話題のホーム上シェアオフィス こんな音空間設計をしました。
どうも神山聴景事務所の神山です。
まずは久しぶりの更新、ごめんなさい!
Youtubeでも本件には触れますが、ここでも解説します。
今年の二月・三月に西国分寺・三鷹の両駅に日本初のホーム上シェアオフィスが誕生しました。
西国分寺駅下り
三鷹駅下り
三鷹駅上り
空間は六畳あるかないかくらい狭いです。
その中で音を流す。正直それが必要なのかどうかわかりませんでしたが、電車がひっきりなしに通るこの場所では音による仕掛けで快適な空間を作る必要がありました。
それぞれ異なるインテリアデザインでしたので、個別にオリジナルの音楽を用意しました。
今回のポイントはこれです。
取り組み1 ノイズを屋内にも流す
これだけを聞いてもイメージが沸きにくいと思います。
まず、ノイズというのはここでは駅上で聴こえる電車進入・通過音や人々の歩いている音、それからアナウンスの音を指します。
屋内にいると住環境のような遮音された環境を期待してしまうのですが、この環境で完全な遮音壁を作ることは困難であるため、特に電車やアナウンスの音は常時聴こえる状態になってしまいます。
これは憶測ですが、ホーム上にいると電車やアナウンスの音があるのは当たり前なので多くの人はそこまでそれらの音を気にしないのかなと思っています。
でも仕事をする環境に場面が切り替わった時に同じ環境下であると、それまで共存していた2つの関係は、途端に崩壊し人間はそれらの音を敵対視し仕事の妨げになると考えてしまうのです。
内・外という関係性が出来上がると環境音はマイナスなイメージを持った「ノイズ」へと変貌を遂げるわけです。
であればその関係性を無くせばいい、つまり物理的な壁はあっても聴覚的な壁を無くすことでそのように意識しなくなるんじゃないかと考えました。
結果電車などの音は気にならなくなる。という仮説を立て制作に取り掛かりました。
現地のリサーチをする際に録音した音をサンプリングし、さらにその他の楽器の音と組合せて1つの音楽にしました。
こちらがその音になります。
サンプリングした音は「サー」と鳴っているモノがそれに当たりますが、お分かりでしょうか?
一定の音量でノイズを流すとただのノイズになってしまいます。
それはBGMとして配信されている自然音にも該当する話なのですが、自然音は本来不規則な音の連続とアンバランスな音量がゆらぎとなってリラックス効果を生み出しています。
それが編集され均一な音量で私たちが利用する施設で流れているのですが、私たちが生活している時に出る音、例えばその空間で発生する会話音や食器の音、作業している音はリズム音楽のように規則的ではなく誰も予測できない不規則的な音環境であるのです。そこに快適だと言われている自然音を流すと規則性と不規則性の音同士がぶつかる現象が発生します。
空間で流れている音楽はBGMすなわち「背景音楽」の役目を本来は果たさないといけないのですが、それが騒音の一部に変わってしまったり、マスキングとしての役割さえも果たせないような機能しない音楽になってしまうのです。
この取組みで大事なのは、不規則性同士で調和させることで音楽を「音楽と認識させない」という点にあると思っています。
これは過去の個展でも実験したことはあるのですが、この考えをもとに制作した音楽を流すと、その会場横で行われていた解体作業の音に対する不快感が軽減されていたことが判明したのです。
せっかくの個展ですから、来場者の方々はゆっくりと鑑賞したいという気持ちもあると思うのでその音はかなり鑑賞の邪魔になるはずです。
ですが、それに対するクレームや悲観的なコメントは一切ありませんでした。
今まで音楽は規則的であることが前提でそういった曲が大量生産されてきましたが、音空間を作る際には「不規則」な音楽である必要があるのです。
このような考えはまだまだ認知されていませんが、JR東日本様に認めていただけたのは弊社や音空間のデザインにとって大きな進歩だと考えています。
この機会に利用してみてはいかがでしょうか?
今後も様々な音空間を快適かつ感性を豊かにするデザインをしていきますので、応援よろしくお願いします。
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