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【民泊に興味を持ったら(3)】物件探しのポイント

こんにちは!
今回は民泊の物件探しの際、私の見ているポイントをお伝えします。
借り上げで民泊を行おうと考えている方はもちろん、すでに保有している物件で民泊を行いたいと考えている方も、民泊に向いている物件かそうでないか判断する参考になるので、是非読んでみてください。

もちろん、物件が法的に民泊として届け出できる物件であることは大前提ですので、もしどのような法律やルールがあるのかわからないという方は、こちらの記事を参考にしてください。

さて、いきなり結論となりますが、私が見ているポイントはこの一言に集約できます。
「初期投資が1年で回収できるかどうか」
これを利回りで表すと、
実質利回り = ([年間売上] - [年間運営費用]) / [初期投資額] * 100% ≧ 100%
となります。
初年度のROI(Return On Investments, 投資収益率)で表すなら、
ROI = ([年間売上] - [年間運営費用] - [初期投資額]) / [初期投資額] * 100% ≧ 0%
です。

つまり、私の物件選びのポイントはその物件の
・年間売上
・年間運営費用
・初期投資額

の3つを導き出すことで、民泊に適した物件か判断することになります。

なぜ初期投資を1年で回収するのか

投資金額を最初の1年で回収と聞くとかなり目標が高いと感じる方もいるかもしれません。
ましてや民泊を運営できるのは1年のうち180日のみで残りは賃貸なので、実質半年回収ということも言うことができます。
それでもこの利回り設定にするのには理由があります。
借り上げによる民泊運営においては、初期投資額よりも、毎月出ていく家賃を始めとした固定費のほうが年間支出で見ると圧倒的に金額が大きく、売上予測が下ぶれた際の収益率に対するインパクトが大きいためです。

なお、これは借り上げの前提の判断基準となりますが、所有する物件を民泊に転用する場合や新たに物件を購入する場合においても、賃貸物件として運用する場合と比較して、追加投資をすることで収益率を向上させるという意味では、追加投資金額がどれくらい実質利回りの上昇に寄与するか、と考えれば同じ判断基準を適用することができます。
(民泊可能物件は一般賃貸より賃料が高く設定されていることがほとんどですので、そういう意味では所有物件のほうが賃貸に出す場合と比較して収益が出やすいのですが、一方で初期費用として消防の適合化工事など借り上げよりも大きく費用がかかるケースもあります。)

例として「民泊に興味を持ったら(1)」で紹介した利回り171%の物件で売上が下ぶれていた場合のインパクトの大きさを見てみましょう。

売上約360万円、経費約300万円、粗利約60万円、初期投資約35万円です。
ROIは(360-300-35)/35=約71%(目標0%以上)です。
仮に売上がこれより1割程度少なかったら、ROIはどうなるでしょう。
売上324万円、経費300万円、粗利24万円、初期投資35万円
ROIは(324-300-35)/35=約-31%となってしまします。
余裕で目標以上だったのが、一気にマイナスになってしまいました
それでもこれは初年度のROIであって、実質利回りは69%ですので、
2年あれば投資回収できます。

ただ、はじめに設定するROIが0%(つまり初年度回収が目標)であった場合売上が予測を1割下回ってしまうだけで、ROIは-103%(売上-36万/初期投資35万≒-1.03)で利回りはマイナスとなり、運営すればするだけ赤字がでる状況になってしまいます。
初めから2年回収を目標にしていた場合はさらにほんの少し売上予測が下ぶれただけで、赤字になってしまうことになります。
いかに初年度回収がギリギリの目標値であるかご理解いただけましたでしょうか。
もちろん、売上が下ぶれた場合のインパクトは初期投資額と売上の比率によって大きく変わりますので、ROI試算時に売上が下ぶれた場合どれくらいのインパクトがあるのかを計算しながら自分にあった初期投資額回収目標期間を設定すると良いでしょう。

