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【東京五輪終幕】こんなに心が動いた夏はない

 すばらしい大会でした。「日本の金メダルの数が過去最多」という記録以上に、人生をかけて一つのことに挑んだ選手らが、持てるすべてを披露する貴重で稀少な時を共有できたと思います。「(沖縄の)子供たちにも、夢をあきらめず追いかけ続ければ、しっかり達成できるということを知ってもらえたかなと思います」。空手で金メダルをもぎ取った喜友名諒選手の言葉にこの大会の意義が集約されています。

 五輪での選手へのインタビュー映像はいい素材だと思い、「社会調査方法論」という私の大学の授業でも取り上げました。どのように選手から言葉を引き出すか、限られたごく短い時間の中で「質問力」が大いに問われる場面を学生らに考えてもらいました。しかしながら、予想したよりも、名言(迷言)がない五輪だったように思います。
 別にインタビュアーを責めているわけではありません。選手の口々からは、「このような機会をもらって感謝します」という言葉が多く聞かれました。そもそも大会の開催そのものが危ぶまれていたこともあり、当然の言葉だと思います。

 「やっぱりこれをやってよかった。これをやらなかったら日本人は病気になる」。これは57年前の1964年東京五輪のときに、三島由紀夫が書いた文章だといいます。「やってよかった」というのは今回も、大勢の日本国民、世界の人たちの心境でしょう。「五輪は中止!」と叫んでいたメディアや野党政治家の人たちは、どう反省するのでしょうか。せめて、選手たちに「中止にせよと言ってごめんなさい」「大切な機会を奪おうとして申し訳ありませんでした」とでも謝ったらどうでしょうか。

 次のパリ五輪はわずか3年後に訪れます。新型コロナウイルス禍がどのような状況になっているのか、見通すことはできません。それでも、今回の「五輪」という大舞台が希望の光になったことは証明されたのではないでしょうか。選手らのパフォーマンスを見て、自らを省みて、エネルギーが滾る瞬間がいくつもありました。スポーツの力というよりも、人類の力や可能性、そういった大きなギフトをもらったような気がします。

 

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