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洋楽カラオケ講座! 第10回 スパークス「ディス・タウン」改訂増補版

なんと、2022年春、Appleの新しいiPadのCM曲にも使用されている、あのカッコいい曲、みなさんご存知ですか?

これは活動50年以上を超えるベテラン兄弟デュオ・アーティスト、スパークス「ディス・タウン」という名曲です!
前からご存知の方のほうが、逆に「えっ、スパークス、カラオケ屋にあんの?」と驚かれるかもしれませんが、あるのです! あの曲が!

DAMのネット上の検索画面

スパークスのカラオケはDAMだけです!

これは最新機種でしか歌えないやつではなく、ある程度、古い機種でもカバーされてるので、どの店でもイケるでしょう! 今回ばかりはJOYSOUNDはすいません。てか、JOYも入れてください。コレを機に!

DAMのリモコン画面

スパークス初期の代表的なシングルヒット曲「ディス・タウン」(1974年)ですが、日本ではシングル出てません。イギリスでは当時はかなり売れたよう。まずは何度も再生して曲全体をおぼえてみよう!

彼らの3枚目のアルバム、日本では最初にリリースされた「キモノマイハウス」でオープニングを飾るロックナンバーですね。

名盤・キモノマイハウス(1974)

ま、スパークスに関するアレコレは後にして、まずは、今すぐカラオケに行って歌いたい人のために、この楽曲を解説します!

もう、裏声しか勝たん!

では歌の分析に入っていきますが、ちなみに前回紹介したエルヴィス・コステロ同様、ラッセルもこの曲では自分のボーカルをユニゾンで重ねてレコーディングしてますので、ぼくらがカラオケで歌っても原曲通りの厚みには、ならなくて当然なので大丈夫です。

だいたい3分前後のポップソングとか歌謡曲って、1番ー2番ー間奏ーCメロが入るか、3番、という構成が多いですけど「ディス・タウン」は1番2番3番〜間奏〜4番5番という構成です。Cメロとか、それる展開もない。日本にはあまりない感じかな? 洋楽でもめずらしい?

でも普通は3番4番になると、もう元のメロディをフェイクしたり、スキャットをはさんだりして変化をつけたがるものです。同じ歌詞を繰り返したり。

しかしロン・メイル兄は、5番までちゃんと歌詞を変えて書いている。物語性のしつこさがすごい。ラッセル・メイル弟も、ちゃんと5番までメロを崩すことなく型を守って歌っています。

そして発声です。この連載の第8回、イエス編のジョン・アンダーソンのときも言いましたが、地声が超ハイトーンのボーカリストでも裏声だけで歌ってる部分はある。そのつなぎ目が目立たないのが一流。

ぼくたち素人が歌うと、どうしても「途中からいきなり声が裏返っちゃった!」という印象になるのがはずかしくて、人前で洋楽歌えないって人も多いと思います。A-Haの「テイク・オン・ミー」くらい、切り替えがハッキリした曲ならいいんだけど!

ラッセルはギリギリまで地声の高い声でいってるけど、ぼくらの場合、歌い出しは地声で行ける、と思ってもムリせず、全体的に裏声気味に移行するのがコツ、てことですかね。この「ディス・タウン」の冒頭ではラッセルは

Zoo time, is she and you time?
The mammals are your favourite type, and you want her tonight

の type, and you のへんだけ裏声で、すぐに地声に戻ってると思いますが、ぼくらがそこまでなんとかイケても、1回ひっくり返ったら、その後地声に戻れなくなることもあるかと思います。そうなったら裏声ばっかりで押し切ったほうが違和感がないかもね。まあ、この地声裏声の行きつ戻りつは練習しかないですけど! 各サビの最後の「リーブ」が弱くならないよう気をつけよう。

あとは歯切れよく、リズムに乗れば、初期スパークスの曲の中では早口になる部分も少ないほうですし(3番はちょっとむずいけど)いけると思います。

ま、一番問題なのは、やはり間奏の、銃声がバキューンと鳴る前の
「いやああああああぁっ」という、きんどーちゃんみたいなシャウトするとこと、
エンディングの「り~〜〜ぶ!」ですよね。

これはどうやっても常人には裏声でも出ない気もします。まあ意識して力を抜いて、出せるとこまで出して、ごまかしましょう。ま、ゴナとリーブの間は、原曲通りでなく、気持ち空けないとムリだと思います。努力は伝わる!というタイプの曲であることも、歌ってみればわかります!

【追記・2022/04/16】
そういえば本物ラッセル自身が東京のカラオケ屋で「ディス・タウン」を歌ってる動画も、公式がアゲてるんだった! 軽く歌ってます。歌詞も見てるし! ま、一番参考にはなりますかね!

