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【日誌】J2 42th 松本山雅FCvsV・ファーレン長崎+有耶無耶感と消えた退路

前節 相模原戦で降格が決まり、今節の世間的注目は今季で引退を表明している元日本代表 玉田圭司選手のラストマッチであること。
山雅にとっては消化試合的位置づけ。約7500人がスタジアムに来た理由は十人十色ではあるが試合前には席が埋まり、J3に降格したチームとは思えない風景が広がっていました。
J2最後となる試合のスターティングメンバーには未来を渇望される選手が何人か入りました。

今シーズン序盤には柴田体制のもと、試合経験を積み重ねていた高卒ルーキーの横山が久しぶりの戦線復帰。高卒ながら2人のブラジリアンと前線のトリデンテを形成することに。そして何より注目となったのが今季松本山雅U18より昇格した稲福のベンチ入り。来季を見据えたワクワク感のあるメンバー達が揃いました。

対して長崎は、天敵 都倉賢をはじめ、加藤大など実力者を揃え、松田監督の代名詞とも言える4-4-2の布陣。夏に松田さんの著書にお世話になりました。


試合の方は7分に安東のサイドチェンジを受けた宮部がポジションの幅を活かしてシュートを打ちますが枠外。
しかし、25分 3バックの一角の野々村も前線に上がり攻撃に厚みを持たせようとした所でボールを奪われカウンターを受けます。3対3の状況になり、ゴール前で一気にスピードを上げた33番植中にニアで合わせられ失点。
その後も右サイドの3バックの脇を狙う長崎にピンチを招きますが、圍のファインセーブに救われて0-1で前半を終えます。
後半は開始早々、中盤でプレー選択に迷いが出た佐藤の所を、33番植中に後ろか引っ掛けられカウンターを受けます。右サイドからのクロスにフリーでウェリントンハットが合わせ追加点。アウェイで0-2と盤石な試合運びを見せます。
意地を見せたい山雅は54分に野々村の縦への楔で、相手の処理のミスを誘うとセルジーニョがクロス。ファーで外山が折り返すとBOX内でスクランブルを誘い、最後は宮部が押し込み1-2に。
得点直後には2ボランチを組んでいた佐藤、安東が下がり、河合、そしてJリーグデビューとなる松本山雅ユース出身の稲福が投入されます。その稲福のプレーぶりはシンプルで聡明。アンダーカテゴリで積み上げてきたものを大いに発揮している様に見えました。
その後、阪野や田中パウロ淳一など攻撃的カードを切りますが得点には至らず。1-2で試合終了。

この結果は受けて42試合 7勝13分22敗 22位で2021年シーズンJ2リーグを終えました。
試合後の名波監督の会見で印象的だったのは横山や稲福に対して

彼らは彼らで自分たちが置かれている状況の中でやるべきことプラスアルファを真摯にやっていてくれていました。サッカーノートの文面を見ても、言われていることや一緒にユニットを組んでいる選手の特徴を把握した上での反省やコメントなどが見えています。その上でかりがねのピッチで非常にパフォーマンスよくやっていたので今回はチャンスを与えました。

監督が変わればやり方も変わるのは当たり前といえば当たり前なんですが、選手個人のサッカーノートを見たりと名波監督らしい選手へのアプローチの仕方をしているんだなと感じました。
信濃毎日新聞の記事で若手選手の抜擢については「来季を見据えたものではない」と語っていて、彼らの地道な積み上げが今節の出場に繋がったのだと解釈できます。横山に関しては名波監督が「リモコンとして使っていた」と話すように、多くのことを吸収したのがボールを持った時の腕や身体の使い方や裏への抜け出し方で伝わってきました。
稲福にしてもシーズンを通して見ないと選手としての評価は難しいものではありますが、間違いなく来季の可能性の1つになり得るものでした。
大卒1年目ながらレギュラーを掴んだ宮部、高卒加入3年目で結果を出した榎本も怪我人の事情がありながらも評価に十分に値するもの。
試合前に行われたU15の全国大会進出にしろ、山雅の育成年代が活気付いてきているのは間違いないです。ネガティブな情報が多い今シーズンに一筋の光が見え、来季が楽しみになる最終節でした。

セレモニーから感じたあれやこれ

人間は上手くいっている良い時期に「辞める」という選択肢を持たない。多くの人が「延命」するためにどうするかの方向に舵を切ります。戦争や政治家などの権威が発生する場所によく見られる特徴です。組織に関わるなら如何に”いい時期"を"よりいい時期"にして次にバトンタッチしていくかが重要だと思っています。新陳代謝とも言われる行為を怠れば、身体であれば臓器に異常を来してくる。組織より自分の欲や保身が先行した打ち手なんて苦し紛れにも程があるし、延命を選択してしまったが故に先が短くなるなんてことはニュースでよく見かけます。
2016年や2018年などの史上最強とも言われるチームで勝ち点を積み上げられた状況で退いていればクラブの英雄として終われていたし、他から引く手もあったと思います。しかし、延命を重ねてしまったが故に会社にしがみ付くことしか出来なくなっているし、権威を取り戻すための打ち手はことごとく失敗し、サッカーに関わる人間として短命になろうとしています。
応援団体にしろ、会社の組織にしろ、仲間内にしろ。老害化せず、いい時期に次に任せる勇気を持つことは大事だと改めて思いました。

そうは言っても神田社長からは再起することを7500人+DAZNの前で見守る方々の前で宣言。監督からは「覚悟」という言葉が発せられ、会社やチームとしてあらゆる退路が断たれました。もっと早ければ良かったとは思いますがこれが現実でしかない。ならば今を変えていくしかない。
何だかんだ毎年ハッピーエンドで終われていたホーム最終節のセレモニーでしたが今年は静寂に包まれる異様なもの。今年のような誰も幸せにならないような結末を繰り返してはいけないし、クラブと共に自分自身も変化していかなければならないと強く感じる機会でもありました。
例えば、サッカーの試合を1試合多くみるとか、サッカーに使えそうな書籍を読んでみるとか、他クラブのサポーターに話を聴いてみるとか。1つの行動は小さいかもしれないけど、小さな初期衝動がまわり回って未来に大きな影響を及ぼす非線形性のカオスを起こすことは数多あります。あらゆる革命は突発的に起きるのではなく、小さなことの積み重ねしかありません。サッカーでよく引用されるチェ・ゲバラしかり、フランス革命しかり小さな火種が国を包む大火事に変わっていった訳です。
もしかしたら僕が持つ「山雅のアイデンティティ」が形骸化しているだけかもしれないし、しているのなら教えて欲しい。僕自身の持つ「山雅のアイデンティティ」は、小さな画面の前で他人を罵って悦に入っている様なものではなく、あらゆることに主体性を持って行動することだと思っています。その産物が緑化計画や日本一気持ちのいいスタジアム大作戦です。ネット世界の自分がリアルの世界に融解していくのは何処か気持ち悪さを感じます。LINEでは彼女に「愛している」「いつもありがとう」と言えても現実世界では難しいように。その恥じらいを乗り越えた先に「本質」とものが見えてくると思っていたりします。

どうせ山雅と関わるのなら面白い、楽しい、幸せな方がいい。
だから、そのための努力は怠ってはいけないと思った最終戦でした。

山雅に関わる全ての皆さん、苦しいシーズンでしたがお疲れ様でした!

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