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【民泊に興味をもったら(2)】最低限知っておくべき法律と参入のハードル

こんにちは。
「民泊に興味を持ったら」シリーズの2つ目の記事です。
今回は民泊を検討されている方からよく頂く質問である、
知っておくべき法律や始める際のハードルについて、わかりやすく要点をまとめて記載します。
これから民泊を始めようと考えてらっしゃる方は是非参考にしてみてください。

この記事では主に「家主不在型」の「住宅宿泊事業」を行う前提で記載します。
なんのことかわからない方も安心してください。順を追って説明します。
もし、まさに「家主不在型」の「住宅宿泊事業」について検討している!という方は「民泊の種類」と「住宅宿泊事業の種類」の箇所は読み飛ばしていただいて構いません。
何かはわかるがどれにしようか迷っているという方は復習がてら初めから読んでみてください。

早速本題ですが、民泊に関する法律は「住宅宿泊事業法」という法律によって定められております。
(条文についてはこちらからご確認いただけます。)
もっとカジュアルに要件を知りたい方は、行政の運営する「民泊制度ポータルサイト」がわかりやすくまとまっているので、民泊運営を検討されている方は是非見てみてください。

さて、細かい要件等は上記をご確認いただくとして、ここでは特に民泊運営上重要且つ他の要件よりも先に知ってほしいことを記載します。

民泊の種類(特区民泊と住宅宿泊事業)

大きく分けて特区民泊とそうでない民泊(住宅宿泊事業)に大別され、適用される法律も異なります。
特区民泊は旅館業法の特例に定められており、国家戦略特区のさらにその一部のごく限られたエリアでしか運営が許されていない種類の民泊です。
適用される法律が異なり、そのルールも異なります。
直近の実績から、特区民泊のほとんどは大阪市(全体の約96%)と東京都大田区(全体の約3%)に施設があることがわかります。
特区民泊は通年の運営が可能であるメリットがある反面、最低宿泊日数が2泊以上(住宅宿泊事業は1泊から可)に設定されている他、お部屋の広さも25㎡以上(同1人あたり3.3㎡以上)、申請は住宅宿泊事業が届出制であるのに対し、特区民泊は認定制となっており、住宅宿泊事業と比較して多少ハードルが高く設定されております。(特区民泊認定施設数2022年9月30日時点3,314件に対し、住宅宿泊事業届出数2022年10月12日時点18,206件*届出件数から廃止件数を引いた値)
ただ、ハードルの違いを加味しても通年運営のメリットは非常に大きいので、特区民泊が認められているエリアでの運営が可能な場合は十分検討に値するでしょう。
特区民泊についてはまた別の機会に書かせていただくとして、今回は全国で運営が認められている住宅宿泊事業について記載させていただきます。

出典:地方創生推進事務局「国家戦略特区 特区民泊の実績(令和4年11月14日更新)」


出典:民泊制度ポータルサイト「住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況(令和4年10月12日時点)」

住宅宿泊事業の種類(家主居住型と家主不在型)

住宅宿泊事業(以降民泊)の中でも、家主居住型家主不在型に大別されます。
家主居住型は文字通り、事業者が宿泊者と同じ住宅に住んでいる場合の民泊で、わかりやすく言えばホームステイ型の民泊です。
宿泊者の方と積極的に交流をしたい方向けの業態です。
要件も不在型より緩和されています(居室が5以下で管理業者に管理業務の委託が不要、50㎡以下で安全措置が不要など)。
これだけを聞くと、居住型がいいと思うかもしれませんが、
実は居住型特有の要件がかなりハードルが高いものとなっています。
一見当たり前のように感じるかもしれませんが、居住型では宿泊者の滞在中、事業者が不在となってはいけません。
認められている一時的な不在はなんと1回あたりたった1時間だけ(交通の事情など加味しても2時間まで)です。(参考:民泊制度ポータルサイト「一時的な不在に関する考え方について」
そうなると現実的に家主居住型で運営できるのは自宅でリモートワークできる方やリタイアされた方、主フの方などに限定されてしまいます。
それ以外の方は家主不在型をメインで検討することになり、また民泊を事業としていずれ拡大したいと考えている方も自ずと家主不在型での運用がメインになってきます。
反対に居住型での運用を検討できる状況にある方にとっては、より気軽に始めやすい業態であると言えます。
(なお、不在型として届け出ておいてホームステイ型として運用することも可能です。その場合の要件は当然不在型の要件を満たす必要がありますが、同じ住宅に事業者自身が滞在しながら、かつ1時間を超えて定期的または不定期に不在になる場合も運営が可能となるので、そのようなケースでも不在型として検討するとよいでしょう。)

