あなたがどんなに上手にアドバイスしても、部下が動かない理由
部下がなかなか思う通りに動いてくれない。
どんなアンケートや調査結果を見ても、リーダーの悩みトップ10に必ず入ってくるのが、このお悩みです。
今日は、この悩みを全く別の角度から考えてみたいと思います。
なかなか決定打がない、とお悩みの皆さまは最後までぜひお読みください。
この記事では「スキルアップ」や「新しい技術を習得」するというアプローチではない形で部下が思う通りに動くことについて考えていきます。
スキルアップは当たり前
自分の能力を向上させる。
いわゆるスキルアップのお話ですが、自分のスキルアップを考えないビジネスリーダーはこの世の中にいないのではないでしょうか?
しかし、ここが実はチームメンバーや部下が思う通りに動いてくれない、という悩みのすべての根源になっているというのが、この記事でまずお伝えしたいこと。
少し解説をしていきましょうね。
例えばあなたの仕事が、一人で全て完結する仕事であれば、スキルを上げることや、新しい技術を習得するのは正しいアプローチだと思います。
しかし、あなたがリーダーであれば、誰か他の人の助けを借りながら、チーム単位で成果を出すことが求められているのではないでしょうか。
そういったケースでは、自分のスキルアップだけで成功できるとは限りません。
もうすこし厳しく言えば、チームメンバーにとって、リーダーが必要なスキルを身に着けているのは「必然」であり、足りないスキルは「信頼低下」に繋がります。
つまり、あなた自身のスキルアップはメンバーから評価される項目ではないということです。
伝え方を磨いても、聞く耳を持たない相手では意味をなさない
例えば、あなたがプレゼンテーションスキルを磨くために学校に通って資格を得たとします。
きっとあなたは意気揚々とそのスキルを披露しようと、チームメンバーにプレゼンテーションをする機会を探ることでしょう。
例えば、それが会議の中での発表だったとして、あなたはきっと「今までより遥かに上手にできた!」と感じ、満足するかもしれません。
しかし、メンバーとしてはどうでしょうか?
きっと「できて当たり前」という評価ぐらいしかされないのではないでしょうか。
他にもプレゼンテーションが上手なリーダーは山のようにいます。
そのレッドオーシャンな市場において、あなたの価値が「ちょっとだけ」上がっただけ。それだけの話です。
だとしたら、ブルーオシャンはどこにあるのでしょうか。
「その気にさせる」能力の重要性
その答えは、相手をその気にさせる能力です。
上の話で言えば、プレゼンを上手にするという行動はあなたの自尊心を満たすかもしれませんが、受け手であるメンバーからすれば、「良くて当たり前」という程度のこと。
つまり、相手が自分ごととして捉えるほどのことではなく、言えば「対岸の火事」で、自分には無関係のことなわけです。(とても残念で耳の痛い話ですが・・)
では、メンバーにとって「自分に関係のあること」とはなんでしょうか。
ここに着目することができれば、あなたはリーダーとして成功の道筋に立ったと言えます。
メンバーも「より良い仕事をしたい」と思い、「プロジェクトに貢献したい」と考えて仕事をしていると思うのですが、上役がいるチーム環境の中では時に「指示を待ち、言われたことだけをする」というモードになっていることがあるはずです。
こういったモードになっているメンバーを、「よし、今日は意識高く頑張ってみよう!」と思えるように、何らかの形でスイッチを入れることを促せるのが良いリーダーなんだと思います。
つまり、相手を「その気にさせる」能力が大切なんです。
そして、その中核をなすのが「コミュニケーション」、つまり対話なんです。
人間は「話を聞いてくれる人」を自動的に好きになる
「対話」という言葉を聞くと、きっと皆さんは「伝え方」といった、いわゆるスキル系の話を思い出すのではないでしょうか。
そう、皆さんの頭の中には「スキルを学ぶ」という思考が染み付いています。
対話は相手がいて成り立ちます。
つまり、自分の「伝え方」が完璧だったとしても、相手の機嫌や環境次第では失敗することもあるということ。
そういう意味で「伝える力」を鍛えることは、ほぼ無意味なんです。
日本では特に「有用なアドバイスができる人」が優れているように捉えられがちですが、これからの時代「有用なアドバイスはAIの方が得意で、人間はその能力に劣る」という時代がやってきます。つまり、この価値観ではやっていけないということ。
