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「オーバーツーリズム」について

政府は2020年までに4000万人、2030年までに6000万人の訪日外国人旅行客を呼び込む目標を立てており、伸びの勢いを見れば、目標を達成すること自体は難しくない状況に見えます。

インバウンドの伸びに比べて、消費額(=旅行先で落としてくれる金額)があまり伸びていないことが現在の課題で、モノコト消費を増やすべく様々な手が講じられているところです。G20、ラグビーW杯、オリパラと大型のイベントが続く今年、来年は日本全国にとって当然ながら好機になります。

インバウンドの数値目標の達成と合わせて今後考えていかねばならない問題に「オーバーツーリズム」があります。この「オーバーツーリズム」に警鐘を鳴らしているのが、クールジャパン協議会の特別顧問も務めてくださっているアレックス・カー氏です。

「観光⽴国」の先駆けヨーロッパでは、バルセロナ、フィレンツェ、アムステルダムといった、世界の観光をリードしてきた街を中⼼に、「オーバーツーリズム(観光過剰)」という⾔葉が盛んに⾔われるようになり、オーバーツーリズムについては、国連世界観光機関(UNWTO)が「ホストやゲスト、住⺠や旅⾏者が、その⼟地への訪問者を多すぎるように感じ、地域⽣活や観光体質の質が、看過できないほど悪化している状態」と定義を決めています。(アレックス・カー清野由美、『観光亡国論』中央公論新社、2019)

この「オーバーツーリズム」「観光疲れ」という他の観光先進国の轍を踏むことがないよう、今のうちから導線整備といった誘導対策と、そもそもの観光客自体の入場制限といった総量規制について、地域全体を巻き込みながら議論を進めていき、COOL な観光を実践していくべきです。

そのような負の側⾯は、観光振興の旗を振っている最中には、なかなか⽬が⾏き届きません。私は「観光反対︕」ということは決して⾔っていません。むしろ「観光⽴国」には⼤賛成です。実際、インバウンドは⽇本経済を救うパワーを持っています。国際的な潮流を⽇本の宿や料理に吹き込むことによって、新しいデザインやもてなしも⽣まれていきます。ただし、それらは適切な「マネジメント」と「コントロール」を作った上でのことだと強調したいのです。 ⽇本の観光業では、前世紀の⾼度経済成⻑期の「量の観光」が今だに根を張っており、今の時代に通⽤する「質の観光」については浅い理解になっています。前世紀なら、「誰でもウェルカム」という姿勢の⽅が、聞こえは良かったかもしれません。しかし、億単位で観光客が移動する時代には、「量」ではなく、「価値」を極めることを最⼤限に追求すべきなのです。(同上)

次回、「質」ではなく「価値」を極める観光とは何か?について探ります。

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