プレスリーの映画を見ました
ま「エルヴィス」ですけど。
ぼくら世代だと、コステロと混同しやすいから。
ま、コステロだって、プレスリーにあやかって、エルヴィスを芸名にしたわけですが。
まあ、映画の広報さんが、タイトルが「プレスリー」だと、プレスリーのプレスリリースです! とか言いづらいかな?(どうでもいい
吉幾三だって言っている「おれは田舎のプレスリー」と。
劇場は、渋谷ヒューマントラストシネマで見ました。90年代に「CDぴあ」が1Fにあったビルがリニューアルされたとこの7・8Fだね。思ったより狭かった! 試写室みたいな、ホームシアターみたいな小さいスクリーンだ。え~。。つっても一番前に座れば、視界いっぱいに入るスクリーンの大きさは、どこもそんな変わらないけどな。
この場所で見るのは、すぐそばに50年代ロックンロールファッションの象徴という店、ピンクドラゴンがあるので、というゲンをかついだ。みたいな? 80年代に自分が暮らしてたキャットストリートでもあるしね。
ぼくは小学生時代から洋楽聴いてましたが、その時点でエルヴィス・プレスリーというと、すでにショービジネスの人、トム・ジョーンズのライバル的な? そういうイメージなので、ロックの原点と言われても、いまいちわからない感じ。母親がファンだったので、ラスベガスのショーとかテレビで一緒に見た憶えがあります。
70年代なかば、クイーン、スコーピオンズ、ユーライア・ヒープ、といったバンドのライブとか、アンコールにロックンロールメドレーとかで、プレスリーの初期の曲も歌ってる、のを聴き、ああなるほど、と思ってた頃に、亡くなってしまった。その後出たクイーンの「愛という名の欲望」とか、まさにプレスリーそのものだった。生きてるうちに共演してればよかったのに。。ま、そう思う人たくさんいますが。
劇場版の「エルヴィス・オン・ステージ」も、名画座で見た憶えがあるな。当時はFMレコパルで、なぜか黒鉄ヒロシがプレスリーの伝記マンガを描いてたなあ〜。
派手!大げさ! エルヴィスが、というより映画自体が
てことで、アメリカの最大のスターであったことをあらためて教えてくれるのが、このエルヴィス・プレスリーの伝記映画「エルヴィス」です。
まずは幼少期、地元メンフィスの黒人街で聴くブルースから音楽に目覚め、1950年代デビュー時の熱狂が生まれていく最初の経過がたんねんに描かれていきます。これがロックヒーローだった証だな〜という。リーゼントにピンクのシャツ、カッコいいアクション、歌のスピード感、色気。それまでの歌手とはすべてが違った感じ、という時代の空気感もよく出てます。
当時のファンの女の子のファッションとかもよく再現されてる。微妙に昔の実写映像も織り交ぜ、さらに新しく撮ったシーンを、わざと劣化した画質に見せたり。最近の音楽ドキュメントに流行りの、アニメで描いた場面とかもある。
まあ、近年の音楽映画の中でも、特にちょっと大げさというか、この監督ならではの手法で、ちょっと凝りすぎ、盛りすぎ? みたいな、とにかく前半は派手で激しい展開です。
しかし、いったん売れだして全米を席巻した後からの、世界のスターになっていく描写は、やや淡白です。
エルヴィスの歴代のヒット曲が次々に聴けるかと思いきや、そうでもない。エルヴィスと関係ない曲もけっこう出てくる。
あくまでドキュメントではなく、人間ドラマがメイン、時代とエルヴィスの関わり、を強調しているみたい。主役はエルヴィスよりも、悪徳マネージャーとしてコントロールしていたパーカー大佐。演じるトム・ハンクスは役作りでがんばって太っている。
アメリカのプロレスWWEの悪徳マネージャー、ポール・ヘイマンにもすごく雰囲気が似ている。別に意識してないだろうけど。
黒人音楽に強い影響を受けたからこそのエルヴィスの音楽、というテーマもすごく強調されていて、BBキングやファッツ・ドミノもイイ役でフィーチャーされている。キング牧師の暗殺にショックを受ける場面もある。だからこそ、南部の人種差別によってエルヴィスが黒人の味方として非難を受けるシーンも長い。世間の目をかわすため、徴兵も受け入れざるを得ない。
でも、軍隊時代の描写もサラっとしていて、除隊後、1960年代にアメリカに戻ってから、パーカー大佐の策略によって映画界に進出、俳優に転向して、いろんなB級映画に出たとこもサラっと流されている! 映画の部分とか、すごい上手に細かいとこも再現して撮ってるのがわかるのに、もったいない!
