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燐寸。

12/9に東京で落語会をした翌日の12/10も友人が高座に上がる機会を企画してくれた。
大学の頃からの知り合いで現在ベリーダンサーをしている友人がよく利用しているゴールデン街のステージ付きのバーでダンスと落語を交互に、という会。

企画も集客も全部していただき、満席のお客様の前で喋らせていただけて、めちゃくちゃありがたかった。

その日の話。

高座に上がると、目の前の席に見覚えのある女性が座っていた。

その人を見た記憶は十年以上前、大学に入った頃に遡る。当時、早稲田には映画サークルが8つ存在して(今もあるかも)、全サークル合同の新歓コンパがあった。

キャンパスの裏の公園にブルーシートをいっぱい敷いて、夜桜の下でそれぞれのサークルの部員と新入生が混ざってのコンパだった。

新入生の僕が参加したとき、ブルーシートの空いたところに適当に座ると、隣が二年生の女の先輩だった。

その先輩はめっちゃデカい徳用のマッチ箱を持っていて、それで煙草を吸っていた。
一年しか変わらないのに、彼女が煙草を吸っている姿が大人っぽく見え、徳用マッチを持っている姿も可笑しく、何を話したかは全然覚えていないが、雰囲気だけめちゃくちゃ印象に残っていた。

ただ、その先輩の映画サークルに入ることはなく、他の映画サークルに入ったので、その後の学生生活で、何度か見かけたりすれ違ったりすることはあったが、新歓で少し隣に座っただけの僕が覚えられていることもなく、こちらから一方的に「あのときの徳用マッチの人や」と認識していた(名前はもう忘れていた)。

目の前に座っていたのは、その徳用マッチの先輩だった。
(イベントを企画してくれた友人は、その先輩と同じ映画サークルに在籍していて今も付き合いがあったそうなので不思議ではないのだが)

終演後に思わず、
「僕、大学の後輩です。昔、先輩に新歓されまして、徳用マッチで煙草吸うてはりましたよね?」
と話しかけてしまった。
「え、話したのは全然覚えてないけど、徳用マッチ使ってました...」

周りの数人もその映画サークルの方々で、”徳用マッチで煙草を吸っていた”という彼女の過去を掘り起こしてしまったせいで「痛い過去だ」とイジられていた。
彼女にまた会えたのは感慨深いものがあった。
というのも、僕は学生の頃から今に至るまでずっとマッチで煙草を吸っているからだ。

今の世界に入る前も入った後も、周りから
「なんでマッチ使ってんねん」
とよく言われる。

その度に「ライターは失くすから」「匂いが好き」「煙草を吸う時間くらい好きにさせてくれ」とかなんとか言ってるが、おそらく最も心の奥底にある理由は、
「新歓コンパで隣にいた名前も覚えていない先輩がマッチで煙草吸ってて格好よかったから真似してる」だと思う。

自分でも言語化してこなかった理由を、十年以上経ってようやく認識できた、という話。
一瞬会っただけでも印象に残るような人間になりたいと思いました。
今度から「なんでマッチ使ってんねん」と言われたら、そう答えます。

そのあと、映画サークルにいた人はみんな痛かったよね、という話でその先輩たちと盛り上がりました(僕は今でもずっと痛い)

最後に。
その場に僕と同学年の映画サークルの方もいて、彼も別の映画サークルだったので会った記憶はほとんどないのだが、彼に「映画を浴びる新歓PVよかったよね」と言われた。
映画サークルはそれぞれ新歓の時期に新歓PVというものを撮っていた。
彼の言う”映画を浴びる”PVは僕が自分の所属する映画サークルの幹事長のときのPVで、それこそ痛い恥ずかしい過去だったので
「やめて!恥ずかしい!」
と、なりました。

Youtubeに残っていたので見返したけど、恥ずかしくて見てられなかった。
「映画を撮るためには映画を浴びればいい」と言ってました。


インド映画を裸で浴びている。

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