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多様性を尊重しすぎて組織が崩壊した
アンドゲート田村です。
株式会社アンドゲートという会社の代表をやっています。
この記事では多様性を尊重しようとして組織が崩壊した苦い思い出を書きます。
そのおかげで「組織化」と「サービス化」の両方が実現できたので、今では良い経験だったと思っています。(でも思い出すとちょっとほろ苦い)
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事の発端は過度な採用
アンドゲートは2期目のはじめに月商800万円台から500万円台まで落ち込み、想定外の3ヶ月連続赤字を記録したことがあります。
原因は1期目の終わりに行った過度な採用でした。
1期目の終わりは約10人のメンバーで運営していましたが、ありがたい事にお仕事は増え「人を増やせば売上が拡大できる」状態だと思っていました。
今思えば、絶対にそんなはずはないんですけど…。
求人媒体に出稿し、結果的に5人採用しました。
その時の組織は「役員」と「メンバー」の2階層で、役員がメンバーに指示を出すスタイルでした。
たった5人、されど5人。
10人から15人は組織規模としては1.5倍で「組織文化」なるものは一瞬で吹き飛びました。
当時、私の仕事は「実務」+「営業」であり、社長でありながらトッププレイヤーでした。
創業期はどこも同じようなものだと思いますが、完全に「狩りに出ている」状態で「村がどうなっているかな」と気を回す余裕はありませんでした。
実務の移譲失敗
プロジェクトマネジメントの仕事は「管理する側」と言えば聞こえは良いですが、実際は泥臭い部分が大半で「人間の弱さ」みたいなものと一つ一つ向き合っていく仕事です。
例えば「担当者がタスクの期限を守らない」「連絡しても返信がない」「指示した内容と全く別のことをやっている」など、一つの事象だけ見れば「ちゃんとやってくれ」と思うことも「そうはならない現実がある」と原因を見極めて対応する必要があります。
そういった仕事への向き合い方・マインドセットを伝えることなく、小さな成功体験を積んでもらう機会もなく、ただスキルセットだけ伝えることを繰り返しているうちにメンバーから
「こんな仕事までやらなきゃいけないんですか?私はサポートが得意です。」
との声があがりました。
モチベーションが上がらない仕事をやってもらうより、他のパフォーマンスが出ることをやってもらったほうが良いと思い、仕事を引き取りサポートに回ってもらうことにしました。
営業の移譲失敗
自転車操業の創業期は営業活動がとても重要です。
「今」のことをやりつつ「3ヶ月先」を見据えた動きをしなければ、仕事がなくなります。
プレイヤーだった私は「今」に集中するために、「3ヶ月先」である営業活動をメンバーに依頼しました。
しばらく一緒に営業活動を行っているとメンバーから
「私は営業の仕事は向いていない。戦略を考えるのが得意です。」
との声があがりました。
向いていない仕事をやってもらうより、結果が出せる仕事をやってもらった方が良いと思い、営業活動ではなく実務をやってもらうことにしました。
人を増やした意味がなくなった
こうした一つ一つの声を聞いて配置を変えていると、役割の境界が曖昧になり、コミュニケーションコストが上がり、依頼したかった仕事は手元に戻ってくるばかりか、周りの人をケアする仕事が増えただけの状態になりました。
メンバーに向き合えば向き合うほど実務や営業が滞り、最終的に給与が払えない状態になる。
と危惧している一方、メンバーからは
「この会社は従業員を不幸にしている」「やりがい搾取だ」
という不満の声があがり、組織は崩壊しました。
「力不足で申し訳ない」と思うと同時に「寄り添い方を間違えた」と猛省しました。
「多様性」とは「適度に無関心」なこと
私は「多様性」とは「相手を理解して寄り添うこと」だと思っていました。
しかし、今では「多様性」とは「コミュニティの共通の価値観やルールを守り、それ以外には関心を持たないこと」と定義しています。
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「多様性」が必要なところには、必ずコミュニティが存在します。
そもそも世界に自分一人だったら「多様性」という言葉は生まれません。
日本であれば憲法が共通のルールであり、憲法を犯さない限りは日本に存在することができます。
アンドゲートではこの「価値観やルール」が明文化されていませんでした。
そのため、核のない「多様性」となり、組織崩壊を起こしました。
アンドゲートは株式会社であり営利法人です。
関係者に対して利益分配を目的としており、利益を出さない人はこのコミュニティに属する意義がありません。
(厳密には「株主」ですが、ここでは「役員」「従業員」も関係者と呼びます。)
「何だ、カネカネ言いやがって!」と思われるかも知れませんが、株式会社の原理原則は「金を稼ぐこと」です。
その考えから、アンドゲートでは「お金を稼いだ人がお金を手に入れるべき」という制度設計にしています。
これは会社というより私の価値観ですが「LGBT」を例に挙げると「性別や性的指向ってビジネスと関係ないですよね?」というスタンスです。
「ああ、君はトランスジェンダーなんだね、見た目と中身が違うからどのように接すれば良いかな?」という歩み寄りも大切だとは思いますが
「性別?関係ねぇ!稼ぎゃいいのよ、稼ぎゃ!」の方がよっぽど楽じゃないですか?