皆さん自身のことで考えてもらえばわかると思うのですが、「話を遮らずに聞いてくれる人」のことを嫌いになることはないと思うのです。
相手の話をしっかり聞くことにより「相手があなたに好意を持つ」ということが起きます。つまりあなたに対する「好感度が上がる」ということ。
こう書くと「好感度」と仕事に何の関係があるの?と問いたくなると思います。
これは・・・人間としての原理原則として、「好意を持った人のためには、なにか役に立つように貢献したい」と思うという原則が当てはまります。つまり、あなたのために動いてもらえるようになるということです。
このような好意の連鎖でつながる関係性を構築することは、チーム単位でのプロジェクトが上手く回るインフラとして機能します。
感情を聞こう
ここまで書いても、きっと読者の中には「じゃあ、聞き方を教えてよ」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
つまり、多くの人の思考の中で「スキルを習得する」ということへの優先度合いが極めて高い状態が起きているということです。
(ここは日本人の多くが抱える問題だと思ってますが、また別の機会に書きます)
ここは私が譲歩して、How toを1つ教えます。
相手の話を聴く時に必要なのは、事実や方法論に耳を傾けることではなく、その相手がどんな感情で話しているのかということなんです。
ですので、
「いま話してて、どんな事感じてる?」
と問いかけてみてください。
アメリカのサイモン・シネックさんが書いた「Whyから始めよ」という本の中でも、ロジックではなく、感情が人の行動を促す、と伝えていますが、人が何かを相手に伝えるには理由があります。
皆さんに考えてほしいのは、「どんな感情を共有したくて相手が口を開いたのか」ということ。
これが会話の中で共有されなければ、人は好意を抱かないし、なにか一緒にやろうという気持ちに火がつかないのです。
一緒にやれることが何かを話し合おう
相手が目下だったり、自分のほうが知識や経験が豊富な場合は、相手の発言が稚拙に見えたり、自分の貢献は「アドバイスする」ことにある、と考えがちです。
この「アドバイスをする」という行為、本当に有用なのでしょうか?
これは「フィードバック」という言葉でくくられる分野であると認識しているのですが、フィードバックは相手が「必要な時に、必要な情報を」というのが原則です。
つまり、与える側の都合で「ぶっこんで」はいけない、あるいは、ぶっこんでも意味をなさない、聞き入れられない、ということです。
聞き入れられないアドバイスをすることほど、徒労に終わる事はありません。ぜひ、今すぐやめましょう!
その代わりに、ぜひ話題に上げたいことは、
「なにか一緒にやれることはないかなぁ?」
という働きかけです。
言葉遣いは相手と状況によって変化させる必要がありますが、この言葉の意図は「私も一緒に話したい、考えたい、役に立ちたい」ということを相手に伝える、いわゆる「意思表示」です。
こういった意思表示をすることで、相手は「勝手にアドバイスをしてくる敵ではない」ということを理解し、心を開き始めるのです。
2つの頭のほうが、1つよりもよく思考できる
これは、英語で Two heads think better than one という言い回しですが、1人で考えたアイデアは未熟で質の低いものであるということを示唆しています。
⇒そういう前提であれば、頭脳は1つより2つの方が、2倍優れたアイデアになる、という考え方です。
当然そうですよね。
私の意見が正しくて、あなたのは間違っている、みたいな二項対立では、望む結果にたどり着かないかもしれません。ぜひ、あなたの目の前にいる相手との対話を進めることによって、望む結果にたどり着くという概念について、今こそ考えてみてください。
そして、その対話に相手を導く、いわゆる「あなたと会話をしたい」と思わせる「その気にさせる」スキルを磨いてみてください。
きっと部下が思うように動いてくれるチームが形成され始めると思います。そのきっかけを作るのは、他の誰でもなくあなたです。
スキルアップではなく、対話をすること、感情を問うこと、ともに働くことについて話題を向けることを心がけてみてください。
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