スパークスファンへ、DAMからおすすめ!

「ディス・タウン」を歌ってるとき、DAMのリモコンで「この曲もおすすめ」というボタンを押すと、こんな画面になりました!

ヤプーズ、ゲルニカ、クラフトワーク、、わかっとるね!(わかってるのか?

ちなみに、エドガー・ライト監督も日本に来たとき、スパークスとカラオケ行って歌ったそうやね!

そして今、Youtubeでも歌えるスパークス!

【追記・2022/08/30】

twitterを見てたら、ドリア風ミラノさん @cho_ma_te_yo が公開されていた、スパークスカラオケリスト ↑ の方に、ぼくが知らなかった曲も入ってたので下に追記しました。

他に見つかったら追加しますので、みんなも探して教えてください!

ひとまず全部リンク貼っておきますけど、やっぱ、音の良し悪しより、テロップの出るタイミングが良いほうが、だんぜん歌いやすいです!

打ち込みで作ってるのに混ざって、オリジナルの音をそのまま加工して歌だけ抜いてるギリギリ、イリーガルぽいのも多いですが、合わせて紹介しておきます。

【まず「ディス・タウン」から】

Sparks - This Town Ain't Big Enough For Both Of Us - Karaoke Version from Zoom Karaoke
曲が始まるまでが長い。ギターの音は割といい。テロップのタイミングは良い。

Sparks - This Town Ain't Big Enough For Both Of Us (Karaoke)
テロップのタイミング遅い。使えない! ドラムの音は良い。

Sparks — This Town Ain't Big Enough For Both of Us (karaoke)
オケは良い。テロップのタイミングも良いけど、変な効果入れすぎ。

【 その他の曲など年代順に↓ 】

Sparks - Thank God It's Not Christmas [karaoke]
オリジナルの加工版オケっぽい。テロップも良い。

Sparks - Falling In Love With Myself Again KARAOKE
オリジナルの加工版オケっぽい。テロップ気持ち遅い。

Sparks - Complaints KARAOKE
オリジナルの加工版オケっぽい。声がうっすら残っている。テロップが画面いっぱいで、色だけ流れてくのは良い。タイミングもまあまあ。

Sparks - Never Turn Your Back On Mother Earth (Karaoke)
テロップ遅い。使えない! ストリングスの音は良い。

ggnzla KARAOKE 203, Sparks - NEVER TURN YOUR BACK ON MOTHER EARTH
打ち込みはまあまあ。バックコーラスがうるさい。テロップのタイミングは良い。

Sparks - Tits KARAOKE
この曲がカラオケに! 映画でも大きく取り上げられたね。歌って盛り上がるかも謎。オリジナルの加工版オケっぽい。そもそも元曲がむずかしいので、かなり練習が必要そう。テロップ気持ち遅い。

Sparks - How Are You Getting Home KARAOKE
オリジナルの加工版オケっぽい。そもそも元曲がむずかしいので、かなり練習が必要そう。テロップ気持ち遅い。

ggnzla KARAOKE 204, Sparks - THE NUMBER ONE SONG IN HEAVEN [abbreviated version]
後半からいきなり。打ち込みが雑。テロップのタイミングは良い。

SPARKS BEAT THE CLOCK KARAOKE
オリジナルの加工版オケっぽい。テロップのタイミング良いんだけど、コーラス部分全部つけなくてよかったのでは。

Karaoké Sparks When i'm with you
オリジナルの加工版オケっぽい。テロップのサイズが小さい! スマホではムリ。

【Karaoke】 Sparks / Tips For Teens
オリジナルの加工版オケっぽい。テロップのタイミング良い。映像の作りががんばってる。

【Karaoke】 Sparks / Funny Face
オリジナルの加工版オケっぽい。テロップのタイミング良い。たぶん↑と同じ時に作ってる。

ggnzla KARAOKE 067, Sparks - ANGST IN MY PANTS
打ち込みが雑。
バックコーラスがうるさい。テロップのタイミングは良い。

Sparks - Angst In My Pants (karaoke)
オリジナルの加工版オケっぽい。テロップも良い。

Sparks - Sherlock Holmes (Funbox Karaoke, 1982)
オリジナルの加工版オケか?、打ち込みか? テロップのタイミング良い。

Sparks - Eaten by the Monster of Love (Funbox Karaoke, 1982)
オリジナルの加工版オケっぽい。テロップもがんばってる。

Sparks Cool Places karaoke
これは作ってるオケだと思う。なぜか画がチップマンクス。テロップやや遅く歌いづらい、色が流れない。後半のコーラスがついてる。エンディングも作ってある。

