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弁護士の営業①

「元」弁護士で、「元」弁護士法人を経営してということで、弁護士の営業や事務所経営について相談していただくことも多いので少し書いてみようかなと。
 

まず、弁護士は営業がトッププライオリティです。
ほとんどの弁護士の関心事は「営業」です。

四大事務所のパートナーになるための要件も、ほとんどが「自分で売上をたてられるか」ということに集約されます。
独立した・独立を考えている弁護士にとっては、その関心事のほとんどは営業です。

ですので、共同で事務所開業するときには、その組織形態は「経費分担型」が圧倒的に多いです。
つまり、各パートナーが事務所維持に必要な経費を支出して、あとの売上は各パートナーが得る、というものです。個人事業主の集合体って感じです。
※経費分担の程度も色々ありますが、ここでは一括りに経費分担型にしてしまいます。
これも、「自分で売上をあげた!」という思いが強いからだと思います。

私は、弁護士法人を設立するときに、唯一決めていたことがあります。

経費分担型には絶対にしない

ということです。
つまり、一般的な株式会社のように、利益も経費も個人単位で把握せずに共有しましょうってことです。

私が考える経費分担型のデメリットは色々あると思いますが、大きくは2つかなと。

① チーム感がなくなる。
② 投資に対するインセンティブが弱くなる。

僕が重要なのは②だと思っています。

多くの事務所を見ていると

⑴ 採用
⑵ 教育
⑶ 設備

という、未来投資に対するインセンティブが弱くなるように感じます。

今は収益を生まないが、将来収益を生む「かもしれない」ことについて、大きな金額を投資することができないように思います。

⑴採用については、どうしても短期的・画一的な目線になりがちです。
あとは、採用についての権限がなく、責任をとることもできないため、判断が「形式化」しがちです。

あるNYの有名なローファームのパートナーに採用基準を聞いたところ、「有名ロースクールの、1年時の成績のみ」で決めると言っていました。
私が「成績は悪くても、将来化けそうな人とかいたらどうするんですか!」と聞いたところ、彼は「その可能性を判断するほどかかわる時間はないし、ダメだった時の責任がとれない」とおっしゃっていました。

⑵については、どうしても「今の売上をあげるために必要な教育」になりがちです。
プラクティスやリサーチなどですね。
あとは、教育がOJT中心(売上をあげるために、実際の案件を処理しながら教える)なり、教育方針なども個人毎(パートナー毎)にバラバラになりがちです。

⑶については、顕著かもしれません。
効率化するためのITツール導入などについて、なかなか踏み切れません。
理由は、「自分の支出が増える」ことと「決定権がパートナー全員にある」からですね。
人間は「自分の財布からでていく」ことには敏感になりがちです。

私は、世界的にも歴史的にも、株式会社が主流であることには理由があると思っています。
パートナー制度というのは、その原理原則に反するものじゃないかなーと密かに思っています。
※四大事務所も、その弁護士人数はここ6年間ほぼ同水準で横ばいです。

なので、私は弁護士法人設立時には、営業を絶対視せずに、「法人として必要な時間・お金・手間の投資をしよう」と決めていました。

余談ですが、共同代表者の報酬も給与制で、営業成績による歩合もありませんでした。

長くなってしまったので、次は、「事務所立ち上げ時のジレンマ」について、書きたいなと思います。

クラウド契約書システムHolmes
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