ここまでご覧いただいておわかりの通り、物件探しにおいて一番重要なのが正確な売上予測です。
売上予測が不正確になってしまうと、下ぶれる確率が高くなってしまい、費用倒れとなる恐れがあります。
また、経費や初期投資額は、かかる費用をきちんとリストアップして調べれば予想を大きく外れることは無い一方で、
売上は
・物件の所在地
・間取り
・受け入れ人数
・インテリアコーディネート
・写真のクオリティ
・他のゲストからのレビューの高さ
などいくつもの要素が複雑に絡まり合っているため、事前に正確に予測することが最も難しい数値でもあります。
特に民泊をこれまで運営したことが無い方にとって、この予測は一層難しいものとなるでしょう。
そこで私が物件選びの判断基準にしている、年間売上、年間運営費用、初期投資額の3要素のうち、まずは売上予測の立て方からご紹介します。

売上予測の立て方

私のおすすめは、すでに民泊が一定以上普及しているエリア(または自分の所有する物件のあるエリア)で、ほかの民泊物件の
・設定価格
・収容人数
・稼働率
を見ることです。
これらが自分が民泊を検討している物件と近い条件のものを見て、相場感を知ります。

売上 = 設定価格(ADR) × 稼働率(OCC)
で直近のそのお部屋の売上予測が立てられます。

Airbnbであれば、エリアを地図から選択して平均価格などを知ることができます。
またAirbnbは民泊最大手なので、Airbnbのリスティングが十分にあるエリアでは、Airbnbで相場を調べれば十分です。

Airbnbの検索画面(リスティング画像はモザイク処理しています。)
右上のフィルターをクリックした際に表示される画面

この画面では渋谷駅近くのエリアを手動で選択して2名での滞在で検索しています。

注意点は以下の通りです。
・表示価格はホストの設定価格ではない
→表示価格はゲストが支払う金額で、ホストが設定する価格にAirbnbのOTA手数料や、清掃費等が上乗せされた金額です。リスティングを選択すると価格の内訳を見ることができます。
・指定の人数は表示される物件の最大収容人数ではない
→2名で指定した場合、8名まで収容できるような物件も出てくるため、平均単価が引き上げられる)
・平均と最頻値は異なる場合がある
→今回の画像のケースではたまたま平均は223ドル、最頻値も210-225ドルでしたが、ここが異なるケースもあります。今回のケースでも、二番目の最頻値は162-173ドルと大きく下がっているので、自身のリスティングの最大収容人数に応じた最頻値を参考に考える必要があります。
・設定価格でカレンダーが埋まっているとは限らない
→日付指定しない場合、ベースの設定価格が表示されますが、実際は値引き(または値上げ)してゲスト受け入れをしている可能性があります。
日付指定している場合も、反対にたまたま穴が空いている日程だと普段よりも値段を下げて募集している可能性やハイシーズンで普段より値段を上げて募集している可能性もあります。(例えば都内のハイシーズンは年末年始と桜のシーズンで、ローシーズンは2月です。)
また、そもそも掲載はしているものの、ほとんどが空室という部屋もあります。

サイト上に表示される平均価格は鵜呑みにせず、各リスティングの中から部屋の広さ収容人数、そのほか諸条件が自分の計画と近いものをリストアップし、その中で稼働率の高い部屋なるべくたくさん見て参考にすることをおすすめします。

そうしてたくさん部屋を見ていく中で、「あれ?自分の方がオシャレな部屋を作れるぞ」と思ったら大チャンスです。見た目以外の条件が同じなら、より良い見た目のものが選ばれるので、安定した売上が期待できます。もし見た目の訴求で敵いそうにないなと思ったら、その道のプロであるインテリアデザイナーに外注するのも一つの手です。ただ、その分初期費用も高くなってしまうのでその点は注意が必要です。

部屋を見る際の注意点をさらにもう一つ挙げるとすれば、
一般的に収容人数が多いほど単価も上がるのですが、それは部屋の広さも比例して上がっていくからで、部屋のサイズが固定である場合は、収容人数が多くなりすぎれば、人数に対してスペースが狭くなりすぎてしまい、あるいはテーブルやイスなどの快適な滞在に必要な家具が間引かれる(または簡略化される)ことで、選ばれにくい物件になってしまい、価格に反映されなくなる(あるいは空室率が高くなる)ことで一定人数を超えてからは収容人数の増加は必ずしも売上増にはつながらないということです。