さて、ここまでは大まかに民泊の種類の説明でしたが、ここからは主に家主不在型の民泊に関して最低限知っておいてほしい法律やハードルについて説明します。家主居住型で検討されるかたも重複する内容が多いので、是非ご参考ください。

民泊の運営日数上限と使用用途

民泊の運営上限日数は年間180日までと定められており、残りの185日は空室となっているか、別の運用方法にて運用する必要があります。
ただし、別の運用方法といってもスペースシェアのような時間貸しと民泊の併用は法律によって禁じられており、現実的には宿泊ではない賃貸とするか、空室とするかの2択です。

参考値として、私がこれまで運用してきた東京都渋谷区や新宿区で部屋を借り上げて、民泊にて転貸した場合の売上をざっくりお伝えします。コロナ前の平常時でだいたい家賃の倍くらいの売上が立ち、年末年始やお花見などのハイシーズンでは更に倍の4倍の売上が立つイメージです。180日をハイシーズンに優先的に割り振ることで、185日が空室であったとしても賃料以上の売上を上げることが可能です。ただ運営費用を考慮すると、やはり残りの185日も賃貸で稼働させないと、ほとんど利益が出ないか、利益が出ても微々たるものになってしまいます。
そのため、利益を最大化させるためにはハイシーズンを中心に民泊を180日運用、のこりの185日を賃貸で貸すというのが私のおすすめです。
ちなみに賃料をX円/月、賃貸で貸したときの売上も同様にX円/月とすると、
民泊平常時2X円/月
ハイシーズン時4X円/月
となり、ハイシーズン中心に180日民泊運用すると、
4ヶ月*2X円/月+2ヶ月*4X円/月=16X円
さらに残りの185日を賃貸で運用すると、
6ヶ月*X円/月=6X円
合わせて22X円
と約賃料の倍弱の売上が立ちます。(あくまでも私の実績値であって、売上を保証するものではありません。)

自治体の上乗せ条例

実は住宅宿泊事業法はそれが全てではなく、各自治体が住宅宿泊事業法に上乗せして条例を制定することが許されており、ほとんどの自治体で上乗せ条例が制定されています
そのため、民泊を行おうと考えている方は、住宅宿泊事業法に加えて、民泊を行おうと考えている自治体の上乗せ条例も確認する必要があります。
上乗せ条例典型的な例が「用途地域ごとの運営制限」で、ざっくりいうと「ホテルを建ててはいけないエリアでは土日や大型連休でしか運営しては行けない」というものです。
そうなるとそもそもの180日運営よりも日数が限られてしまうだけでなく、のこりの185日も賃貸できません(毎週末民泊で貸し出すと、まとまった期間賃貸できないため、宿泊扱いになる。)
家主不在型で事業や副収入として民泊を検討されている方にとって、これは大問題です。
ただ、自治体によって条例の更に特例もあったりするので、民泊を検討されている方はその自治体の保健所にまず問い合わせてみてください。
各自治体の上乗せ条例については「[自治体名] 民泊 条例」などのキーワードで検索して確認してみてください。

マンションの管理規約

マンションでの民泊を検討されている方に注意してほしいのが、管理規約です。
民泊は管理規約に民泊を禁止しない旨の記載があるか、民泊に関する記述がない場合も管理組合に禁止する意思がないことを確認する必要があります。
(マナーの話ではなく、法律で届出時に確認内容を提出することが義務付けられています。)
もし区分所有でお持ちの物件で民泊を検討されている場合はなによりも最初に管理規約の確認と管理組合への確認をしましょう。
借り上げでの運営を検討している場合は、一般賃貸として借りるのではなく、初めから民泊許可物件として掲載されている物件から探すか、自分から開拓するのであれば分譲ではなく一棟オーナーに当たって交渉するのが良いでしょう。
通常民泊許可物件は一般賃貸よりも1~3割増で募集を出してもすぐに埋まってしまうため、一般賃貸よりも多く賃料をお支払いしますよとお伝えすれば検討してもらえるケースもあるでしょう。
反対にオーナーサイドとしては、民泊を自社で運営するほど手間をかけたくないという場合でも、観光需要が比較的見込めるエリアであれば、民泊許可物件として掲載すれば賃料を割増しても借り手がつく可能性が高いです。