Sparks I Wish I Looked A Little Better karaoke
オリジナルの加工版オケっぽい。テロップやや遅い。

Sparks "Modesty Plays" Karaoke
なぜかアルバムのボーナストラックだった曲とか! オリジナルの加工版オケっぽい。声がやや残ってる。テロップは良い。

Sparks "Rosebud" Karaoke
オリジナルの加工版オケっぽい。なんか女性コーラスだけ、うまく残ってる。テロップは良い。

Sparks "Music That You Can Dance To" Karaoke
オリジナルの加工版オケっぽい。声が割と残ってしまってる。テロップは良い。

Sparks "The Scene" Karaoke
オリジナルの加工版オケっぽい。声がやや残ってる。テロップは良い。

Sparks - When I'm With You (Funbox Karaoke, 1980)
これは、Plagiarismの早いバージョンだった!
オリジナルの加工版オケっぽい。テロップのタイミング良い。

Sparks ft. Faith No More - Something for the Girl With Everything - Karaoke
これも、Plagiarismのバージョンだった!
オリジナルの加工版オケっぽい。テロップのタイミング良い。

Sparks — When Do I Get to Sing My Way (karaoke)
オケは良いけど、コーラス少しジャマ。テロップのタイミングも良い。

ggnzla KARAOKE 205, Sparks - WHEN DO I GET TO SING MY WAY
打ち込みが雑。テロップのタイミングは良い。

Sparks - When Do I Get To Sing My Way (Karaoke)
ほんと、このKaraokeOnVEVOってサイトのは、テロップが遅いわ!
オケはまあまあ。バックコーラスがうるさい。

SPARKS - The Existential Threat [Karaoke]
最近の曲です。打ち込みもテロップもまあまあ。

SPARKS - I Wish You Were Fun [Karaoke]
最近の曲です。テロップのタイミング、不安定です。

以上です! みんなも探して!

スパークスをもっと詳しく!

そして、ついに2022年4月、スパークスが音楽と原案を担当して出演もしている、レオス・カラックス監督のミュージカル映画「アネット」そして、エドガー・ライト監督が撮ったスパークス50年以上におよぶ活動のドキュメント映画「スパークス・ブラザーズ」と、2本の映画が日本でも立て続けに公開されて、話題沸騰になりましたね! もうご覧になりましたか?

昨年2021年、アメリカやヨーロッパで「アネット」「スパークス・ブラザーズ」が公開された頃、ぼくは、スパークスと同世代で、ロック史上に輝く伝説になったクイーンとを比較したnoteを2本書いておきました。ぜひ、この機会にお読みください。超有名になったクイーンも、ロック通にしか知られてないスパークスと切磋琢磨、影響しあっていたのだ、という因縁をいろいろ書いて、スパークスの歴史がわかるようになってます! (また2022年向けに後で改訂しようと思ってます!)

もちの論! ロンの歌詞も深すぎる

「ディス・タウン」がレディオ1で毎日夕方5時15分に流れる「今週のレコード」になった。それを聴いたのがはじまりだった。

「モリッシー自伝」上村彰子訳(イースト・プレス)より

スパークスの影響を大きく受けた、元ザ・スミスのモリッシーも「気高く、叙情的、ユニークすぎる」と自伝本の中でもロン・メイルの歌詞の世界を絶賛していました。17歳のときにラッセルにツーショットを撮ってもらった自慢話もしている。(映画にも出てほしかったの〜)

「ディス・タウン」の2番の途中、歌詞の中にヒロシマが出てきます。広島市出身の被爆二世であるぼくもピピっときますよ。

You are a khaki-coloured bombardier, it's Hiroshima that you're nearing

まあロンの書く詩って、遠回しで文学的な表現なので、かなりわかりにくいんですが、いろんな人の訳詞を拝見して、思うに歌全体はどうやら、自分の好きな女の子の彼氏に嫉妬して、お前はこの街から出て行け、と歌ってるような感じ?だと思います。 上記の部分は、飛行機で国内旅行に向かう彼女に対して、その飛行機が爆撃機になって広島に向かっている、というような、ま、妄想ですね。全体的に妄想の詩。

今なら、こんな例えに使うの自体、不謹慎、と言われそうですが、ぼくはなんか自分で歌っててもヒロシマって言うのが気持ちいい。悲劇の象徴の固有名詞としてサラっとカジュアルにはさみこみのもセンスだと思ってます!

スパークスをもっと歌わせて!

スパークスは一般的な知名度はなくとも、多くのアーティストに多大な影響を与え、カバーされた曲もたくさんある、というのは、エドガー・ライト監督「スパークス・ブラザーズ」を見るとわかります!

