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7artisans 50mm F1.1のフォーカスシフト

少し前に7artisans 50mm F1.1というMマウントレンズを購入したのですが,このレンズにはフォーカスシフトという少し困った問題があるという話をします.

7artisans 50mm F1.1

まず簡単にレンズの紹介を.中国のレンズメーカーである七工匠が発売している大口径のMマウントレンズです.50mm F1.1というスペックながら4万円強で購入可能ということで発売時には話題になっていたようです.このレンズを紹介している記事は検索するとたくさん見つかりますので,レンズの基本的なところに興味がある方はそちらを探してみてください.こちらではM (Typ262)で撮った実写例をいくつか載せておきます.F1.1という大口径によるボケが魅力的なレンズです.個人的にはどちらかといえば現代的なカリッとした写りをするレンズのほうが好みではありますが,ふわっとしたボケ感の強い写りもそれはそれで楽しくなります.

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余談ですが,このレンズにはもともと6bitコード(ライカ純正レンズについているレンズを識別するためのもの)が付いており,Noctilux-M 50mm F1のコードが割り当てられていたようなのですが,自分が購入したものには付いていませんでした.日本での販売代理店である焦点工房に問い合わせてみたところ,どうやら特許絡みの問題で現在製造されているものには6bitコードは付いていないようです.いちいちレンズ設定を手動で変えるの忘れがちなので付いていたほうが嬉しかったんですが,しょうがないですね.

フォーカスシフト

さて,今回の本題のフォーカスシフトの話です.フォーカスシフトというのは,絞りを変化させたときにフォーカス位置がずれるという現象のことです.EVFやライブビューのある普通のミラーレスカメラであれば,絞りを変えた後にフォーカスを合わせれば良いだけなのでそこまで問題になることはありませんが,レンジファインダーになるとそうはいきません.距離計と連動させたF値以外では二重像をしっかり合わせて撮影してもピンぼけしてしまいます.これは困りますね.

このフォーカスシフトは,特にゾナー型の構成を採用しているレンズでよく問題にいになるようです.コシナから販売されている現行レンズのCarl Zeiss C Sonnar T* 1,5/50 ZMもフォーカスシフトがあり,絞っていくとだんだん後ピンになっていくというのがよく欠点に挙げられています.7artisans 50mm F1.1もゾナー型を採用しており,同様にフォーカスシフトの問題が生じており,絞ったときには二重像を意図的にずらさないとピンボケ写真になってしまいます.

C SonnarではF2.0で距離計と連動するように調整されているようです.こうしておくと,絞り開放では若干の前ピン,少し絞ったF2.8やF4.0くらいだと後ピンになりますが,F5.6くらいまで絞ると被写界深度が広くなり大体問題ない程度になるとのこと.

7artisans 50mm F1.1のレンズは自分で距離計連動を調整できるようになっており,現在は絞り開放で合うように調整しています.以下では,この状態のレンズでどのくらいフォーカスシフトがあるのかを簡単に調べてみたので紹介していきたいと思います.

7artisans 50mm F1.1のフォーカスシフト

今回のテストはOLYMPUS PEN-Fにマウントアダプター経由で7artisans 50mm F1.1を装着して行いました.ミラーレスのほうが撮影時にフォーカスのズレがわかりやすいので良いですね.シャッタースピード優先にしてISO Autoで明るさを一定にした状態で撮影しています.絞ったときには高感度になっていてノイズが結構乗ってしまいますがフォーカスを確認するくらいは問題ないでしょうということで... ホワイトバランスもオートにしていたせいか絞ったときの色味がおかしいですが,そこもご容赦ください.

撮影した写真の全体は下のものになります.思い立って急に始めたので適当な対象なのがあれですが,フォーカスシフトをある程度確認できれば良いので問題ないということにしておきます.Skin Conditionerの文字の真ん中あたりにフォーカスを合わせました.

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まず,F1.1でフォーカスを合わせ,その後,F値を変化させたときの状態を確認してみます.以下の画像では,フォーカスを合わせた文字部分のみをクロップしたものを載せています.

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これだけだと少しわかりにくいかと思いますが,F1.1からF1.4に変化させたときはほとんどフォーカス位置に変化はありませんでした.F1.4ではフォーカスシフトを気にせず二重像をしっかり合わせればよいということですね.これは実際に撮影しているときの実感とも一致しています.F2.0 ~ F5.6辺りでは後ピンになっており甘く,F8.0まで来るとだいぶ被写界深度が広くなるのである程度許容範囲という感じになります.

もう少しわかりやすく確認するために,以下ではF1.1でフォーカスを合わせたときのF2.0の画像と,F2.0で再度フォーカスを合わせ直したときのF2.0の画像を比較してみます.

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こうやって比較すると一目瞭然ですね.F1.1でフォーカスを合わせた場合は明確に甘くなっています.実際,今はF2.0以降に絞るときには明確に二重像をずらして撮影することでフォーカスシフトに対応してみています.

ところで,先ほど上で書いたように,似たレンズ構成のC SonnarではF2.0で距離計と連動するように調整されているようでした.7artisansの方でもF2.0で合うように調整するとどうなるのかも見てみるために,F2.0でフォーカスを合わせたときの比較もしてみました.

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F2.0以降がさっきよりもだいぶシャキッとしているのがわかるんじゃないでしょうか.F1.1でのフォーカスでもそこまで問題なさそうだったF8.0もよりシャープに写っています.

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一方で,当然F1.1, F1.4は緩くなってしまいます.

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しかし,もともと,特にF1.1は被写界深度がかなり狭く,レンジファインダーでガチピンで撮るのは難しいということを考えると,はっきり写したい絞ったときの描写をちゃんと出せるようにするために,F2.0で調整するほうが良いような気もしてきます.悩ましいですが,こういう時に自分で簡単に調整可能というのはあれこれ試せるので嬉しいですね.

ということで今回のテストは以上になります.雑なテストではありましたが,7artisans 50mm F1.1のフォーカスシフトについての理解が深まったので満足でした.

おわりに

今回の記事では7artisans 50mm F1.1のフォーカスシフトについて詳細を調べてまとめました.C Sonnarのフォーカスシフトについては色々と探すと情報が出てくるのですが,7artisansの方はまとまった情報があまり見つからなかったので自分でテストしてみました.このレンズに興味のある方の参考になりましたら幸いです.現代的な写りをするレンズでは決してなく癖も大きいですが,楽しいレンズではあると思いますし,Mマウントレンズとしてはかなり安いので1本持っていると遊べるレンズかなと思います.


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