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ギフトエコノミー制だと商談で出し惜しみしなくなる

4月から導入しているギフトエコノミー制(詳しくはこちらの記事で)ですが、これがもたらす副産物があるとしたらこんなこと、ということを今日はお伝えしたくて書いてみます。

【動画を作って欲しいというご依頼】
とある企業さまからなんと「林さんに動画を作って欲しい」というご依頼をいただきました。
コーチングやチームビルディングではなく、動画ですか!と驚いたわけですが、その意図をお聞きするべくその企業の社長さまのところにいわゆる「商談」に行くことになりました。
その日は社長お一人との商談を想定していたのですが、通された会議室には社長以外に副社長や事業部門長、ご担当者など総勢5名の方がいらして、まずはそこにビックリしました。

【普通の商談ならば】
一般的な、というか私が今まで経験してきた商談の流れから言うと、こういう場合は、私の方から提案書を出して、その内容を説明して、「どうですかお客さま?」となると思います。
今回も例に漏れず、私から動画の制作案をいくつか提示して「どうですか、お客さま?」となったわけですが、どうも雲行きが怪しいことに気づきました。
簡単に書くと、何のためにこの動画を作るのか、ということが5人の中で少しずつずれていて、話せば話すほど違いが浮き彫りになるということが起きているようでした。
クライアントの社内での合意形成が多少甘く、それが外部ベンダーの持ってくる提案を叩いているうちに明るみに出てくることってそんな珍しいことじゃないと思うのですが、その時、私のような状況に置かれた営業マンだとしたら「まずいな、これは出直しだな」と思うわけです。
「社内でまた少し揉んでもらって、決まったらご連絡ください」みたいなが定型句を伝えながら逃げ腰で話を切り上げる方向かもしれませんね。

【コーチの見立て】
でもね、私、普通の営業マンじゃないんですよね。コーチングのプロでもあります。特にチームコーチングのプロ。
何が言いたいかと言うと、こういう状況から集団で合意形成するところまでしっかり導くことができるスキルを持ち合わせているということなんです。
しかし、そこでネックになってくるのが「まだ受注していない状態」でこの状況が発生することなんです。
つまり、本気出せば合意形成までその場で導けるけど、それは対価が発生しないということです。普通の感覚なら出し惜しみしますよね。
昔の私なら、例えばこんなセリフで売り込んでいたに違いありません。「あ〜、まだ合意形成できていないんですね、社内で。だったら、動画の前にチーム・ビルディングしませんか?」なんてね。
すなわち、お金ちょうだい、を先にやるわけです。

【ギバーズゲイン(与えれば与えられる)】
ここでギフトエコノミー制の概念が私の頭の中で発動します。
私が言うには、人間として正しかろう行動は、相手の発展に向けていま私ができる最大のことは何かを考えること。そこに勇気を持って踏み入れることだと思うんです。「自分にとって都合の良くないこと」もさらけ出す透明性だと思うんです。
たまたま、その部屋にはホワイトボードがありましたので、私はスクッと立って、ホワイトボードの前に立ち、5人の方々をお相手にファシリテーションを始めました。
具体的な内容は例によって守秘義務がありますのでお伝えできないのですが、この日はデザインシンキングのカスタマージャーニーマッピングなども活用しながら、本気のファシリテーションをさせていただきました。
結果的に、これまで1時間10万円でお売りしている商品そのものを、対価の合意もないまま奉仕の心で提供することになりました。

【蓄えを一気に失うような不安感】
そういう意味では、全て出し切ってしまうことへの不安感は当然ありました。
反面、お客さまにとっては貴重な時間で、社内でもなかなかできていないであろう価値観や会社の未来に向けての意識合わせ、合意形成のプロセスの再確認、上手く行っていること・行っていないことの顕在化などができたことで、これから先何をするべきか、という道筋がはっきり見えてきたのではないかなと思います。
これは私の頭の中での話ですが、その瞬間は、相手がたくさん得て、私は多くを失った感覚でした。

【勇気を持って踏み入れた人だけが見れる景色がある】
最後に私から「本気で関わらせていただきました」というお話をしましたところ、社長さんが私のギフトエコノミー制のことをご存知で、「これには対価が発生すると思いますので、私たちで金額を決めてお支払いします」とおっしゃってくださいました。
この体験から学んだことは、物事の捉え方っていろいろあるんだな、ということ。
これを商談だと捉え、無償だからできることは限られていると思えば、それなりの結果になります。
反対に、商談ではなく、相手のためにできることを臨機応変に出し惜しみせずに実行するとすれば、商談が「セッション」に変わる。そして、そこに勇気を持って踏み入れた人だけが見れる景色がある。
そして、その行動に対して相手がバリューを感じたとしたら、何らかのお礼が発生するかもしれない。
そんな新しい経済の回り方なんだと思います。
本質的な対話により、物事が進展していくことや、チームが意気投合していくことで組織がより繁栄していく姿を見れるなら、それを喜びとして大盤振る舞いするのもいいもんだな、なんてことを考えながら帰路につきました。

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