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セールスエンゲージメント誕生 - 国内における勃興する意義と妥当性の考察

スマートキャンプ株式会社柿森 賢太と申します。

マツリカ社が書籍『SalesTech大全』を発売されたことを記念して、セールステックアドベント 2024にお声がけ頂戴いたしました。お声がけいただき、誠にありがとうございます。

本記事ではセールステック領域における「セールスエンゲージメント」カテゴリに関する内容を執筆させていただきます。


【本記事の位置付け】想いを添えて

私は「テクノロジー」の力で「人」の可能性と能力を拡張し、最大化できると信じています。

テクノロジーが仕事を奪うのでは無く、協調し、強調する。

特に営業活動における、テクロノジーを活用する者とそうでない者の有利性差は昨今の購買活動の変化、それに伴う営業活動の変化に伴い、より顕著になっています。

それを踏まえた上で、この時代に「テクノロジー」は何と向き合うべきか、という問いに対する一つの解として「セールステック」があり、「セールスエンゲージメント」があると捉えています。

私自身も2019年から「セールステック」事業、プロダクト開発に携わってりますが、その解に向き合う同志たち(国内新興セールステックベンダー)が着実に増え、熱が高まっていることを心から嬉しく思います。

本記事においては「セールスエンゲージメント」が国内で勃興する意義、妥当性を私なりの視点で紐解いて参ります。
セールスエンゲージメントツールを会社で起案される際の一助にもなれば幸いです。
また、既に弊社ツールを含めたセールスエンゲージメントツールを導入されているイノベーターの皆様がいかに先見の明を持っていらっしゃるのかを証明し、勇気づける内容にもなればと考えております。

具体的なセールスエンゲージメントツールの利活用イメージに関しては阿久津さんの記事山梨さんの記事でも解説されておりますので、そちらも合わせご覧ください。

【自己紹介】

改めましてスマートキャンプ株式会社柿森 賢太と申します。

国内で「インサイドセールス」×「テクノロジー」の思想と実践を広げるべく、日々、泥臭く尽力する者です。

私に少しでもご興味ございましたら、インタビュー記事もご覧ください。

【序文】問いの立て方

人類の歴史は常に「概念」「ツール」「職種」の進化と共にあると感じます。
それは営業活動においても同様であり、資本主義の発展、社会情勢の変化、購買活動の変化に対応する形で進化しています。

本記事のテーマである「セールスエンゲージメント」の重要性、有用性を紐説くにあたり、先行的にセールステック活用が進む、米国における「概念」と「ツール」発展の歴史を下地にセールスエンゲージメント誕生の背景を考察し、国内における勃興する意義と妥当性を紐解いていきます。

【本論Ⅰ】セールステックの歴史と各カテゴリの誕生背景の考察

※歴史考察は個人の見解となります。

①CRM誕生- 1980~90年代

1980年代に戦後の急速な経済発展に伴い、QOLなど個人の嗜好、幸せを大事にする価値観も議論され初め、顧客ニーズが多様化、顧客に購買活動の主導権が移り始めました。
販売活動を実施する企業もその変化に対応するために画一的ではなく、顧客の属性に合わせてマーケティング活動を展開する、One-to-Oneマーケティングの概念、営業手法を大事にし始めました。

1980~90年代の経営に関わる論文の中で「顧客満足」「マーケティング戦略」「競争優位性」「マーケットセグメンテーション」という単語が多用に使用されたことからも当時、議論の中心であったことが伺えます。

そして、それらに対応、実行するためのシステムとして90年代前半にCRMが誕生し、1993年にはシーベルシステムズ社(2005年にOracle社が買収)が創業し、Siebel CRM発売。1998年にはアンダーセン・コンサルディング(現・アクセンチュア)が「CRM-顧客はそこにいる」という書籍を出版してCRMの概念を確立させました。

また、インサイドセールスは1950年代からスタートしたテレマーケティングの進化、拡張職種として、1980年代から1990年代にかけて英米で発展していきました。

②MA(マーケティングオートメーション)誕生- 1990年代後半~2000年代

1990年代後半 ~ 2000年代にはセールステックを発展させるいくつかの出来事が起きました。

まずは、Salesforce社が1999年に創業、それまでパッケージ型が主流だった企業向けソフトウェアにおいてクラウドコンピューティング上でCRMを提供し、新時代が幕を開けました。

