「上司が無能だから」と嘆いてばかりいる人は、その上司には引き続き無能であってほしいと願っている
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「上司が無能だから」と嘆いてばかりいる人は、その上司には引き続き無能であってほしいと願っている

土居 健太郎


「私の上司は、マネージャーとしての能力に欠ける人だ」
「あんな人が上司だから、自分はこんなにつらい境遇にあるのだ」

例えばこんなことを日常的に強く思っている人がいるとしよう。

ここでは、酒の場ともなればその上司の文句を言い、自分が強いられてきた苦労を意気揚々と話し、周囲の同調を得たことを確認して溜飲を下げることが日常になっている、そういうレベルをイメージしてほしい。

あなたの周りにも1人2人いるかもしれない。

さて、この人は果たして、この上司がマネージャーとしてレベルを上げ、今の境遇を改善してくれることを望んでいるのだろうか?

ほとんどの場合、答えはNoだ。

むしろ逆で、この上司は引き続き無能であり続け、自分にこのつらい境遇を押し付け続けてほしい、と願っていることが多い(その上司が実際に無能か有能かは関係ない)。

そういう人は、上司と対話したり改善の方法を模索するどころか、その上司の悪いところを日々探し回り、アラを見つけては「ほら見たことか、あいつはこんなに無能なんだ」とあちこち吹聴して回ったりする

これは上司を「部下」や「同僚」に置き換えても同じだし、それ以外でも例えば

・仕事量が常に多く、残業するしかない
・部下の能力が低く、自分がやるしかない
・営業戦略がおかしいから、受注がとれない

のような話に置き換えても同じことだ。

「こんなに仕事があるんだから残業するしかないじゃないか」と言いながら常にタスクをパンパンに抱え込んでいる人を想像すると、真剣に残業をへらそうと努力している人よりも、あれこれ理由をつけて仕事を減らそうとしない、それどころか新しい仕事を勝手に引き受けて仕事を増やしてしまうような態度の人が多いのではないか。

自分の仕事を部下に任せられない、と嘆いている人には、なにかこの人にも任せられるものはないかと探そうとするどころか、部下のダメな点をしきりに探して取り上げては「ほら、こんなミスをするようだからこの人には任せられないんですよ」のような態度の人も多いのではないか。

同じように、「営業戦略がおかしいから受注が取れない」という営業マンは、自分やチームの受注成績が落ちれば落ちるほど内心では喜んでいるのではないだろうか。ほらみろ戦略がおかしいんだ、と言いたくて仕方がないのだ。


こういう人たちは、自分の言い分や正当性を認めさせたいのであって、状況を良くしたり問題を解消したいわけではない

当然ながら、これは仕事においては非生産的極まりない態度であり、決して望まれるものではないのは一目瞭然だ。


それではなぜ(普段は賢明な人たちも含めて)そんな不毛なことをしてしまうのか、「嫌われる勇気」の題材として有名なアドラー心理学でいう「目的論」の視点(※)で考えると割とわかりやすいと思ったので以下つらつら書く。

※ここでは、AだからBできない、という人は、Bができていない状態は本人にとって実は都合がよく、その状態を維持していたいからAという理由を都合よく持ち出してるに過ぎない、という考え方(正しくないかも)


「無能な上司」の例でいえば、上司が無能だという言い分が正しいと認められさえすれば、「全てあの上司が悪い」とすることができ、自分は現状に対して何ら責任を負ったり、自分で状況を良くするために努力する必要すらなくなるわけで、その状況が続くほうが都合が良いのだ。

全ては上司が無能なのが原因なのだから、自分にはどうしようもないでしょう、この状況に耐えて頑張っている自分はむしろもっと尊重されるべきですよね、というような理屈で、これはまぁ想像しやすい感覚だろう。

そこから彼らの最終的な目的はなにかを考えてみると、それは前述したような「わかりやすい原因を作って自分の正しさや自分の価値を認めさせたい」だけではなく、その結果として

「(周囲の人を)自分の思い通りに支配したい

というような目的があるんだろうと想像できる。これまでに挙げたような例で言えば

「あんな上司の言うことよりも、私の言うことに従うべきだ」
「これだけ苦労しているんだから、もっと私を尊重しろ」
「あんな戦略を考える人なんかより、私の意見に耳を傾けろ」

例えばこういうメッセージがそうした(AだからBできない、と嘆いてばかりいるような)態度の裏に隠れている、ということなのではないかなと思う。

つまり、現状の苦難についてひたすら悪者(=わかりやすい原因)を探しては嬉々としてその話をしている人がいたら、それに対して真剣にお付き合いしてしまうこと自体が「その人の思う通りに支配されている」状態であり、それは不毛さに一層拍車をかけるだけで誰のためにもならない。


したがって、そういう人に対しては

「ちなみに、あなたはその状況をどう変えていきたいと思っているの?私になにかできることがあれば協力するよ」

などと伝えてみることをおすすめしたい。

だいたいの場合、そういうモードの人たちは建設的な解決策など求めちゃいないので「そういう話がしたいんじゃないんだよ」と冷めた顔をされて話をはぐらかされるのだろうが、中には冷静になって建設的なモードに切り替えられる場合もあるかもしれない。


特にオチはなく、なにかのヒントになれば。


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土居 健太郎
ナイル株式会社 取締役 人事本部長。現在、総勢200名ほどのベンチャー企業の人事責任者。このnoteでは主に人や組織、マネジメントなど仕事に関わることについて不定期で更新します。