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HELIAR classicのフォーカスシフト

引き続きHELIAR classic 50mm F1.5の話題です。今回はフォーカスシフトについて。


フォーカスシフト

絞り値の変化によりピントの位置が変化するフォーカスシフトは色々なレンズで生じる問題ですが、クラシカルな写りをする大口径レンズでは特に起こりやすいものと思います。以前購入したNOKTON classic、特に40mmはフォーカスシフトが比較的大きいレンズでした。(35mmはII型である程度改善。)

HELIAR classic 50mm F1.5も例に漏れずフォーカスシフトは大きいと聞いていました。似たスペックのレンズだと同じくコシナ製のC Sonnar T* 50mm F1.5 ZMは優れた描写と魅力的なボケに加えて大きなフォーカスシフトがあることでも有名なレンズです。以前C Sonnarと比較したときのHELIAR classicのフォーカスシフトについて問い合わせたことがあり、撮影距離によっても特性は変化するため一概には言えないもののC Sonnarより気持ち小さいくらいという回答をいただいていました。

そのため今回はフォーカスシフトが大きいことは覚悟してHELIAR classicを購入しているのですが、実際どのくらいの影響があるかを確認しておきたかったので今回は簡単なテスト撮影を行いました。

テスト撮影の設定

  • カメラ:OLYMPUS PEN-F

  • ISO感度:ISO 200(撮影距離10mの時だけISO 320)

  • 絞り値:F1.5, F2.0, F2.8, F4.0, F5.6, F8.0

  • シャッタースピード:オート

  • 撮影距離:1m, 3m, 10m, 無限遠 (150m)

カメラはミラーレスの方がピントが合わせやすいので普段使うレンジファインダー機のM (Typ 262)ではなくミラーレス機のPEN-Fを利用しています。

今回はテスト撮影として距離ごとに3パターンの撮影を行いました。1つ目は絞り開放となるF1.5でピントを合わせてから各絞り値で撮影したもの、2つ目は各絞り値でピントを合わせ直してから撮影したもの、3つ目はF4.0でピントを合わせてから各絞り値で撮影したものです。1つ目と2つ目の結果を比較することでフォーカスシフトの大きさを確認できます。3つ目については真ん中くらいの絞り値であるF4.0以降でもどのくらいズレがあるのかを確認するために撮影しました。なお、絞り開放は1つ目のパターンでしか撮影していません。絞り開放については1つ目と2つ目で変わらないので撮影しておらず、3つ目は撮り忘れです…

なお、元の写真は5184x3456画素ありますが、撮影結果で載せている各画像は見やすいように、また余計なものが写り込まないように大きくクロップしています。

撮影結果

以下では撮影距離ごとに1枚の画像にして撮影結果を並べています。各行が
それぞれ3パターンのピント合わせ方式に対応し、各列が絞り値に対応しています。noteの画質では細かいところまで確認できないと思うので、ご興味のある方はキャプションにリンクを載せている高解像度版 (Flickr) をご覧ください。

1m

左から順に絞り値:F1.5, F2.0, F2.8, F4.0, F5.6, F8.0。
上から順にフォーカス位置:F1.5、対応F値、F4.0。
各画像は1701x1701画素にクロップしたもの。
高解像度版

キーボードを撮影しました。ピントは"R"キーに合わせています。

F2.0ではほとんどピントの位置は移動していないように見えますが、F2.0でピントを合わせ直すことでごく僅かに描写が改善しているようにも見えます。1行目だと
ほんの少しだけ前ピン…?

F2.8ではピントが後ろにずれており、"R"よりも"T"にピントが合っています。

F4.0だとさらに後ろにずれ、"Y"キーあたりにピントが来ています。絞っている分被写界深度は深くなっているはずですが、"R"は被写界深度外に見えます。

F5.6まで絞っても"R"にピントは戻って来ず、F8.0まで絞ってようやくギリギリ
被写界深度内と言っていいかも…?というくらいです。それでもF8.0でピントを合わせ直した方が明確にシャープに写っています。

F4.0でピント合わせした3行目で確認してみるとF5.6でもF8.0でも"R"にちゃんとピントが来ているので、F4.0以降のズレは被写界深度の広がりよりも小さいと言えそうです。

3m

左から順に絞り値:F1.5, F2.0, F2.8, F4.0, F5.6, F8.0。
上から順にフォーカス位置:F1.5、対応F値、F4.0。
各画像は968x968画素にクロップしたもの。
高解像度版

ここではギターが被写体です。ビグスビーの"Gretsch"の文字にピントを合わせています。

基本的には1mのときと同様の傾向ではありますが、比較的ピントを合わせ直した時との差が小さいように思いました。被写体の選択が良くなくて若干結果が分かりにくいような気がしないでもないですが…

10m

左から順に絞り値:F1.5, F2.0, F2.8, F4.0, F5.6, F8.0。
上から順にフォーカス位置:F1.5、対応F値、F4.0。
各画像は519x519画素にクロップしたもの。
高解像度版

ウクレレにフォーカスしています。

3mのとき以上にフォーカスシフトの影響が被写界深度内に収まっている印象を受けます。

無限遠

左から順に絞り値:F1.5, F2.0, F2.8, F4.0, F5.6, F8.0。
上から順にフォーカス位置:F1.5、対応F値、F4.0。
各画像は395x395画素にクロップしたもの。
高解像度版

こちらも同様ですね。ここまで来ると影響なしと言い切っても良いのではないでしょうか。

おわりに

今回はHELIAR classicのフォーカスシフトを調べてみた話でした。遠景の撮影では割と大丈夫そうですが、近接でF2.0よりも絞る場合は影響が大きいので撮影時に意図的にピントをずらして撮影するように注意した方が良さそうです。

HELIAR classicをSummilux 50mm 2ndと比較した場合、今のところ1番の欠点はこのフォーカスシフトだなと思います。Summiluxはこの点がかなり優秀でほとんど影響がないんですよね。以前の調べではNOKTON Vintage Line 50mm F1.5よりもSummilux 2ndの方が優秀でした。ピント周りのストレスが少ないというのはSummiluxの気に入っていたポイントの1つだったので、この点に慣れて許容できるようになるかどうかがHELIAR classicを使い続けようと思えるかに直結してくる気がしています。




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