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営業職の地位向上を、セールス専用SNS「Bravado」から考える

営業職として働いたことがある人であれば、一度は、「営業」という職種の立場的な弱さを感じたことがあるのではないでしょうか?私は数ヶ月前まで、4年間程、ITセールスとして働いていましたが、度々「営業職」の不甲斐なさを感じる場面がありました。

米国では「営業職」に付きまとうイメージの悪さを払拭しようと試みる、「Bravado」というセールス向けのSNSが存在するようです。実際に登録してみたのですが、共感できる部分が多かったので、この「Bravado」の紹介とともに、「営業職」のイメージと地位向上に対する考えを書いていきたいと思います。


営業職の相対的な立場の弱さ


シリコンバレーの起業家かつエンジニア(そして、元ゴールドマン・サックスのクオンツ)である、アントニオ・ガルシア・マルティネス氏の著書「Chaos Monkeys(サルたちの狂宴)」には以下のような一文があります。

セールス担当は完全に道具で、集団IQはまず二桁と言ってよかった。求められる役割といえば、クライアントを口説いて取引を勧め、トレーディングのコツや市場の統制についてうわべの情報を伝えるだけ。あとはこっそりトレーダーにすり寄り、クライアントのために特別な数字を出すように、頼み込むのだった。

引用:アントニオ・ガルシア・マルティネス著(2018) サルたちの狂宴 上ーーシリコンバレー修行篇

これはゴールドマン・サックス社内における、営業職に対する描写です。(この本自体は、シリコンバレーの実態が手にとるように描かれた、とても面白いノンフィクションなので、是非読んでみてください。)

時折、私も社外で、技術職やクリエイティブ職の方々が「うちの営業がどいつもポンコツでさ〜」というような愚痴を溢している場面に遭遇することがあり、毎度うんざりとさせられます。

確かに、専門性が要求される現場である技術職やクリエイティブ職からからすれば、ドメイン知識をそれほど深くは持たない営業とのコミュニケーションを煩わしく感じる事は多々あると思います。

しかし、一般的に営業職は、商品仕様の把握、契約や納品に関わる自社内や顧客の会社のルールの把握、顧客のビジネスの状況や組織構成の把握など、多岐に渡る幅広いインプットを常に行いながら、各方面との膨大な調整を行う仕事あり、技術者のように専門的知識を業務中に学ぶ時間を確保することは到底困難です。

そのため、どうしても営業職は技術職の時間を借りて、様々なことを教えてもらったり、対処してもらったりする必要があり、いつも「営業職が技術職に何かを依頼をしている」構図が出来上がってしまいます。その構図の中で、平然と営業職を叩くような物言いをする方が少なからず存在している状況です。

その原因の一つは、「営業」という職種に対する相対的なリスペクトの少なさにあると思っています。実際に、新卒の大学生の9割は営業職をやりたくないと感じているようです。


Bravadoについて

そんな、営業職につきまとうイメージの悪さを払拭しようとしているのが「Bravado」です。

Bravadoには主に以下の機能があります。

・営業に関するイシューについて意見を交換する場
・プロフィール公開とDM機能
・メンターとアドバイスを受けたい人のマッチング
・営業をテーマにしたブログ記事
・etc...

いくつか面白いと感じたものをピックアップしてみたいと思います。

1. COMMUNITY を中心とした設計
Bravadoの最大の特徴としては、「COMMUNITY」という機能が中心に据えられている点だと思います。

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COMMUNITYは、「営業マネージャーは現場に出向くべきなのか」や、「顧客宛のメールでemojiを使って良いのか」など営業に関する様々なイシューについて意見交換が行われる場です。Stack Overflowという、プログラマーが技術的なことについて質問や回答を行うサイトがあるのですが、それのセールス版といったところでしょうか。COMMUNITY数はまだ少ないですが、現状、アメリカの各都市毎にCOMMUNITYが作られているのは確認できます。

コミュニティを形成することはその職種のイメージや立場を向上する上において、非常に重要なだと思います。

ITエンジニア界隈では様々なコミュニティが存在し、オンラインだけでなくオフラインでの勉強会やLT大会なども盛んに行われています。このように、同じ職種の各個人が繋がって情報がオープンになるため、適切な人材流動が容易となり、少なからず「エンジニア」という職種の相対的な立場の向上に寄与していると考えられます。

また、コミュニティがあればバズも起こりやすいため、コミュニティ外の社会に対するインパクトを示しやすくなります。つまり、エンジニアの中からタレント的な存在が登場しやすくなり、今までエンジニアリングに興味が無かった学生などを惹きつけることが可能になります。


2. 自分の担当顧客を掲載するプロフィール
BravadoのプロフィールはLinkedinのそれとは大きく異なり、自分の担当顧客が大きく掲載される点が、最大のアピールポイントとなります。

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技術職やクリエイティブ職は、自分の専門的スキルセットを、定量的に一般公開することが容易なため、転職市場においても適切なマッチングが比較的可能となります。一方、営業職の業務内容は状況に応じた臨機応変な調整業がメインの仕事となる以上、それらの職種に比べて、自らのスキルが転職先でどれほどの効果を生むのか定量的に語るのが難しい傾向にあると思います。

その中で、営業職が唯一、確かな資産として持っていくことができるものが「どの顧客との繋がりを持っているか」になると思います。

エンジニアやデザイナーが、Linkedinや転職サイトで詳細スキルセットの公開して、企業との効率的なマッチングを実現しているのであれば、同様に営業職が自分が獲得した取引先を一般に公開できても良いものと私は思います。

顧客との繋がりは他社秘密情報にあたるため、一般に公開するのが難しいケースが多い現状かと思いますが、営業職の立場を向上させるためにもこの流れが進んで行って欲しいと思います。

最後に

ここまで書いてきたとおり、営業の職種としての立場の弱さには様々な原因が考えられますが、情報をできる限りオープンにすることでコミュニティを形成していくことが、解決策の一つであると思います。

Bravadoやそれに匹敵するようなサービスが流行し、営業職が働きやすく、憧れの職種の一つとなることを願っています。

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