その性能に比例して加工時間が必要で、短縮のためにはPCの能力アップが必要となる状況があった。
 
「Deep PRIME」が実装された際、RAWデータを加工するだけのソフト「PureRAW」も発表し、「Deep PRIME」で加工したものと同じRAWデータをアウトプットできるため「Lightroom Classic」を一次現像ソフトとして使う事も考えられたが、ピックアップして加工する様な使い方なら「PhotoLab 5」の方が現実的だった。
また「Deep PRIME」を使う事で、上限をISO1600としていた感度は3200や6400を常用しても大丈夫なレベルで改善される事がわかったので、以来6400まで常用感度として設定する様にもなれた。

DxO PhotoLab 6

そしてノイズリデューサー性能をアップしたのが「Deep PRIME XD」で、それを実装したのが「PhotoLab 6」となったのだが、使ってみるとノイズを消し込んだあとのディテールが良いとわかった。 
 
PhotoLabの5と6の違いはアップした写真を大きいサイズで見てもらえばわかると思うが、SNS等で使うなどサイズを小さくすると、まずわからないレベルの差になるだろう。(PhotoLabのノイズリデューサー機能については以前の記事を参照のこと https://note.com/kentauros134/n/nff53f7d3b257 )
 
そして9月27日に発表となった新バージョン「DXO PhotoLab7/Filmpack7」はどう変わるのか?・・という事で早速ダウンロードしてみたが、私の使い方だとあまり変化は感じられない。

DxO PhotoLab 7

・カラーキャリブレーションができるようになった。
・部分調整にカラーホイール調整ができるようになった。(これ大きい!)
・DXOワイド色域の採用。
 
・・と他にも盛りだくさんな機能が乗ったバージョン7だが、カラーホイールによる色調整が部分的にできるのは、ちょっと便利かも知れない。
ただ、今のワークフローではそこまで色に拘っていないのと、拘れないモニター性能の問題、そしてアップするメディアが主にSNSという現状では、4から5になった時の感動(Deep PRIMEの付加等)は少なく、5から6になった時のスピードアップと「Deep PRIME XD」の付加に感じた進歩、ほどには凄さを感じられないでいる。
 
DXOのバージョンアップについては、新しい機能が加わるか加工速度が上がる・・といったわかりやすい進化があるのだが、現在の現像用メインPCがMacBookProのM2MAX版ってのもあると感じている。
何故ならIntel版のMacBookProからシフトした時の激変(特に速度とヒート)には腰を抜かすほど驚いたし、「Deep PRIME XD」の加工時間の短縮加減が半端なくて、6から7に変わった変化を感じにくいのかも知れない。
 
でもDXOユーザーとしては、新しいバージョンが出たら購入はマスト。
新機能が付加された場合はその効果に驚かされるのは、今までの経験上間違いないからだ。
 
一時期、経営が不調になった事もあったDXO社が、こうやって新しいバージョンを発表し続けてくれているのは、ユーザーとしては嬉しい限り。
そして自分の好きなトーンを作れる唯一のソフトは、このまま進化し続けて欲しいと思っているが、以前の様にiPhoneの新機種のカメラの対応もできてくれると、さらに嬉しいと感じている。
 
現像ソフトは、AI技術の導入が多方向へ向かっていて、困惑する。
Photoshopのは生成AIが実装され、写真はどこまでリアルかがわからない時代を迎えつつある。
作家活動をする人にとっては、自分が表現したい物に必要な被写体や構図がより大きい自由度の中で問われていく・・と考えるのなら、「自分らしさ」の表現に拘る人しかオリジナリティを発揮できなくなるのかも知れない。
 
それにしても、AI技術、どこまで行くのだろう・・ね。

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