管理業務の委託とその費用

家主不在型の民泊や居室が5を超える家主不在型ではその管理業務のすべてを住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません。(ただし事業者が管理業者でもある場合を除く
管理業務は主に、宿泊者の衛生の確保、宿泊者の安全の確保、外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保、宿泊者名簿の備付け等、周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明、苦情等への対応などです。
この「管理業務のすべてを管理業者に委託しなければならない」と言うのは、管理業者がその管理業務の責任者になるということで、管理業者から別業者に一部業務を再委託することは問題ありません。また再委託を受ける業者は管理業者である必要もありません。
管理業者の手数料相場は売上の20%ほどですが、事業者が自ら業務の一部を再委託先として担うことで、その手数料を大幅に削減できる可能性もあります。
(ただし前述の通り管理業者の責任において実施することとなるので、無理な交渉はやめましょう。)
この売上の20%というのが実はインパクトが大きく、前述の民泊+賃貸で22X円の売上が立っていても、管理業務の委託費だけで4.4X円かかることになります。年間賃料が12X円ですから、利益ベースで言えば10X-光熱費、清掃費、他メンテナンス費等を差し引いた手残り一桁X円のうち4.4X円ともなると、利益の半分近くもしくはそれ以上が管理手数料でかかることとなります。
この費用については民泊参入時によく考慮しなければなりません。
また、委託手数料が安ければいいというわけではなく、管理業者の管理の如何によってダイレクトに売上が左右されるので、業者選びは慎重に行うべきです。
一方で管理業務をすべて委託するわけですから、いわば管理手数料を払った後の民泊の利益は不労所得と考えることができます。(2ヶ月ごとの実績の定期報告などの業務は事業者の業務として残ります。)場所選びや物件選び、業者選びさえうまくやれば、借り上げという不動産所有に比べて大幅に少ない金額で高い利回りの不労所得を作ることができると考えれば十分魅力はあります。
また、オーナーサイドも先程の民泊許可物件として賃貸掲載するところから一歩進んで、自らが事業者となることで、管理業務は委託しながらほぼ不労所得的に更に物件の収益率を向上させることが可能です。

自らが管理業者になる場合は?

私がこのパターンですが、業務量が増える(不労所得的ではなくより事業所得的になる)一方で、更に初期投資に対して高利回りが達成できる可能性があります。
なにせ管理手数料が粗利の約半分なので、単純計算で倍の利益が出ることになります。
また、近くに管理業者がいない地域で家主不在型の民泊を行いたいと考えている方も、自らが管理業者となることが選択肢として上がってきます。
ただし、当然管理業者になるためには様々なハードルがあり、苦情対応の体制(24時間いつでも30分以内に住居に駆けつけ可能、かつ対応中も新しい苦情を受け付けられる体制)など外注/再委託で解決できるものもある中、一番のハードルが不動産に関する資格もしくは業務経験になります。
具体的には、住宅の取引又は管理に関する2年以上の事業経歴、もしくは、宅建業免許、マンション管理業登録、賃貸住宅管理業登録のいずれかが必要です。いずれも不動産業界以外からいきなり参入するには大きなハードルとなっています。

でもまだ諦めるのは早いです!
なんと、来年このハードルは大幅に緩和される見込みです!

詳細はまだ公表されておりませんが、2023年4月から不動産業界以外の方が自ら管理業者となることが現実的に可能になる予定です。
自ら管理業者となれば管理業務を委託する場合と比較して大幅な増益が見込めるため、是非検討してみてはいかがでしょう。

最後に

今回は民泊の法律と参入のハードルについて、参入検討時特にインパクトの大きい点に絞って内容をまとめました。いかがでしたでしょうか。
少しでも皆さんの民泊運営や民泊参入の検討の一助になれば幸いです。

これから民泊参入ご検討されている方は、相談も受け付けています。
管理業務の委託や自社運営のコンサルまで幅広く行っていますので、
お気軽にInstagramのDMや会社HPのお問い合わせページよりご連絡ください。

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