同年、Eloqua社(現Oracle傘下)が創業、CRMに有望な見込み顧客情報を送ることを目的としたMA(マーケティングオートメーション)ツールを提供し始めたこと。2004年以降のインターネットの急速な普及を背景に消費者が自ら検索する購買行動モデルが生まれました。

hubspot社が2006年に創業、購買モデルの変化を背景にインバウンド思想を提唱、2008年にはMarketo社が最初の製品であるMarketo Lead Managementを発売しました。

2009年にはhubspot社が「Inbound Marketing: Get Found Using Google, Social Media, and Blogs (New Rules Social Media Series)」という書籍を出版し、MAツールが広く知られることとなりました。

③CS普及 / セールスエンゲージメント誕生 / ABM進化-2010年代

2010年代の経営に関わる論文では「顧客体験」という言葉が多用されており、SaaSの普及、売り切りからサブスクリプションへの移行、LTV(顧客生涯価値)の重要性の向上などの背景を受け、Salesforce社が2000年代初頭から提唱してきた販売して終わりではなく、継続的にシステムを活用、業務改善を支援していく「カスタマーサクセス」の概念が注目されることとなりました。

こうした背景を受け、2011年にGainsight社が創業しカスタマーサクセスツールの提供を開始しました。2016年には「カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則」という書籍を創刊し、カスタマーサクセスの重要性を説きました。

また、この頃には顧客へのアプローチ方法が多様化したことを背景に、顧客に合わせた最適なコミュニケーションを通して顧客エンゲージメントを高めることの重要性の高まり、2014年にoutreach社が創業し、2019年に「Conversational Marketing: How the World's Fastest Growing Companies Use Chatbots to Generate Leads」「Sales Engagement: How The World's Fastest Growing Companies are Modernizing Sales Through Humanization at Scale」という書籍を出版し、「セールスエンゲージメント」という新たなセールステックのカテゴリが生まれました。また、ITシステム業界の中でも「SoE(顧客との繋がりを意識した IT システム)」という概念の登場により、「SoR(記録を行うための IT システム)」との立ち位置が分かれていったことも要因として考えられます。

2015年には営業中の顧客との会話をAIで音声解析するプラットフォーム(カンバセーション・インテリジェンス)領域でGongが創業し、顧客との会話からインサイトを得るテクノロジーも生まれました。

他にも2019年大型買収を経たZoominfoなどのB2B情報プラットフォームを利用した見込みが確認できない状態での無作為なマーケティング活動ではなくインテントデータ等を活用したABM / アウトバウンドマーケティングの進化も加速しました。

④セールステックカテゴリの統合 / AI×データ活用 - 2020年代

欧米のセールステック領域は大きく「データ蓄積」「データ整形・エンリッチ化」「データ分析・活用」「顧客コミュニケーション最適化・自動化」の領域に大きく分類可能であり、1つのシステムですべてを担うのではなく複数のツールを組み合わせたSales Tech Stackを使用することで各領域を担い相互作用を生み出し営業活動の最適化、効率化を実現しています。

セールスエンゲージメントは特に「④顧客コミュニケーション最適化・自動化」領域を担っています。

また、直近は周辺領域のカテゴリの性質を同時に持つプロダクトが現れたり、M&Aで統合が進むなどの動きが起こっています。

【本論Ⅱ】米国におけるセールスエンゲージメント誕生の背景と要因の考察

本論Ⅰの内容をもとに米国における誕生の背景と要因を考察していく。

要因①:顧客管理システム(CRM)との補完性と相乗効果

「SoE(顧客との繋がりを意識した IT システム)」概念提唱、データ活用した顧客との最適な関係性構築の必要性の高まりと共にデータ入力がより一層、重要になってきた。既存のCRMの入力性を補完するためのソフトウェアの必要性が高まった。

要因②:顧客アプローチのオムニチャネル化

顧客へのアプローチ方法が多様化し、オムニチャネル戦略の重要性が高まった。1顧客に対する接点を増やすことで、より多くの情報提供、機会創出が可能となるため、様々なチャネル(LinkedIn、メール、チャットなど)でのコミュニケーションが求められた。

