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【野球】横浜DeNAベイスターズ後半戦展望

日本中に多くの光と影を落とした東京オリンピックが8日、閉幕した。今後パラリンピックが開催されるが、人々はひとまずの区切りをつけ、日常へと戻っていく。

プロ野球も13日から再開。今回は私の贔屓、横浜DeNAベイスターズの後半戦の展望について見ていきたい。


先発の救世主は現れるか

まず、前半戦のベイスターズの戦いで一番苦しかったのは先発ローテーションが最早「ローテーション」でなかったことだ。リーグ最下位の先発防御率4.95。離脱者も続出しローテというより先発スクランブルというにふさわしい有様だった。

昨年のローテーション、平良拳太郎は故障で離脱、大貫晋一も精彩を欠いた。ローテーション入りを期待された上茶谷大河とルーキー入江大生は試合を作ることが出来ず、ファームから出直し。新外国人のフェルナンド・ロメロも丁半博打的に谷間で使うのがやっとの数字だ。

これに加えて手術明けで開幕に間に合わなかった今永昇太と序盤不安定だった濵口遥大とが重なり、開幕から苦しい戦いを強いられることとなった。

しかし、徐々にチームも軌道に乗り始め、先発の頭数がそろいだした。濵口が本来の輝きを取り戻し、今永も一軍に合流。ある程度計算の出来る2枚がそろったところで、今までなかなか結果が出なかった阪口皓亮がついに台頭した。さらに今シーズンは出遅れていた坂本裕哉が昨年の勝ち運をそのままひっさげ、先発ローテーション入りへ名乗りを上げると、国吉佑樹とのトレードで獲得した有吉優樹も今後を期待させる投球を披露した。

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【画像】個人的に期待の阪口


しかし、この5人でローテーションを回すにはあまりに心もとない。今永は手術明けで試合は作れるが本来の姿には程遠い。濵口も好投するときは球界の左腕エースといって差支えないが、デイゲームが苦手であったり、制球に不安があったりと安定感には欠く。ほかの3人は年間を通してのローテ経験がない。

となればやはり6枚目の先発と、彼らをバックアップできる谷間要員は不可欠だ。今季絶望の平良はともかく、実績のある大貫の復活は最低限であろう。谷間の確保は難しい。基本的にファームで調子のいい選手を順番に試していくことになる。上茶谷や入江、中川虎大や京山将也あたりにはなんとかチャンスをつかんでほしい。

理想を言えば、東克樹に戻ってきてもらうことが出来れば目途が立つが、故障個所が箇所だけに首脳陣も慎重になるだろう。今シーズン終わりまでに1軍で見られれば御の字か。

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【画像】後半戦、なんとか復活の兆しは見せてほしい東克樹


何より期待したいのは先発再転向の石田健大。もともと先発志望で開幕投手の経験もある石田だったが、当時は3巡目あたりとなる6回途中でとらえられるケースが相次ぎ、中継ぎに左腕が不足していたこともあってリリーフへと回った。そして幸か不幸か、そこでぴったりとはまってしまった。

当然セットアッパークラスとなった左腕の代わりなどそうそうおらず、今まで石田には我慢を強いてきたが、今であれば砂田毅樹がいる。この機会に夢の先発ローテーションの地位を築き上げてほしい。

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【画像】念願のまっさらなマウンドへ。中継ぎを経験して先発としても飛躍に期待、石田


先発が崩れるとただでさえ登板の多い中継ぎにしわ寄せが来る。オリンピックの中断期間があったとはいえ、登板過多気味の中継ぎを救うためにも、先発投手の奮起に期待したい。

国吉の穴はどう埋める

続いてリリーフ。守護神を務める三嶋一輝がしばしば被弾しているのが気になるが、ここはそこまでの懸念材料ではないと考える。中断期間である程度切り替えできていると思うし、いざとなれば山﨑康晃と配置転換程度で済むと、あえて楽観的に考えている。

問題となるのはそれ以外の中継ぎ陣だ。エドウィン・エスコバー、三上朋也、砂田、山﨑はいずれも30登板を越えている。中継ぎ内ではイニングイーターだった国吉を放出したことで、さらに負担がかかることが恐ろしい。

その一方で明るい材料もある。まずは4年目の櫻井周斗。昨年までの一皮むけきらない投球からいきなり存在感を放つ活躍。ここまで12試合登板で防御率は2.89だ。先発経験もありロングリリーフも可能なので、ぜひ国吉の穴を埋めてほしい。

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【画像】覚醒の兆しを見せる櫻井


また、昨年ルーキーながら中継ぎの一角として活躍した伊勢大夢も15試合で2.81と期待が持てる。後半戦はもっと出番を増やしてほしいところだ。

そして、注目したいのが田中健二朗。怪我で育成落ちしていたこの男がついに帰ってきた。中断期間に入る前の1軍登板はなかったが、ファームで投げさせるだけなら支配下に戻す必要はない。エキシビジョンマッチでも登板しているし、最低限1軍でやれるだけの状態には戻してきたと判断する。何枚かいるサウスポーの中で出番が予想できるセットアッパーのエスコバーはともかく、砂田はどうしても乱暴な起用になりがちなので、負担軽減のためにも奮起を期待したい。

