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Multistate Professional Responsibility Examination (MPRE)

前回Professional Responsibilityの授業の振り返りを書いたので、今回は、その関連イベントとしてMultistate Professional Responsibility Examination ("MPRE")の受験について書きます。MPREは、法曹倫理に関する各州の統一試験です。同試験において一定のスコアを取得することが、Texas Barを含む各州Barに入会(アドミッション)するための要件になります。試験自体は、大した難易度ではなく特別な対策も必要ではありませんので、これからMPREを受験する人にとって本記事から得られる示唆はそこまで多くないかもしれません。ただ、一つの例として参考になりましたら幸いです。

以下では、MPREの概観を見た上で、達成すべき目標の確認、そのためのストラテジー、実際にやったことの順で書いていきます。

MPREとは?

MPREは、Multistate Professional Responsibility Examinationの略称です。主催するのはNational Conference of Bar Examiners ("NCBE")であり、このNCBEは本番の司法試験(Uniform Bar Examination, UBE)も所管しています。詳細は以下のウェブサイトをご参照ください。

MPREは、全60問の多肢択一式問題から構成されます。出題範囲については以下のとおりNCBEが公表しています。これを見ると、どの分野が重点的にテストされるか見通しを持てますが、私の経験上は、結局やることはそんなに変わらない(過去問等を何周かやるだけ)ようにも思います。

https://www.ncbex.org/sites/default/files/2023-01/MPRE_Subject_Matter_Outline.pdf

毎年3月、8月、11月の計3回行われ、いずれを受験してもOKです。それぞれ2日間の日程が用意されていますが、2日間のうちいずれかの日から自分の受験日を選びます。私が受験したのは3月27日でした。これは、前回書いたとおり、テキサス大学のカリキュラム上、Professional Responsibilityの授業が1月からの春学期に開講されていて、この授業がMPRE対策も兼ねていたためです。時間の有効活用や、モチベーションの維持といった観点から、このようなアレンジは非常に合理的だったように思います。他方、そのような事情がなければ、8月、11月に受けるのも十分あり得ると思います。例えば、早めに懸念点を解消しておくという観点から、LL.M.のプログラムが開始してすぐの11月に受験してしまう例もあるように聞いています。

達成すべき目標は?

Barのアドミッションに必要なので受験するわけですが、必要な点数は州によって微妙に違います。Texas Barの場合、 85点(素点ではなく、調整後のscaled score)が必要です(Rule 5, Rules Governing Admission to the Bar of Texas)。

https://ble.texas.gov/txrulebook

Scaled scoreの目標だけだと、必要な素点(60問中いくつ正答できればいいか)が分からないので、逆算する必要があります。以下のサイトによると、85点取るには、概ね60%正答できればいいようです。

ストラテジー

3月27日に受験するとして、いつから勉強開始すべきか。ロースクールからは、大体の勉強時間の目安が20時間で(本番と同じ出題形式で最低60問1セット解くことを含む。)、それを踏まえると、試験日の3-4週間前から準備することを推奨されました。ということで、このアドバイスに従い、3月になったら準備開始することにしました。なお、3月開始については、以下の各事情からもリーズナブルであるように思いました。

  • 1月からPRの授業が始まっていて、その中でMPREで問われる法曹倫理のサブスタンスについてはじっくり学ぶことになる

  • 3月11日の週は大学のSpring Breakなので、勉強時間はそこで十分取れる

  • PRのFinal ExamがMPRE直前の3月22日に設定されており、その準備の中で必然的に知識のレビューをすることになる

受験対策でやったこと

授業

1月からPRの授業があるので、3月に入るまでは、それに合わせて予復習をするという感じでした。ABAのModel Rulesを中心に勉強していきます。

サンプル問題の演習

3月に入ってから、MPREの準備に着手しますが、授業でインプットは終わっているので、あとは問題演習するだけかなと思いました。そこで、まずは定石どおり、本家本元NCBEが提供する模試をやってみます。以下の問題集(Simulated MPRE)です。1セット60問で45ドルしますがこれを2セット買いました。