原理原則を元にした制度と組織文化作り
アンドゲートの「共通の価値観やルール」は「金を稼ぐこと」と定義しました。
究極の究極、金を稼いでいれば良いのです。
もちろん、そのためには人が必要で、優良企業は「人を大切に」というスローガンを掲げますが、誤解を恐れずに言うと、人を大切にするために仕事をしているのではなく、仕事をするために人を大切にしているのです。
こんなことを書いていると銭ゲバ感が満載ですが
反対に言えば、日中遊んでいようが、週に3日しか働いていなかろうが、結果が出ていれば良いのです。
とは言え、それでは「共通の価値観やルール」とは呼べないので
ミッション・ビジョン・バリュー、7個の行動指針、13個の行動規範を作りました。
その中で大切にしたのは「欲求の順番」です。
事業の欲求は「キャッシュ」を確保して、「独自性」を出して、「社会へ影響」を与えること。
従業員の欲求は「生活水準」を上げて、「働きやすさ」を確保すること。
「働きがい」は会社が用意するものではなく、個人で見つけるものですが、最大限の歩み寄りをするという宣言をしています。
(これについてはまた奥が深いので別の記事にしたいと思います。)
「金が全てじゃねぇが、全てに金が必要だ。」(闇金ウシジマくん 29巻)
の言葉の通り、事業と従業員の最低限の欲求にお金が必要です。
しかし、お金は目的ではなく手段なので、より上位の欲求を目指すために順番を守って、相互的に利用し合う良い関係を築こうというルールを作りました。(必死の弁解)
(あえて「利用し合う」と書いており、ここについても奥が深いので別の記事に…)
組織に浸透しているかはさておき、核となる「共通の価値観やルール」ができあがりました。
あとはこれを制度として落とし込んで、組織文化として醸造していきます。
まず変えたのは採用方式
まず最初に採用の方法を大きく変えました。
具体的には「人に役割を与える」のではなく「役割に人を割り当てる」方式にしたことです。
外資系のジョブ・ディスクリプションです。
「何を当たり前のことを」と思われるかも知れませんが、この方式だと頭数が必要になるので創業直後ではなかなか選択できない方式です。
1人1役割だと人数が増える、1人複数役割だとそんなスーパーマンは市場になかなかいない、と絶妙なバランスです。
少なくともオファーを出すときには「業務内容と責務」「権利」「報酬」を明文化して、期待値の擦り合わせを行いました。
そして始まる組織化
「役員」と「メンバー」の2階層から
「役員」「チームリーダー」「メンバー」の3階層にして
レポートラインをハッキリさせました。
ハッキリとは、直属の上司・直属の部下以外のコミュニケーションを断つことです。
部下は直属の上司にしか聞けないし、上司は直属の部下にしか指示ができないようにしました。
そんなことをしたらサイロ化が進むのではないか?という懸念がありましたが、組織を作る上では「縦割り」と「横割り」はずっと繰り返すしかないと結論づけています。
「縦割りすぎるなー」と思ったら横割り施策を実施し
「レポートラインが崩れてきたなー」と思ったら縦割り施策を実施するといった具合です。
4期目の今では「役員」「マネージャー」「チームリーダー」「メンバー」の4階層となり、もうすぐ「役員」「マネージャー」「セクションリーダー」「チームリーダー」「メンバー」の5階層になりそうな雰囲気があります。
レポートラインがしっかりしてきたので「組織横断機能」として経営戦略部の立ち上げを行いました。
これでレポートラインが崩れてきたら、また縦割り施策を行います。
業務整理としてのサービス化
アンドゲートではプロジェクト推進サービス「ダンドル」を提供しています。
![画像2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/54777855/picture_pc_6438f0bb0d2ab91233d152c561e0875d.png)
実はこのサービス、最初は市場向けではなくメンバー向けの業務整理の一環として作られました。
上記の「こんな仕事までやらなきゃいけないんですか?」に対するアンサーです。
やること・やらないことが曖昧だからこそ、メンバーに迷いが出るのだと考えました。
そんな状態では顧客からしても期待値が合わず発注しにくい、発注したとしてもトラブルの原因になると考え、やること・やらないことを書き出して「ダンドル」という名前をつけました。
その結果、顧客からの期待値が擦り合うようになり、メンバーからしても「範囲外の仕事」を断りやすくなりました。
業務が洗い出され役割が明確になったため、必要なスキルセットも特定でき、採用の効率が上がりました。
一時は組織が崩壊しましたが、そのおかげで「組織化」と「サービス化」
そして何より「多様性」の定義ができたことが一番の収穫でした。
事業運営・組織作りで同じ苦痛を味わう人が一人でも減りますように。
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