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【画像】もういちど1軍で躍動する姿を見たい、田中


野手は現状維持と戦力の底上げ

一方で野手に目を向ける。野手は全体的によく打てていると言っていい。リードオフマンの桑原将志はもちろん、上位の佐野恵太、ネフタリ・ソト、タイラー・オースティンも高いレベルで安定している。宮﨑敏郎はややらしくない打撃が見られるが、レギュラーとしては十分な数字だ。ルーキーの牧秀悟も奮闘している。このあたりのレギュラークラスは、多少の波があったとしても現状の数字を維持してもらわないと上を狙えない。

また、捕手争いではどうしても伊藤光が一歩抜けている。戸柱恭孝は打撃、嶺井博希は守備に課題を残し、山本祐大は経験不足。髙城俊人もレギュラーとして見るには見劣りする。最低限の打撃と守備を備えている伊藤を固定するほかないのが現状だ。しかし、伊藤にも懸念材料はある。故障がちであるという点だ。

捕手はある意味先に挙げたレギュラーメンバーより替えが効かない。例えば外野は離脱しても、神里和毅、関根大気、細川成也、蝦名達夫ら結果はどうあれ試してほしい選手はいる。オースティンとソトと牧が一斉に離脱しない限り一塁はレギュラークラスが入れるし、二塁も柴田竜拓と大和で回すことが出来る。三塁もいざとなれば倉本寿彦、柴田で乗り切る。その分替えが効かない伊藤のケアは入念に行いたい。

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【画像】捕手としてはやはり頭一つ抜けている伊藤光


もうひとつ、層の薄さが露呈したのは遊撃だ。前半戦は柴田と倉本が相次いで離脱。1軍レベルで遊撃が守れる選手が定期的に休養が必要な大和だけになり、結果的に1軍遊撃経験が2試合しかなかった田中俊太を起用せざるを得なくなった。もちろん1軍の遊撃が2枚欠けの段階で余剰戦力が残っているチームの方が少ないとは思う。とはいえ少し早いが森敬斗を合流させろと思ったぐらい遊撃事情はひっ迫した。実際に合流したのは知野直人で、森はファームで漬ける、という選択に至ったが後半戦ではいよいよ森の力が必要だと考える。

中断期間前に1軍昇格した森はその脚力と、身体能力を武器に強烈な印象を残した。ファームでも上で試す価値のある数字は残している。大和も年々守備の衰えは素人目にもごまかせなくなっており、世代交代の時は目前まで迫っていることを考えると、森を使うのは今しかない。
幸い、今の遊撃は万全であれば大和、倉本、柴田がバックアップできるので、仮に森が結果を残せなくてもフォローが効く。この3選手もいい選手だが、遊撃のレギュラーを張るには、抽象的な物言いになるが「スケール感」が足らない。野球において遊撃は花形だ。ベイスターズも強かったころは石井琢朗がいたし、巨人が強いのも坂本勇人(と当時の阿部慎之助)によるところが大きい。DeNAがさらにもう一歩上へ行くのであれば、それに匹敵する遊撃手が必要だ。森にはその素質があると思う。それだけに、彼らが遊撃を守れるうちに、森を一本立ちさせねばならない。

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【画像】森は絶対に上で我慢するべき段階にきている


三浦監督の采配に注目

最後に采配面。三浦監督の采配は開幕当初は率直に言って酷いものだった。私も何度か配信中に苦言を呈したことがある。私の持論として采配は結果論の集合体なので、意図が明確であれば問題にはしない。采配に一本芯が通っていれば、仮に負けたとしても結果論であり、力負けである。采配で勝てる試合など、おそらく1年通して片手で数えるほどしかない。

しかし、采配で負ける試合はいくらでも作れる。皆も胸に手を当てて考えてほしい。贔屓球団が暗黒だったとき、采配で負けた試合がいくつあっただろうか。パンを食べた回数を聞かれるに等しくはないだろうか。

開幕当初の三浦監督はそれはもう、中途半端な采配が多かった。攻める意思を示したところで例えば代走のカードを何故か温存したり、継投が後手後手に回ったり、選手起用に関して初志貫徹を貫きすぎたり、見ていて「正直、しんどい」と目どころか顔を覆ったことも少なくない。

しかし、それも試合をこなすにつれてなくなってきている。それは最近の勝率にも表れている。もちろん負けがいきなり大幅に減って優勝争い、なんてことはない。しかし、試合をしっかり見ている人なら、その采配の好き嫌いはあれどいわゆる「意図不明」の采配が減ったことはわかってもらえると思う。

先発の台頭、中継ぎの拡充、野手の現状維持と新戦力の融合、そして監督の采配。これらの要素がうまくかみ合ったとき、ベイスターズはまだ、今シーズンも上を狙えると考える。率直に言ってリーグ優勝は厳しい。がポジティブな要素が生まれる余地はたくさんある。そうなればきっと、来シーズンへの希望をもってオフを迎えられるに違いない。後半戦は、「横浜一心」でもっと、頑張れ、横浜DeNAベイスターズ。

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