軽く解いてみて、(Model Rulesではなく)Restatementがオーソリティになっている出題があるのが気になりましたが、そんなにたくさんあるわけでもないし、所詮は多肢択一問題であり詳細な理解が求められているわけでもないので、試験対策という観点では、Restatementに深く立ち入る必要はなく、せいぜい予備校のアウトライン(後述)でまとめられている限度で理解しておけばOKと整理しました。

問題を一問解いて、解説を読んで、適宜Model Rulesの条文に立ち戻るという感じで勉強しました。以下で述べる模試までに、2セット合計120問解きました。

模試

本番の8日前に当たる3月19日に大学主催の模試があります。そこでは、予備校の一つであるThemisの問題を使って、みんなで教室に集まって解きます。結局、自分のPCを使うことになるので、自分の部屋で自分で時間測ってトライすればいいだけのような気もしますが、みんなで集まるとモチベーションになります。

模試の正答率は62%で、思ったより出来は良くなかったです。この段階では120問問題演習していた状態ですが、それだけでは足りない(まだ一度も触っていないルール類がある)、と敗因分析しました。これを踏まえ、模試後本番までの1週間の対策は、模試で間違えたところの見直しをしつつ、むしろもうちょっと手広くやることにフォーカスすることにしました。

Final Exam

といったMPRE向けの準備もしつつ、3月22日に授業のFinal Examがあります。MPREよりはるかに難しい問題が出たのが嫌でしたが、基本的にはMPREの準備がFinal Examの準備も兼ねています。(じゃあなんでFinal Examやる必要があるのか、という気もしますが。)

予備校教材

「手広く」やっていくことの一環として、予備校の一つであるBarbriの教材(アウトライン等)を広めに読み直すことにしました。[1] 「MPRE Review」という薄めのアウトラインと、「MPRE Maximier」という間違えやすいところをまとめた教材です。このMPRE Maxizerですが、トリッキーなところを綺麗にまとめてくれているのが助かりました。例えば、AttorneyはClientとの間で一般的な代理関係にあるところ、それでも重要な判断をする際にはClientから明示的に同意を取得する必要があるのですが、具体的な手続きにはグラデーションがあって、軽い方から並べると、informed consent < informed consent in writing < client’s signature < advice for consultation with independent legal counsel < represented by independent legal counselみたいな感じです。どの場面でどの手続きが適用されるのかについて、Barbriの教材ではちゃんと整理されていました。

なお、Barbri初め予備校の教材は基本無料で手に入ります。

その他準備

MPREの本番は、近所のテストセンターに行ってそこに置いてあるPC上で回答することになります。雰囲気に慣れるためには、以下のウェブサイトで直前にTutorialをやっておくのがおすすめです。フォントの大きさを好みに変えられたりできます。

https://home.pearsonvue.com/mpre

結果

以上のような準備を経て、3月27日に受験しましたが、まあ間違いなく60%は取れているだろうなという感触でした。Themis模試と比べたらはるかに簡単だった印象です。実際、後日(試験日から5週間後)公開されたスコアは、137/150でした。素点は公開されないので不明ですが、正答率で言うと9割超だったのだと推測されます。

結局MPREの準備のために勉強した時間(ロースクールの授業除く)は、35時間超でした。Texas Barの入会[2]のために必要なスコアが85点であるのに対し137点も取ってしまったので、too muchだったのは否めません。ただ、MPREの勉強を通じて、Barbriの教材との付き合い方が分かったような気もしており、これは本番の司法試験にも役立ちそうです。



[1] もう一つの予備校であるThemisの教材もざっと見ましたが、Barbriの方が使いやすそうでしたし、司法試験(UBE)対策ではBarbriを使う予定だったので、Barbriの教材に慣れておくという観点も含め、Barbriにしました。

[2] MPREのスコアは、NCBEがTexas Barまで直送してくれますので、受験者本人として対応することはありませんでした。

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