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アルバム「Ever Changing」考えていたこと

2023年に日本に帰った時にCD版での発売を始めたアルバム「Ever Changing」。
今回はその内容等の話。

まず作りたかった世界観

目指した世界観

そもそもこのアルバムを作り始める前から頭にあったのは、どこかの森とか、山の頂上とか、そういう場所で聴いてもらえたりしたら気持ちいい音楽…というイメージでした。
それは「変わらない本流」の上に何か変化するモノがのっかってゆるやかに流れていくような「印象」、それは例えば、「川の流れ」や森の木々が風にそよぐ様をボ〜っと眺めていたり、ゆっくり浸っている時の感触の様な…。

この辺のイメージはずっと頭にありました。

アルバムタイトル

それぞれの存在は「変わらない本流」というか…と共にあり、例えば川を眺めていて目をつぶり、再び目を開けたら山になってた…とか、A君と話していて、横を向いて振り返ったらBさんになってた…とか、そういう事はない訳です。

でも、そういうのと共に一瞬々々変化が積み重なっているのも、また事実な訳で…。一瞬でダイナミックに何かが変わる訳ではないけれど、それは緩やかに延々と続いています。

そういう音楽だよな…と思って「Ever Changing」というアルバムタイトルにしました。

前作からの流れ

前作制作後に課題に思った事

まず、2022年にアルバム「Deep Blue and Orange Hours」を作りました。コレは完全にエレアコのコントラバスだけでのアンサンブルで音楽を作るというテーマで、そしてソロパートでは即興的であるにせよ、基本的には全てのパートが事前に書かれ準備されています。コンサートで演奏できるか?とかそういう事は一切度外視して、兎に角アンサンブルとして美しいと思えるモノを追いかけてみました。

自分的には大変満足していますが、困るのはコンサートやなんかの局面です。このアルバムの曲はライブでは無理だな…と。というのも私が6人位いないと出来ない音楽になってしまったので…。(幸いこのアルバムの曲を気に入ってくれた共演者の面々が「あのアルバムのあの曲やろうよ〜」と言ってくれるので完全に別バージョンとして演奏しています…)

違う要素を入れてみたい

前出のエレクトリックのコントラバスのアンサンブルも気に入っているのですが、ベース以外の音を積極的に使っていく方向性というのもアリだな…というのは、前作アルバム制作時点で既にアイデアとしてありました。(実際に同時進行で多少曲も作り始めてました。)
それにプラスして僕はリズムとかグルーブとかはそもそも大好きなんです。聴くのも演奏するのも好き。ただ、自分自身の音楽としては、その手の音楽をそのまんまやりたい訳では無く、自分自身の語法を模索している所です。
という事で、その辺のアイデアを前作アルバム的な要素と掛け合わせて見る事にしました。

既成品の音源は使いませぬ

ベース以外の要素としての音源について思いを巡らせたのだけれど、既成品の音源を使うのはなんというか、自分的に違うな…と。そこで「自分自身が今までコレクションしていた日常生活の音達を加工変調して使う」というアイデアに至りました。そういえば、「こういう事がずっとやりたくて今までコレクションしてたんだったっけ…。」と再確認したのでした。コンピューター音楽を大学過程の複科で選んだのもこういう事がやりたかったからなのでした。

そうすることによって加工前の音源そのものが持っていた空気感(そういうのは加工しても片鱗が残ります)の重なり合いと、エレアココントラバスのアンサンブルの空気感の重なりでまた独特な音の気配が生まれるんじゃないか?という期待もありました。

アンビエント音楽からの影響

前作の話に少しもどりますが、「Deep Blue…」の構想自体はもう何年も前からありました。しかし、曲を書いては止まり…書いては止まり…の繰り返しで全く進みませんでした。

そんな中、「アンビエント音楽」というジャンルの中でも、ギターで演奏されるタイプのやつをなにげなく聴いていて頭の中で何かが繋がりました。音楽的な内容というよりもむしろその構造が以前から頭の片隅で模索し続けていたモノに近いと思ったんです。

なんというかJazzの「テーマ→アドリブ→テーマ」的な構成のあり方、言い換えれば与えられた外殻に中身を埋めていくのに対して、この方法は骨格、つまり「音楽的拠り所となる繰り返されるモチーフ」があり、それに肉付けしていくような…そういう風な違いでしょうか? 

そういう感じで、延々と繰り返されるベーシックなパターンと、そこに変化を与えるフレーズ郡の移り変わりで表情の変化を多様にする、という構造的なアイデアが明確になったのでした。

そういう事が発端で「Deep Blue…」の収録曲はあっという間に書き終わりました。今作の「Ever Changing」も方法論的には一緒です。
今作の曲はとりわけ、それぞれのパートを特徴付けるようなフレーズが最終的には交差し全体的なアンサンブルを新たに織りなす「伏線とその回収」という感じの構造をもっています。

作業プロセスとか

実用面でのアイデア

今作ではライブで演奏する事を想定しつつ作りました。なので、実際に録音プロセスでもかなり即興的な場面が多かったです。
構成や構造がフレキシブルで即興的に組み換え可能な感じで、且つコントラバスのライブルーピングの重なり合いがゆっくりと出来ていく…。そういう感じが先にも書いた音楽的なアイデアとマッチすると思っています。

NovationのCircuit Rhythm(2022年の晩秋に日本に帰った時に購入)で準備しておいたモチーフ郡を扱えば、構成構造のフレキシビリティーは確保できます。
そしてベースのアンサンブルパートの重なり合いという要素を実現する為のライブルーピングするシステムはPureDataを使用して既に作ってあります。(youtubeの動画でも結構出てきます)その2つをmidi経由で連動させてライブでは使用する、という方針が固まりました。

実際の録音作業の進め方としては、ミックスのプロセスでの可能性を考慮してNovationの方で既に作ったモチーフ達を1トラックづつ録音、ベースはベースで多重録音して…といういわゆるフツーのやり方でした。
その後、音量や定位、リバーブなどのミックスのプロセスで出たアイデアをNovationにフィードバックしてライブ用に調整…という感じ。

作曲時のプロセス

今回ほとんどの曲のスケッチはNovationでまず最初に作りましたが、その後に曲を練る時に実は一旦全てを五線譜に直してます。大抵の場合、五線を介したくないのでこういう機材を使うのでしょうけれども、私としてはやはり五線で全体像を見た方がラクだな…と。 「なんだか不思議な機材の使い方だね…」と友人は笑っていましたが、こうやって整理整頓して全体像がみえると、音楽的な挑戦もしやすくなるな…というのが実感です。

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