これは陥りがちな過ちで、特に民泊施設では、ベッドの他にソファーベッド、敷布団などを用意して、なるべくたくさんのお客様を受け入れられるようにしようとしているであろう施設が散見されます。私自身も、民泊開始当初は快適さに大きな影響がなければ、椅子ではなくソファーベッドとすることなどで、売上を最大化できると考え、積極的にソファーベッドを導入していたのですが、結果は同じエリア、同じ部屋の広さにおいては、収容人数が少なくてもソファーベッドのない部屋のほうが売上が立ったというものでした。
それが複数エリア、複数物件で同じ状況であったため、現在は考えを改めて、売上最大化を目指す場合においても、快適なスペース作りは収容人数以上に重要であるということを意識するようにしています。

Airbnbの検索でお部屋の広さでソートできれば一番わかりやすいのですが、あいにく人数でのソートが中心になるため、このような勘違いを生んでしまっているものと思います。
(ゲスト向けの検索システムなので当然といえば当然ですが。)
そのため、お部屋を見ていく中で、より売上予測を確実にしたいという方は設定人数も前後させて、それぞれの空室率なども加味して、検討しているお部屋の広さにベストな収容人数が当初の計画通りで間違いないかどうかも探ってみることをおすすめします。

また、売上予測の際のリスクは実際の売上が予測より下ぶれることなので、希望的観測ではなく、固めの予測を立てるようにしましょう。

もし検討しているエリアにあまり民泊物件がない場合は、競合となる宿泊施設(ゲストハウスやホテル、旅館)に上記の考え方を当てはめて試算してみてください。

もし宿泊施設自体があまりない場合、似たような条件のエリア(海沿いで最寄駅から車で〇〇分など)で同様の競合調査をしてみてください。

そうして民泊の売上予測が立ったら次はマンスリーでの売上予測です。
これまでも何度もお伝えしている通り、民泊の年間運営上限日数は180日です。
1年の半分は民泊とも、時間貸しとも違う形で運営する必要(あるいは空室とままとする)があり、私はマンスリーでの運営をおすすめしています。

マンスリーでの売り上げ予測は民泊よりも簡単です。
というのも、お部屋の広さ、駅からの距離、築年数など、賃貸物件同様の条件設定で物件検索ができるためです。
国内大手のグッドマンスリーやLIFULL HOME’Sマンスリーなどで、検討している物件の条件を入力し、マンスリーの相場感を知りましょう。

マンスリーでの売上予測の注意点は以下の通りです。
・ポータルサイト上では稼働率がわからない
→民泊と異なり、長期での滞在となるため、カレンダーの表示がありません。
・業者により追加料金の設定が異なる
→掲載する業者ごとに、光熱費、管理費、追加人数による追加料金、リネン類、契約手数料などを家賃に含めるか含めないかなどが異なっているため、検索結果の賃料だけを参考にするのではなく、自身が掲載する場合の条件を決めて、同一条件なら月々いくらとなるか計算しましょう。

こうして求めた民泊の売上予測を半年分、マンスリーの売上予測を半年分で1年間の売上予測を立てます。
この時、民泊の180日規制はその年度内の1年で、4/1-3/31となりますので、もし9月3日以降に民泊を開始する場合は、初年度(次の3/31まで)は180日規制を考えずに民泊を運営できることになるので、半年で初期費用が回収できる可能性もあります。
ただ、大事なのは売上が下ぶれてもしっかり回収することですので、半年ボーナスには期待せずに、通年でしっかり回収できる収支計画を立てましょう。
(私はオリンピック特需に頼って責めた物件拡充した結果、その後のコロナ禍で大失敗してしまいました。)

主な初期投資費用

次に初期費用にかかる主な費用について触れます。
初期費用は主に以下がかかります。
・物件契約費用
・家具家電
・追加工事費
・インテリアデザイナー費
(外注する場合)