そして、レオス・カラックス監督の「アネット」では、最新のスパークスの世界に触れることもできる! スパークスも何度も登場します。
映画はファンタジィとはいえ、現実との狭間を突いた、かなり刺さるお話ですから、覚悟を持って見てください! ビョークの「ダンサー・イン・ザ・ダーク」くらい、ぼくにはズシっときた。というかハシゴの上で足元をすくわれたような?

よく今の時代にこの世界観を提示しようという気になったな、という感じ。ちょっと何を書いてもネタバレになりそうなので、詳しく言えないですが、アダム・ドライバーの演技の幅もすごいです。

そして映画「アネット」の監督、レオス・カラックスが、10代の頃に最初に聴いたスパークスのアルバムは、4枚目のアルバム「プロパガンダ」(1974年・最初の邦題「恋の自己顕示」)だそうです。

「アネット」に出てきたスパークスの曲はほとんど、映画用にできた新曲ですが、2曲が「プロパガンダ」のからの曲なのがうれしい。「サンクス・バット・ノーサンクス」は、すごく泣かせる美しいシーンに、もう1曲は「ボン・ボヤージ」で、その名の通り、世界中に旅に出るシーンで歌われています。

■ ここからは、ちょっと個人的な話を書かせてもらいます。
筆者は、1982年ごろ東京タワーズというバンドを結成して、すぐにライブハウスなどでそこそこ活躍してました。主なレパートリーは昭和中期歌謡曲のカバーでしたが、メンバーだった岸野雄一くんから、もっと音楽性の幅を広げなあかん、スパークスのカバーをやるぞ、ということで演奏してた時期がありました。

「プロパガンダ」から
「サムシング・フォー・ザ・ガール」「ベティーとチャーリー」
「キモノマイハウス」から
「アマチュア・アワー」「タレント・イズ・アン・アセット」の、4曲。

これを3ヶ月くらいスタジオで繰り返し練習して、結局ライブで披露することはありませんでした! ただの修行のような期間でしたが、それはそれで楽しかった。また自分もハタチくらいで声もよく出てたし! いや「B.C.」だけは1993年に1回、ライブでもバンド演奏したことあったな。

その後、1990年代後半からは、前回も書いたように初期インターネットで流行った素人制作MIDIサイトなどで、けっこうスパークスのカラオケ音源を拾うこともできました。(どれも音はショボいですが、役立ちました。。)今でも存在するかもしれないので検索してみて。自分の保存している曲リストは以下の通り。

Wander Girl (1971)
This Town Ain't Big Enough For Both Of Us (1974)
Amateur Hour (1974)
Never Turn Your Back On Mother Earth (1974)
Thanks But No Thanks (1974)
In The Future (1975)
All You Ever Think About Is Sex (1983)
Popularity (1983)
When Do I Get To Sing 'My Way (1994)

これらをDJイベントなどで、スパークス自体の音源をかけるのに混ぜて、DJブースでよくカラオケ歌ったりもしてました。スパークスナイトとして、一晩スパークスだけのイベントなんかもやった。(スパークス公式サイトにも載ったよw

そして1999年。サエキけんぞうさんがプロデュースで、その当時、東京のインディーで人気があった(!)若手テクノバンドを集めたオムニバスアルバムがリリースされましたが

なぜかゲストとしてジム・オルークが参加して、なぜか自分で作った曲ではなくスパークスの「サンクス・バット・ノーサンクス」をオリジナル通りにカバーしてた! ジムはシカゴの前衛アーティストだけど、日本にもよく来ている。

このCDの発売記念イベントが当時、まだ新宿歌舞伎町に移転したばかりのロフトプラスワンであったんだけど、ジムはアメリカにいて来れないから、代わりにぼくが上記のカラオケで「サンクス・バット・ノーサンクス」を歌ったよ。(やっぱし大サビで「急に声が裏返って」失笑を買いましたが!)ついでに「Never Turn Your Back on Mother Earth」(邦題・家へは帰れない)も歌ったよ。

て、振り返ってたらキリがないわ! ま、この続きや映画の感想は、また別のnoteで、書いてますので!

みんな、映画を見たら、帰りにひとりでもカラオケ屋に行こうね!
カラオケ講座、次回もお楽しみに!

■ ついでに、カラオケに行く前に、最初に読んでほしい基礎編として、第ゼロ回がありますので貼っておきます! 未読の方は必修。

■ ついでに、洋楽カラオケに関しては、ぼくのTwitterサブアカウント「懐かし洋楽カラオケ情報」でも情報発信していますので、こちらもご参照ください。

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