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ゴールド建の石油価格(1950-2022年)

2022年10月26日 宍戸健

10月20日、政治、経済の人気サイトZeroHedgeが1950年から2022年9月までの間、石油に対しゴールド(金)、米ドル、英ポンド、ユーロの購買力がどのように変化してきたかの記事を掲載した。1950年のそれぞれの価格を100として、2022年9月にどうなっているかをグラフにしたものである。

この表を見るとゴールド(黄色の線)での購買力はほとんど変化はなく、英ポンドは基準値100の石油(1950年)と同じ分量を2022年に買うには10,000英ポンドが必要になっていることがわかる。これは英ポンドの石油に対する購買力が100分の1に暴落しているということである。ちなみに、この間米ドルは約30分の1、ユーロは20分の1になっている。

なぜゴールド(金)の購買力はずっと変わらなかったのだろう。ゴールドは膨大なコストをかけ金鉱山で採掘するか、お金を貯めて他の人から購入しなければならない。毎年の採掘による新規に供給されるゴールドは全体量の1%に満たないらしい。このため購買力を維持してきた。

一方、中央銀行が発行する不換通貨(なんの資産の裏打ちがない通貨)はどんどん印刷されるので購買力が落ちるのだ。

このグラフには対日本円での比較がなかったので自分で調べてみた。

  1. 1グラムのゴールドで何リットルのガソリンが買えるかを比較した。

  2. 明治4年(1871年)の新貨条例で1円=純金1.5グラムと決められたので、この年を基準年としたかったが、自動車がまだ普及していないので、ガソリン価格が調べられる1935年からとした。

  3. 田中貴金属工業金価格推移 (1973年から2021年年次推移データ) https://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/y-gold.php 

  4. 明治・大正・昭和・平成・令和 値段史(食べ物、給料、燃料、サービスその他の物価の推移) https://coin-walk.site/J077.htm

  5. 尚、日本は先の大戦後から1978年までは金の輸出入が規制されていたので完全に自由価格とは言えない。https://shouwashi.com/transition-gold.html (明治初期から2006年までの金価格推移)

新貨条例(明治4年)
1935年から2022年9月までの金、ガソリン、金1グラム価格相当のガソリンの量。(筆者作成)

こうしてみると、1935年(昭和10年。大東亜戦争勃発の6年前)には1グラム3.2円で買えたゴールドは2022年9月には8,742円となっており、円の購買力はゴールドに対し約2,731分の1(8,742/3.2)に暴落している。一方、1935年時点でゴールド1グラムで買えたガソリン(当時の販売価格は1リットル=12銭)は26リットル買えたのに対し、2022年では同じゴールド1グラムで54リットルも買えることになる。つまり、ゴールド建ではガソリンは2022年時点では半額になったのだ。

ようするにものの値段が上がったというよりも、円の価値が勝手に大暴落しているということだ。

最後にビットコインのクリエーター、Satoshi Nakamotoは2009年のリリース時に政府が通貨を印刷することについて以下のように書いている。

Bitcoin open source implementation of P2P currency

「従来の通貨の根本的な問題は、通貨を機能させるために必要なことはあらゆる「信頼」に依存しているということです。中央銀行は「自国通貨の購買力を低下させないはずという国民の信頼」が必要ですが、不換紙幣の歴史はその国民の信頼を裏切ることを長年繰り返してきました。」

「銀行は私たちのお金を預かり、電子的に送金(や運用)することについて顧客の信頼が不可欠ですが、実際には銀行は信用バブルの波に乗って、ほんのわずかな準備金を元に大量のお金を貸し出しています。」

「私たちは銀行がプライバシーを守り、個人情報保護法違反をしないよう信頼する以外にありません。また銀行は多額の固定費、間接費がかかるため、マイクロペイメント(1円以下のインターネットアプリに使用できる額、0.1円以下の将来IoT, IPv6などに使われるであろう超極小の送金)はコスト的に実現不可能なのです。」(DeepLで翻訳、筆者意訳、解説)

これがビットコインが創りだされた背景と発行上限が2100万セットなっていることの理由なのです。

(注:ソフトウェア内で実際には1BitCoin=100,000,000になっている。1BitCoinは1億枚まで分割できるトークンのセットなのだ。この最小単位はSatoshiという。したがって実際に流通するトークンの合計は2100万x1億=210兆Satoshi(SAT)=210,000,000,000,000となる。1Satoshi(SAT)という極小単位は将来IoTディバイス間などのMachine to Machine(M2M)やIPv6でのトランザクションに使われるようになるだろう。)

それでは本日はここまで。

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