あの時代のエルヴィス映画は、80年代にテレ東午後ローとかでよく放送してたから、かなり見たな〜。10本以上あったよな〜、と検索したら30本以上、年に4〜5本くらいずつ制作されていた。そりゃマンネリにもなるな。
二度目の全盛期から、最期までも。。。
しかし1970年代、歌手としてカムバックしてからは、またじっくりとドラマが展開します。TVショーでの復活。ラスベガスのホテルでのディナーショウのレギュラー化、と、ぼくらがリアルタイムに知ってたプレスリーの、あのフリンジのついたツナギ姿の衣装になってくる。唯一無二のスター性を感じさせる独自の世界。
やっぱ今でもモノマネする人って、あの格好の人しかいないよね。若い頃や俳優時代をマネする人は、あんましいない。
しかしまたパーカー大佐の策略にはまって、夢であったワールドツアーを拒まれ、アメリカ国内でしか活動できなくなっていく。
もし、この頃、世界を回って、後輩のロックミュージシャンと共演したり、フェスに出演したりすれば、まったく世界が違ったろうにな〜。。もったいなかった、と思わせる。
結局、ずっとホテルのショウだけを何年も続けるしかなくなり、妻と娘との複雑な関係、ストレスもたまり、ドラッグに蝕まれて太っていく身体、とトーンは暗く、話はぐんぐん重たくなっていきます。
エルヴィスの死。やっぱ、そこまで描いてしまうのか。。突然、映画はラストだけドキュメントになって、本物エルヴィスの最後のステージで歌う姿が見れます。もうかなり太って歩くのも苦しい感じ。でもピアノの弾き語りを始めると、やっぱり声もいいし歌もうまいし本物だなあ〜と思う。
もちろんエルヴィスを演じたオースティン・バトラーも、かなり似せてて歌もうまかったと思う。驚きますよ。
そしてエンドタイトルのデザインも、かなり凝ってて長いよ。しかも曲もエルヴィスと関係なさそう。なんなんだ。
ま、でも劇場で見といてよかった、と思わせる作品でした!
【2022/7/28 追記】ビートルズとエルヴィス
ロック史上最大の大物二組、エルヴィス・プレスリーとビートルズが出会ったとき、エルヴィスに憧れていたビートルズのメンバーは舞い上がっていたけど、ひねくれ者のジョン・レノンだけは、なぜか反抗的な態度を取ってしまい、後に「ほんとはエルヴィス大好きなのに、あの時はすいません」とあやまったけど、許してもらえなかったという、エピソードがあるそうです。(興味ある方はググってください)
映画「エルヴィス」には、残念ながら、このエピソードも出てこなかった! まあエルビスのキャリアの中では重要でない、ほんの1コマでしょうか。
ま、映画「エルヴィス」には、なんと言っても、エルヴィス・プレスリー初期の代表的なヒット曲、誰でも知ってる「ラヴ・ミー・テンダー」と「冷たくしないで」が出てこないんですよ。ひねくれてるな〜。
まあ、ヒット曲は他にも山ほどあるんだから、いいじゃないか。とはいえ。
これをビートルズにたとえると、伝記映画で「イエスタディ」と「抱きしめたい」が入ってないくらいな感じ?
そう思うと、映画「エルヴィス」の構成を、ビートルズの物語にあてはめるとすると?
メンバーの出会いからハンブルグ時代、キャバーンクラブ時代からデビュー、ブレイクまでをじっくり追って、と思ったら、いきなりジョンの「キリストより有名」発言からのバッシングをやって、シェイ・スタジアムまで飛んで、インド、サージャントペパーズから、エプスタインの死をゆっくり描いて、すぐヨーコの登場からゲットバックのルーフトップで終わるみたいな。
そんな感じかな?
映画の「ハードデイズナイト」「ヘルプ!」「イエローサブマリン」「マジカル・ミステリー・ツアー」などは10秒ずつサラっと流す感じみたいな。
そのくらい思い切った映画だった、てことですね「エルヴィス」は。