見出し画像

【日本代表】なぜか触れられない「相手の変化」

読者の方々、お疲れ様です。このページまでお越しいただきありがとうございます。サッカーアナリストの杉崎です。

オンラインサロン運営、J1〜J3選手のパーソナルアナリスト、Run.Edge株式会社のアドバイザー、東京大学運動会ア式蹴球部のテクニカルアドバイザー、メディア活動などを行っております。
オンラインサロン【CiP】は現在「89名」の方にご参加いただいております。ご支援・ご参加ありがとうございます。

※オンラインサロン【CiP】へのご参加には『Campfire』からの登録と申請が必要です。この機会にぜひ、ご検討ください。

私著書のこちらもよろしくお願いします。
「サッカーアナリストのすゝめ」

さて今回は、11月の2連戦を終えた日本代表のレビューをお届けします。年内の試合が終わり、残すは年明けからの4試合のみ。6試合を終えた時点での順位表はこちらです。

順位表

オーストラリアが中国に引き分けたため2位に浮上しました。アウェイでの2連戦を2連勝できたことが要因であり、大量得点が欲しい声も理解できますが、やはりまずは勝ち点3ずつ取っていく。これがいかに大事かを思い知った2週間だったなと。

日本がオマーンと対戦した節にベトナムとサウジアラビアが戦いましたが、首位でグループBの最多得点を誇るチームですら1点に終わりました。VARにより得点が認められなかったシーンもありましたが、日本であれサウジアラビアであれ、簡単な試合ではなかったということです。大量得点を狙うのは当然ですが、相手もプライド・生活・家族・国などを背負ってますからね。相手をリスペクトしないといけません。

確かに、内容面で改善ポイントがないのかと言えば違います。ただ、それは現場の人間も知っています。我々以上に。

では、ベトナム戦ではどんなパフォーマンスだったのか。特に攻撃面で振り返っていこうと思います。ここで重要なのは、日本目線のみで語るのではなく、相手はどう動き対策していたのか。なぜかメディアや一般の方も含めてここに言及しないことが多いですが、それも踏まえて読んでいただければと思います。

まず日本が自陣で攻撃を仕掛ける時。ベトナムは1-5-3-2で引いてブロックを敷いていたためあまりシーンは多く発生しませんでした。その中でしたが、守田選手が左インサイドハーフから頻繁に下りて相手の19番グエン・クアン・ハイ選手をつり出そうとしていましたが、25分あたりから「プレスを止めました」ね。そのため、前進するのは容易でした。ただずっと下がっていたのかと言うと、そうでもなかった。34分には南野選手がハーフラインまで下がる動きに対して相手WBの17番ブー・バン・タイン選手がついてきました。落としに対して先程の19番が反応し、日本のボランチとCBに対して2度追いしてプレスに行きます。

冨安選手がこれを利用して19番の背後のスペースを利用できたシーンでしたし、これに対応するためにアンカーの11番グエン・トゥアン・アイン選手がスライドしてきたことも利用できました。

守田選手遠藤選手で相手のアンカーの後ろを取ってスルーパスを狙えるチャンスでしたが、ここがミスキックになってしまいましたね。

実は敵陣での攻撃の15分。この19番と11番が食いつくことは経験していました。また、逆のインサイドハーフの14番グエン・ホアン・ドゥク選手が絞っていなかった。ここは穴だったのですが使えなかったのです。

これを分かっていてかは不明ですが、34分のシーンは見事に崩しまでは持っていけたシーンでした。

前半は積極的に日本のSBを上げ、守田選手田中選手が下がってピックアップすることが見えましたが、後半はこれを変化させていたと思います。(もちろん前半もいくつかやっていましたが)

長友選手山根選手がさほど上がらず、相手のシステム上空くことが分かっているエリア(相手インサイドハーフの前のスペース)を、SBに使わせて日本の3センターはなるべく高い位置で関わらせようとしていたのかなと。51分のビルドアップとかはそれが少し見えた形でした。

ただやはり今の日本の課題は、立ち位置とかビルドアップとかつなぎとかテンポとかだけではなく、最後の崩しのところですね。相手があるスポーツですので、見るべきは相手のシステムと選手です。システム上、空くスペースだけでもダメですし、選手個人攻撃をしていても難しい。地上戦だけでもダメだし空間も使って目線もズラす工夫も必要。このバランスがまだ向上の余地があるなと思います。

1-5-3-2であればやはり左右に振られると3センターが間に合わなくなってくる。ただそれは選手の走力と体力があればカバーできる。ベトナムはここを生命線にしながらだったので、ハーフタイムに11番のアンカーを変え、20番ファン・バン・ドゥク選手を左インサイドハーフに据えて14番をアンカーに変えました。さらに、84分にはその20番に変えて6番ルオン・シュアン・チュオン選手を入れてアンカーを再び変えた。ここが常にフレッシュとなってくることで穴を空けないように考えていたと思われます。

となれば、日本代表としては、この3枚を粘り強く外しながら背後を取っていかないといけない。取ったとしても、そこからどこを狙っていくのかを共有しながらでないと簡単には崩れてくれないと。

ここの「最後の」質が伴わなかった。それはピッチ状態が悪かったこともありますし、クロスが狙ったところに飛ばせない要因でもありました。前半アディショナルタイムの伊東選手のクロスもそうですが、後半43分の中山選手もそうでした。

一方で、そのクロスの質と同様に「いつ」クロスを上げるかについてももっと工夫が必要でした。相手の5バックが整っている時に上げてしまった54分と58分は可能性を感じなかったですし、中国戦やこの試合のゴールシーンのように「整っていない」タイミングで上げることが重要でした。

これは、オマーン戦でも見られましたし、逆に工夫しようという意図も見られました。相手が異なれば最後の崩しの場面での対応の仕方も違います。一概に整っている時にクロスを上げるのがダメかというとそうでもありませんが、やはりクロスの成功率が平均30%以下となりやすいサッカーの特性を考えると、この確率をいかに上げるかは議論していかないといけません。

あの欧州王者のイタリアでさえ、やはり5枚+3枚で北アイルランドに守られて得点が奪えず2位に転落してプレーオフに回ることになりました。

簡単に得点できることもあれば、できないこともあります。だからこそ、クロス一辺倒にならず、中央突破や一発で裏を狙う攻撃、この試合の得点シーンのように相手のGKのパントキックを跳ね返した後で素早く縦に仕掛けて奪い切ってしまったり、CKの守備からのカウンターで伊東選手がネットを揺らしたように、様々なチャレンジをし続けることが大事かと思います。

この教訓が生きたのはオマーン戦でした。

ここから先は

2,956字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?