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マリメッコの映画見ました

映画「マイヤ・イソラ 旅から生まれるデザイン」を見ました。
有名ブランド「マリメッコ」の有名な花柄とか、たくさんのデザインを残したフィンランドの女性アーティストの人生を追った作品ですが、

まず、マイヤさんは最後まで、あくまでマリメッコ社の雇われデザイナーであって、特に経営とかに関わったワケでもなく、自身の作品の版権なども会社のモノっぽい、というのに驚きました。

そのへんのお金や商業的成功についてはハッキリ触れられないんだけど、唯一の証言者として登場するマイヤの娘さん(もうお婆さんですが)もお金持ちではなさそうだし。

あれほど本人が亡くなった後も何十年、今後もずっと愛されてマリメッコ社に莫大な収益をもたらしてるだろうという数々の作品の遺産も、本人や遺族にはたいして還元されてなかったのかな〜、という下世話な部分が気になります。

が、作品の主題はそんなものではなく、マイヤの人生を詩情豊かに描いていきます。
描いてるんです。
事実検証や本人映像やゲスト証言を集めたドキュメント作品ではないんですよね。

マイヤ本人が動いてる映像も少しだけ見れるけど、あとは時たま普通の写真が挿入されるくらい。たぶん本人ビデオなども残ってるものはいろいろあるんでしょうが、あえて使ってない?

マイヤ本人の、たぶんインタビューなどで残ってるような音声による語りなども挿入されていますが、大部分は、マイヤが少女時代から残した文章や日記、家族などに送った書簡、をモノローグとして女優さんが語っている? 「私はヨーロッパをめぐりアルジェリアに来ました」みたいな。それもマイヤ本人に似たトーンで喋ってるので、いつの間に本人自身の語りに乗り代わったりします。

そして映像は! マイヤがその当時、家族に対して送ったハガキで「今、私はパリにいます」ていうと、その時代のパリの映像、どっかのアーカイブから「適当に持ってきた」ような映像が挿入されるんですよ。別にマイヤが写ってるワケじゃない。でも巧妙に、手紙の内容に合わせて50年代に「パリのカフェによく行きます」というと、その時代のパリのカフェが。70年代に「ニューヨークに行きました」て言うと70年代のニューヨークの街角が。「エジプトのビーチに行きました」て言うとエジプトのビーチが。

ハッキリした観光映像でもない、すごい自然なプライベート映像みたいなショットばかりを探してきて、ちゃんと語りの内容にリンクする、時代と場所に合わせた映像をアテてるんですよ。しかしマイヤは写ってないんだけど、少しづつマイヤの写真も入るので、マイヤと一緒に時代を体験してる気分にもなる。

変な作り方の映画だな〜。初めて見たような気がする。コラージュ・アート・ムービー。こんなんありましたっけ? いや、デジタルアーカイブ時代の今だからこそ作れるようになったのかな?

途中でマリメッコで商品化されたいろんなデザインを「勝手に」アニメ化した映像なども美しい音楽とともに挿入されるのが映画のアクセントにもなってますが、これも今の技術だからできることだもんね。

意外に、花柄・植物とともに、動物モチーフの作品も多くてかわいいのにも今回あらためて気づかされました。

そして、マイヤの人生は旅よりも、恋が多めに語れられていきます。3回の結婚の後、中年になってからは、自分より若い、婚約者のいる中東の男性に手を出したりします。

ていう印象です。こう言うとホントに失礼なんですが、マイヤさんは作品のイメージに反して、そんなにフェミニン、乙女チックな性格でもなさそうなんですよね。恋を創作のエネルギーにしている、というのも、バイタリティあふれるオッサンが女の子を捕まえにいくような「英雄、色を好む」的なメンタリティのほうに近いのでは? とぼくは感じてしまいました。それもまたイイと思いますが!

終盤は、売れっ子マリメッコとして求められる部分と、自分の純粋なアーティストとしての作品創作をしたい気持ちのギャップに悩む部分なども描かれます。創作に関わったことある人なら誰しも共感するところ。

こんなに言うと、ぼくがすごく作品に感銘を受けたみたいですが、実は少し退屈でした。。やっぱ、ずっと淡々とした語りが続いて、特にヤマ場を作るような演出でもないので、眠くなってウトウトしたとこあります。フィンランドの映画だな〜、という感じ。静かな映画を見慣れてるシネフィルの方にとっては、むしろ好ましいだろうと思う。

まあこれまで、有名人の伝記ドキュメント映画というと、本人にまつわる、また様々な有名人のコメントが矢継ぎ早に挿入され業績の偉大さが語られ、その人生が過去映像と時代背景の振り返り、再現ドラマや再現アニメなど、いろんな展開があって、というハリウッド式に慣らされていたけど、まあバタバタしますよね。
今回は、こういう落ち着いた伝記映画の作り方もあるんだな〜、とあらためて感じました!


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