見出し画像

歌舞伎に泣き、マトリックスにあきれた休日。「キャットリックス」って何やねん

 悲しみ、悔しさ、怒り・・・感情やエネルギーがほとばしる役者の凄みがビシバシと感じられた舞台でした。日曜の朝、京都・南座で開かれている吉例顔見世興行で「曽根崎心中」を観劇しました。出演する役者の名前「まねき看板」がずらりと並ぶ風景は、京都の冬の風物詩でもあります。身を切るような寒さの中、鴨川を眺めながら橋を渡り切った先に、看板を見た瞬間、心が浮き立つのを感じました。

鴨川

 徳兵衛とお初の悲恋の物語である「曽根崎心中」は、近松門左衛門が実際に起こった事件を題材に人形浄瑠璃として書き上げたことはあまりにも有名。昨年亡くなった人間国宝、坂田藤十郎が1400回以上もお初を勤め、「当たり役」だった。今回はその息子たちで、鴈治郎が徳兵衛を、扇雀がお初をやるということもあって、「父の名を汚してはならない」ということ以上に、それぞれの「父を超える」という思いが満ち溢れていました。

 最後のシーン。藤十郎の場合、刀を斬るシーンはなかったが、2人が絶命を迎えるシーンが新たに付け加えられました。徳兵衛がお初を殺し、そしてお初の手を添えた刀で自らの首を切り、鬼のような形相でうち倒れていく姿を見て、こちらも涙がこぼれました。歌舞伎を見て、泣いたのは初めてかもしれません。それほど、2人のすさまじいまでの役者パワーに圧倒されました。

 一方で、その前日、映画「マトリックス リザレクション」を見に行ってます。約20年ぶりの文字通りの「復活」ということもあって、前3作をamazonプライムで復習して、期待していましたが、拍子抜けしました。
 公開してまだ3日ということもあり、ネタばれになるので、内容を詳しくは書きませんが、劇中の端々で「仕方なくつくった」みたいな演出があります。当てずっぽうにすぎないですが、ウォシャウスキー監督が大成功を収めた前作から、何年も何十年もスポンサーらしき人たちから「次回作を」と言い続けられて、ようやく腰を上げたものの、ムリヤリにでもストーリーをこじつけなければ、「復活」できない感が否めませんでした。

 長々としたエンドロールが終わるまで席を立たず、最後に何かあるだろうと淡い期待をもって我慢していたところ、問題のポストシーンが出てきました。「映画は死んだ」などと劇中に出てきた登場人物が議論しているシーンで、最後には、シリーズものの猫動画を出していくべきだとまで主張し、それが「キャットリックス」だという。最後まで映画館に残っていた観客はぽかん、どころか、はあ?というあきれた声まで聞こえてきました。
 
 なんとも残念な映画でした。やはり3部作でよかったのだ。映画の撮影技術を変え、歴史にも残る名作を汚したのでは、と嫌な気持ちになって映画館を去りました。
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?