物件契約費用は読んで字の如く民泊に使用する物件を借り上げる際にかかる費用です。
一般的な賃貸契約と内訳は大きく変わりません。
初月家賃、敷金、礼金、仲介手数料、鍵交換費用等です。このうち、初月家賃や敷金など運営費用になるものや将来返ってくるものについては初期費用から除外します。(一時的に現金が必要という意味では含めて計算しても構いません。)

この項目で注意してほしいのは、敷金です。
一般的に賃貸物件では退去時の修繕費用などと相殺し、残額を返金してもらえることがほとんどが、民泊物件においては、契約書に償却と記載されているケースが多いです。
この場合、敷金という名目でも、解約時に返ってきませんので、初期費用として計上しましょう。
また、民泊許可物件では家賃同様、この敷金や礼金が一般賃貸よりも高く設定されている傾向があります。

家具家電はそれぞれのこだわりや好みによって値段が大きく変わるので、細かくは触れませんが、インテリアデザインを外注する方は、高見えする物を選定してくれるデザイナーさんを探すと費用対効果が高くなります。

また、注意点として、カーテンやラグは防炎物品仕様のものを使用しなければならないため(不特定多数の出入りする宿泊施設=防火対象物という位置付けになるため)、家具選びの際は覚えておいてください。

もしご自身で一から選びたいという方は、私がワンルームマンションで民泊を始めた際に用意した家具家電一覧を貼っておきますので、参考にしてみてください。(ざっくりこれで26万円ほどです)

家具家電備品一覧

追加工事費についても、その物件の条件によって大きく変わります。
ここでは代表的なものを例として挙げるに留めさせていただきます。
・非常用照明
→初めから民泊用に設計した物件か、前のテナントやオーナーが追加で設置していない限りは、多くのケースで追加で設置が必要になります。
規模や設置台数、業者によって費用は異なりますが、私が以前設置した際は2-3台の設置で10万円前後であることが多かったです。
・自動火災報知機
→こちらは多くのマンションですでに設置のもので代替可能です。
一方戸建てなどは追加で設置が必要になる場合が多いので注意が必要です。
また、費用は特定小規模施設用のもので十分か、一般的な自火報が必要となるかで大きく異なります。これも規模によりますが、特定小規模施設用で数十万円、一般的な自火報で百万円~ほどとなります。
*個別具体的な必要設備については必ず管轄の保健所や消防署と確認してください。管轄区域によって細かな適用ルールが異なる場合があります。

主な運営費用

最後に主な運営費用について触れます。
これもケースバイケースなので、主に運営中にかかる費用をリストアップするに留めさせていただき、具体的な金額等はご自身の選んだ物件やサービスに当てはめて試算をしてみてください。
・家賃
・光熱費
・インターネット料金
・管理委託費用
→相場は売上の20%ほどです。自身で管理業者となる場合は、さらにメッセージ対応スタッフ、駆け付け対応サービスなどに細分化していきます。
・清掃費
→ゲストのチェックアウト後の清掃・ベッドメイクにかかる費用です。
・ゴミ回収費
→民泊のゴミは事業ゴミとなるため、家庭ごみと分けて排出する必要があります。そのため自治体の回収は使えないため、自身で回収業者を手配する必要があります。
・消耗品費
→先述の家具家電備品一覧の画像も参考にしてみてください。
・マンスリー広告費(マンスリー運用もする場合)
→広告費のかからない成果報酬型のものと、毎月掲載料のかかるタイプのものがあります。掲載料のかかるものの方が集客力が強いケースが多いのと、成果報酬型も成約ごとに費用がかかってしまうため、個人的には掲載料のかかるタイプのものを選択することをおすすめします。

運営費用にかかる一番大きい費用はもちろん家賃です。
次に大きい費用が管理業務の委託費用です。
私の場合管理業務は自社で賄っていたため、参考に家賃と管理委託以外の費用をお伝えすると、1件あたり6万円弱かかっていました。

最後に

最後まで読んでいただきありがとうございました!
今回は私が実際に借り上げで民泊を行う場合の、物件探しに見ているポイントをお伝えしました。
少しでも参考になり、皆さんの民泊運営の成功率が上がる一助になれば幸いです。

もし参考になった場合は是非スキやフォローをいただけると、
励みになります!

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