要因③:顧客エンゲージメントの重要性の高まり

顧客ニーズが多様化する中で、企業や営業担当者はマスに向けた一律の営業アプローチではなく、個々の顧客ニーズに合わせた提案やサービスを実行する必要性が高まった。売り切りからサブスクリプションへの移行、LTV(顧客生涯価値)の重要性の向上などの背景を受け、販売がゴールではなく顧客との長期的な関係構築の重要性が高まった。

要因④:顧客コミュニケーション最適化・自動化の重要性の高まり

アプローチのオムニチャネル化、個々の顧客ニーズに合わせた提案やサービスを実行する必要性が高まる中で、すべてを人間が考え、実行することは限界があり、データで適切なターゲットを特定したり、特定のワークフローを型化し、自動化する必要性が高まった。

要因⑤:顧客インサイトを得る方法の拡張

CRMに入力された顧客情報のみならず、様々なコミュニケーションチャネルで実行されたアクションの詳細情報、Web上の検索行動などのインテント情報など内部、外部含め膨大な量の情報を営業が処理し、顧客インサイトを得る必要性が高まった。

【本論Ⅲ】国内で勃興する意義と妥当性の検討

本論Ⅱで述べた要因は国内でも再現する可能性を考察

国内の向けの調査内容や先駆者たちのnote記事を参考に考察していく。

考察①:顧客管理システム(CRM)との補完性と相乗効果に関して

営業活動の記録を行わない理由は「データ入力の手間が大きい」「データ入力の必要性を感じない」といった現場の意見が数多くあることがわかりました。データが入力されないと、顧客情報が蓄積されずCRMやSFAの機能が十分に発揮できません。

CRMとSFAの違いは?機能や役割の違い、選び方を徹底解説!

入力したデータに基づいて経営、営業戦略が決められているなんていう実感は一担当からはあまり見えないですし、入力した内容にフィードバックが得られないどころか、入力しなくても誰からも指摘もされないこともある、というケースも多く、評価項目にデータ入力が組み込まれている組織も稀ですので、総じて営業担当にとってのインセンティブが働きづらい状態にあります。

なぜ営業はCRMやSFAにデータ入力しないのかを紐解いてみる

UPWARD社の調査結果、剣持さんのnoteからも国内におけるCRM入力における課題感、入力されたデータを営業戦略に組み込めない課題感が伺える。

考察②:顧客アプローチのオムニチャネル化に関して

成果が出ている企業のナーチャリングは電話やメールのみに頼らない、複数チャネルによる定期的な接点を作れていることが分かる。インサイドセールスの課題として挙げらていたツールの活用が今後さらに進むことで、効率的に顧客との接点を創出していくことが可能になるだろう。

インサイドセールス業界レポート2023-2024

過去の検証結果から、単一チャネルではなく複数チャネルを利用することで、商談獲得数は2〜3倍程に向上することが分かっています。

アウトバウンド(手紙施策)からのエンタープライズ企業の商談獲得率が556%向上したので、 BDRチームが実行した施策とフレームワークを振り返ります

スマートキャンプ社のレポートから成果が出ている企業のナーチャリング手法は複数チャネルに定期接点を持つことが分かり、山梨さんのnoteからも複数チャネルを利用することでパフォーマンスが向上することが伺える。

考察③:顧客エンゲージメントの重要性の高まりに関して

企業の「信頼」に繋がると思う要素を買い手全体でみると、「営業担当者が自社の要望を的確に実行してくれる」が54%、「営業担当者が自社のことを真剣に考えてくれていると思う」が53%で上位。

HubSpot年次調査:日本の営業に関する意識・実態調査2024データ集

顧客理解が大事というのは超当たり前で営業パーソンの全員が分かっていると思うのですが、じゃあ「目の前のお客様は具体的に何に困っているのか?どの業務が面倒でどの業務が好きなのか?」など、情報に奥行きを持って理解できると理想的だなと思います。

顧客視点でメールを書き続けたら「井塚さんのメルマガを読みたくて資料請求しました」と言われるようになった話

Hubspot社のレポートから買い手の視点で「信頼」を得るのには、「顧客視点」が視点重要である点や、井塚さんのnoteからもインサイドセールスとしてパフォーマンスを出すためにも「顧客視点」が重要である点が伺える。

考察④:顧客コミュニケーション最適化・自動化の重要性の高まりに関して

セールスエンゲージメントツールの活用により、ToDo管理やカスタマイズしたメールの自動送付など、多くの見込み顧客への1to1アプローチを最適かつ、効率的に実施でき、営業成果の最大化が可能となる。ただし、活用状況を見ると約70%は活用していないため、まだ活用には伸びしろがある。

