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総合型地域スポーツクラブを学ぶ ~『スポーツSDGs概論』編~

 総合型地域スポーツクラブ マネジャーの上杉健太(@kenta_u2)です。長野県喬木村で一般社団法人たかぎスポーツクラブのマネジャーをやっています。2021年1月からは埼玉県富士見市で新たに総合型地域スポーツクラブの立ち上げに挑戦し、総合型地域スポーツクラブのさらなる普及にもう一歩踏み込んでいきます!

 さて当マガジンは『総合型地域スポーツクラブ研究所』という名前で運営しています。そこには、総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている人や、これからしようとしている人にとって少しでも有益な情報をお届けしたいという願いを込めています。私のような若輩者がお届けできる有益な情報と言えば、実践のプロセスや結果だと思うので、そういった内容が主になっていますが、たまには実践以外の学びも共有させていただこうと思っております。
 そこで今日はさっそく、『スポーツSDGs概論』(神谷和義・林恒宏編著/学研研究出版)から学んだことを共有させていただこうと思います。

SDGsとは

 そもそもSDGsを知らないかたもいらっしゃると思います。私が知ったのも、確か2年前くらいだったと思います。ベネッセ時代の先輩と久しぶりにお会いした時に、熱心にSDGsについて語られたのを、「へ~、すごいっすね~」といった具合に冷めたリアクションで受け止めたことを覚えています(笑)
(先輩すみません!)
 SDGsとは、『持続可能な開発目標』のことで、17の目標が定められています。

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 SDGsに対して、「スポーツも関わりが深い」としているのが『スポーツSDGs概論』で、こちらの本はスポーツSDGsの推進を目的としています。今回は、chapter1~18の中から、chapter3『スポーツとSDGs』chapter12『総合型地域スポーツクラブとSDGs』を読んだ学びを共有させていただきます。

スポーツとSDGs

①スポーツはSDGs達成のツール
②スポーツ活動それ自体がSDGsに貢献

 ここでの主張は、大きくはこちらの2点だと思います。特に”ツール”としてのスポーツが17のSDGsに対してどのように貢献できるか、それぞれに対して内容を示されているのですが、17個も提示するともう私ごときはパニックに陥るので、大変恐縮ながら2つにまとめさせていただきました。
 1つ目は、『教育ツール』としてのスポーツ。特に、『1.貧困』『2.栄養・農業』『3.健康』『6.水衛生』『15.生態系の保全』について、スポーツを教育ツールとして活用することで、SDGs達成に貢献できるとしています。
 スポーツの教育的側面といえば、日本では『体育』が挙げられますね。日本では1947年に初等教育から高等教育に導入(『体育』という言葉が使用)されたらしく、これまで日本人の健全な心身の育成に貢献してきました。また、スポーツは自然の中で行うものなので、環境教育のツールとしても機能しますし、スポーツと栄養が切っても切れない関係性であることは言うまでもありませんね。
 事例としては、スポーツメーカーであるミズノは、子ども向けの運動遊びプログラム『ヘキサスロン』をベトナムの初等義務教育に導入する取り組みを行っているそうです。

 これは、『SPORT FOR TOMORROW』という、官民連携のもとに開発途上国を中心とした100カ国・1000万人以上を対象に推進されるスポーツ国際貢献事業に認定されています。

 ツールとして期待される2つ目の機能は、『場』(機会・基盤)です。例えば、『4.学習機会、スキル取得の基盤』『7.省エネの話し合いの場』『8.雇用の機会』『15.生態系の保全を提唱する基盤』『16.平和の文化を推進するコミュニケーション基盤』としての場が挙げられています。スポーツには、人を集めたり巻き込んだりする力があるので、こういった場としての機能を持つことができるということなんですね。そういった点では、プロスポーツチームや運営団体が選手・スタッフ・ファンといった人を巻き込んで、CO2排出削減に取り組んだり、リユース食器の使用を促したりする事例は、スポーツが持つ人を巻き込む力を活用していると言えるのだと思います。

・スポーツSDGsとは、多様なステークホルダーとパートナーシップを形成し協働することにより、創造的な価値を生み出すためのイノベーティブな取り組みである。

 SDGsの達成の鍵は、『パートナーシップ』『イノベーション』だということですね。目先の利益や、単体の利益を追求するのではなく、環境や社会という大きな視点で課題を捉えて、課題を共有できるパートナーをつくり、互いの資源と強みを持ち寄ってイノベーションを起こす。そういう取り組みが持続可能な発展を生み出していく。

総合型地域スポーツクラブとSDGs

・総合型地域スポーツクラブは、1990年代後半より振興が始まったが、現在は「質的充実」「持続可能性」が課題
・総合型地域スポーツクラブとしての持続可能な発展の為には、個人的レベルのスポーツから、クラブレベル、地域生活レベルへと昇華していくことが必要

 ここでは、SDGsの達成に総合型地域スポーツクラブがどう貢献できるかという視点よりも、”総合型地域スポーツクラブのSDGs”について書かれていた印象です。どうやって総合型地域スポーツクラブを持続可能な状態にするか、その為には地域とどういう関係性を築くべきなのか。
 課題として、全国の76.9%の市町村、3445の総合型地域スポーツクラブが設立されているが、数としては乏しいのではないかということや、国民のクラブ加入率が5.8%に留まっていて、これや下降傾向であること、総合型地域スポーツクラブの認知度は60%しかないことなどが挙げられています。
 また、総合型地域スポーツクラブのSDGsを考えるうえで、前提・基礎(環境的持続可能性)として『地域社会』、手法・方法(経済的持続可能性)として『クラブマネジメント』、目的・目標として『クラブライフ』が挙げられています。この3層の構造が関係性を持つことで総合型地域スポーツクラブの持続可能性が高まっていくということであり、最終的には地域住民の幸福に貢献できるということなのかなと思います。
 クラブには、『閉じる』という性質があります。つまり、ある程度気の合う人とか、生活リズムが同じ人とかで囲って楽しむという性質です。この性質が時には、クラブと地域社会とを分離させます。あるいはこの分離は、クラブライフを楽しむ為には必要な分離と考えることもできます。例えば、学校へ行くのは嫌だけどクラブへ行くのは好きという子の場合、クラブは学校と分離している必要があります。スポーツには元々、『気晴らし』という意味があります。これはつまり、現実世界から離れるということです。
 とはいえ、総合型地域スポーツクラブは地域社会の中でしか生きられないわけなので、地域社会の持続可能性を高めることはクラブの持続可能性を高めることに繋がります。これはまさにSDGsの考え方ですよね。クラブマネジメント・クラブライフ・地域社会の発展が有機的に繋がり、相互に影響し合う関係を意図的に作り上げていくことが大切ということなのかなと思います。

↓私の説明ではかなり分かりにくかったと思います。ぜひご購入のうえ読んでみてください(笑)

 さてここからは少し、これを受けて、たかぎスポーツクラブではどうかということについて考えてみたいと思います。

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5