インサイドセールス業界レポート2023-2024

インサイドセールスの活動プロセス全体を管理することができるため、インサイドセールスが迷うことなく、パフォーマンスを最大化するための活動に集中できることが最大の価値だと感じてます。

「Outreach(アウトリーチ)」シーケンスによりインサイドセールスがよりクリエイティブなチームへ昇華。半分の時間で2倍のアウトプットを実現できたワケ

スマートキャンプ社のレポートからセールスエンゲージメントツールによる営業業務の自動化による伸び代が分かり、山梨さんのnoteからもツールを活用することで工数の削減とパフォーマンスが向上することが伺える。

考察⑤:顧客インサイトを得る方法の拡張に関して

インテントデータを自社の保有データと掛け合わせて活用することにより顧客の潜在的なニーズを知ることができ、また興味関心が高まったタイミングを把握できるため、インサイドセールスによる見込み顧客へのアプローチの効果を最大化することが可能。一方でインテントデータ自体は知っているものの業務での活用は未だ進んでいない企業が全体の42.1%を占め、20.9%は知らないと回答

インサイドセールス業界レポート2023-2024

直近、インテントデータの活用が急速に注目を集めており、1stパーティデータ、2stパーティデータ、3stパーティデータを組み合わせた営業アプローチの有用性と重要性が今後、さらに増すと考えられます。

考察⑥:国内におけるセールスエンゲージメント発展の入口は何か?

営業組織の課題の中で33.0%と最も多くあげられていた課題は「営業の育成」

33.0%の営業組織で営業育成が課題と認識。「営業育成に関する実態調査 2022」を公開。

営業力強化のために会社組織全体でデータ活用(※1)に約6割が取り組んでいる一方、取り組めていない理由は、「運用ノウハウがない」「データを共有する文化がない」。

営業は個人から組織力の時代へ。Sansan、「営業活動におけるデータ活用の実態調査」を実施


UKABU社、Sansan社の調査結果からも営業組織における、「育成」「データ活用」に関わる課題は根強いと感じます。データ活用領域はそもそもCRMにデータが入力されない限り、実現は難しいため、考察①の内容とも大きな関係があると考えられます。

また、スマートキャンプ社のインサイドセールス業界レポート内で、「インサイドセールスで成果をだすまでの期間」が調査されているが、2019年版が平均約9.5ヶ月、2023-24年版では平均12.3ヶ月と期間が伸びている。期間が伸びる要因としては様々なものがあると推察できますが、営業データを上手く活用できず、自社のターゲット選定や適切なアプローチが曖昧であったり、マーケティング施策におけるROI計測が不完全であったり、営業パーソンを育成する基盤を作れない。などの背景があるのではないかと考えています。

以上のことから、国内の営業領域の課題感に照らし合わせると、生産性向上の文脈だけでなく、「CRM入力の徹底」「営業育成」「データ活用による適切なターゲットとアクション選定」の文脈が国内での「セールスエンゲージメント」普及要因として強いと現時点では考えています。

【結論】意義と妥当性はあるか

結論、国内でもセールスエンゲージメントの勃興する意義と妥当性はある!

色々、つらつらと書きましたが、最後は我々の世代が何を解にしたいか?に尽きると考えてます。私はセールステックを活用したイケてる営業パーソンがイケてると称賛され、会社や事業の成長を牽引している世界を創りたい。

【我々が創っているサービス】セールスエンゲージメントツール「BALES CLOUD」に関して

※本記事はあくまでもカテゴリに関する内容への言及に留め、サービスの詳しい説明は割愛いたします。サービスや事例にご興味ございましたら、下記ページよりお問い合わせくださいませ。

【最後に】共に新たな時代を創る同志たちへ

何かが勃興する時、地殻変動が起こる時、そこには必ず熱があり、熱狂がある。

そしてその熱は人と人の繋がりの中で生まれる。

今でこそ当たり前のように語られる「インサイドセールス」という概念、職種も2018年に第一回目が開催された「インサイドセールスカンファレンス」によって繋がりが生まれ、熱狂が生まれました。

そして、国内でセールスエンゲージメントを興すために同志たち(山梨さん阿久津さん)と共に登壇します!

ぜひ、ご参加ください!共に時代を創りましょう。


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